ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

松竹大歌舞伎 「近江のお兼」「曽我綉俠御所染」「高坏」 @愛知県春日井市・春日井市民会館

2018年07月18日 | 歌舞伎

松竹大歌舞伎 「近江のお兼」「曽我綉俠御所染」「高坏」 (7月16日・春日井市民会館)

恒例、歌舞伎の夏巡業。今回は初めての会場「春日井市民会館」でチケットを取ってみた。春日井にはJRの駅と名鉄(小牧線)の駅があり、会場はJRの駅に近いが、東濃を除く岐阜方面からだとあまりアクセスが良くなく、結局金山まで出て、乗り換えて春日井駅へ。名古屋からだと近いんだなァ。この日は酷暑が続く連休の最終日。39度という体温より高い気温で、外に居るだけで止めどなく汗が流れ不快なことこの上ない。いつものように街を少しでも知るためにと駅から1.5kmほどの距離を歩いてみたが、暑いのなんの…。着物を着て観劇のご婦人方は大変だろうナ。会場はこじんまりとしていて客席は1階席だけのよう。ステージも遠くなく地方公演を観るにはちょうどいいサイズだ。

一幕目は梅枝が踊る「近江のお兼」。暴れ馬を高足駄で踏みとどめたという怪力の田舎娘お兼の説話を基に制作された義太夫の舞踊化。2人の漁師を跳ね飛ばす踊りが滑稽。同時に年頃の娘の切ない恋心をも描いているはずだが、その辺りのニュアンスは少し感じづらい。二本の晒(さらし)を手にダイナミックに舞う姿が見事。

続いて二幕目は「曽我綉俠御所染」(そがもようたてしのごしょぞめ)。題からはいわゆる”曽我物”のようだがそれらしき「曽我兄弟」の物語は出てこない。主人公と敵役が揃って登場。白地の着物を着た菊之助が凛々しい。菊之助は相変わらず口跡も迫力があって白塗りの顔にも華がある。この役(五郎蔵)では少し品の良さが出過ぎている気がしないでもないが、女形の時の艶やかさも一等だし、立役でもいい。よく考えるとそういう役者ってあまり居ない。女形をやると途端に醜女(しこめ)になってしまう役者が多いもんなァ(誰とはいいません・笑)。最初の説明台詞の場面では変化が乏しく、船を漕いでいる人も多かったようだ。取り巻きの台詞で”春日井”をくすぐったり、W杯で話題になった「半端ない」を台詞に入れたりして笑わせてくれた。こういうのも地方公演で楽しいところ。歌舞伎ならではの様式の詰まった演目だが、物語としてはかいつまんでいる箇所もあるようでちょっと面白味に欠けたり、あっさりし過ぎて感情移入しづらい場面もあったかな。にしても米吉が綺麗だ(←毎回言ってる)。

三幕目はおもしろおかしい「高坏」。太郎冠者、次郎冠者で笑わせる松羽目物。ただし背景は老松ではなく満開に咲いた桜の樹。6世尾上菊五郎が初演(昭和33年頃)というから比較的新しい(現世、つまり菊之助の父は7世)。初役だという菊之助には”うつけ”の役のイメージが無いがなかなか可愛らしかった。高足(下駄)を履いて踏み鳴らす音をタップダンスのように演奏とシンクロさせる。これ、6世が初演当時流行り始めたタップダンスを取り入れた演目なのだとか。今でいったらヒップホップ系のダンスを取り入れたって感じか。当時から進取の気風があったんだねェ。こういう楽しい演目で終わるのはいい気分。さて、また灼熱の屋外へと…。

 

一、近江のお兼(おうみのおかね)

近江のお兼   中村 梅枝
 

河竹黙阿弥 作

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)

御所五郎蔵

御所五郎蔵   尾上 菊之助
星影土右衛門  坂東 彦三郎
皐月      中村 梅枝
逢州      中村 米吉
梶原平蔵    中村 萬太郎
花形屋吾助   市村 橘太郎
甲屋与五郎   市川 團蔵

 

久松一声 作

三、高坏(たかつき)

次郎冠者   尾上 菊之助
高足売    中村 萬太郎
太郎冠者   市村 橘太郎
大名某    市川 團蔵

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柿葺落四月大歌舞伎 「寿曽我対面」「襲名披露口上」「籠釣瓶花街酔醒」 @名古屋市・御園座

2018年04月13日 | 歌舞伎

 

柿葺落四月大歌舞伎 「寿曽我対面」「襲名披露口上」「籠釣瓶花街酔醒」 (4月12日・御園座)

 松本幸四郎が二代目「白鸚」を、市川染五郎が十代目「幸四郎」を襲名しての襲名披露公演が、新築なった名古屋・伏見の御園座の柿葺落(こけらおとし)公演として開催された。本来は松本金太郎の「染五郎」襲名も同時なのだが、ここ名古屋でのお披露目は無し(学業の為だとか)。チケットの入手は”前年秋の錦秋公演のチケット半券を郵送してその枚数購入可”という変則的なものだったので嫁の分は取れず1人で御園座へ。秋の公演情報には染五郎の写真も載っていたので、てっきり三代揃って出るものだとばかり思って購入したのだが…(実は染五郎が見たかった)。御園座からの入金確認やチケット郵送も遅くヒヤヒヤ。こけら落とし公演ならではのバタバタだとうは思うが改善を望む。昼か夜かで迷ったが「勧進帳」は幸四郎(当時染五郎)が初演の時に歌舞伎座で観ているので、昼の部にしてみた。

 

自分は以前の御園座に入場したことは無いので比較は出来ないが、さすがに真新しい施設は立派。売店や飲食スペース「御園小町」もあるが開演前は弁当などを求める人でごった返していた(ちなみに30分の幕間に覗いたら余裕で着座してコーヒーが飲めるくらいだった)。歌舞伎座のように場内座席での飲食が可となったので弁当を調達して会場内へ。今回座ったのは2階席だったが、以前より座席数を減らして余裕を持たせていることもあって足元が広くすこぶる快適。地方の会場を含めてもここまで広いのは初めてで、視界も良くステージが近いので2階席でも十分楽しめそう。あれほどチケット確保にやきもきしたのに空席も結構あり、当日券でも十分見られるんじゃないか(下の写真は開場してすぐ)。

「寿曽我対面」は初春の祝いの演目。その実、親の仇討ちという背景があるのだが、十二単を着た花魁も舞台に居て、襲名披露やこけら落しにふさわしい華やかな舞台。左團次のどっしりとした工藤祐経が仇敵役ながらかっこいい。親を殺された兄弟が当の仇にたしなめられるという、”仇討ち”といっても何をやってもいい訳ではなかった武家社会の一面が垣間見られて興味深い。米吉演じる化粧坂少将の綺麗なこと、綺麗なこと。若いというのもあるだろうが何とも美しい。五郎役の又五郎が見得を切る場面が多いのだが、この演目では「大向こう」(「〇×屋!」とかの声を掛ける人)が少ないのか高麗屋の祝いだからか、掛け声が少ないのでやや寂しく感じる。

幕間を挟んで襲名披露の口上。坂田藤十郎をはじめ、吉右衛門らが次々と口上を述べる。いつも面白いと評判の左團次は、ここでも同じ学校だった幸四郎(現白鸚)が放課後に婆やと踊りや三味線の稽古に行くのに、自分はキャバレーに行っていたと笑わせる(笑)。

「籠釣瓶花街酔醒」でやっと新幸四郎が主演。初役であばた面の佐野次郎左衛門を演じる。襲名披露だから出ずっぱりなのかと思いきや、昼の部は白鸚もちょい役での出演のみ。雀右衛門演じる八ツ橋に一目惚れっていう設定にはちょっと入り込めないが(笑)、遊郭の仕組みやしきたりなんかも垣間見えて楽しい(ただ演目は酷い話なので終わった後には寂寥とした気分が残る)。ここでも遊女役で出た米吉の美しさに目が留まる。以前女形は梅枝推しだったが、ここで米吉推しに変更だ(笑)。後ろの席で隣の奥さんらしき人に「あれが片岡秀太郎だよ」とか(いや違いますから…)、「この後で切られる場面までだな」(コラコラ、みんな知ってますけど…)とか時折大きな声で解説する老人に閉口したが(苦笑)、楽しい初御園座公演だった。でもやっぱり夜の部の演目も見たいなァ。

一、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)

工藤祐経      市川 左團次
曽我五郎      中村 又五郎
曽我十郎      中村 鴈治郎
大磯の虎      中村 壱太郎
化粧坂少将    中村 米吉
梶原平次      中村 吉之丞
梶原平三      中村 寿治郎
八幡三郎      中村 種之助
近江小藤太    中村 歌昇
小林妹舞鶴    市川 高麗蔵
鬼王新左衛門  大谷 友右衛門


二、襲名披露 口上(こうじょう)

二代目松本白鸚
十代目松本幸四郎

 
幸四郎改め 二代目 松本 白鸚
染五郎改め 十代目 松本 幸四郎

坂田 藤十郎 他幹部俳優出演
 

三、籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)

序幕
大詰 吉原仲之町見染の場より立花屋二階の場まで

佐野次郎左衛門      染五郎改め 松本 幸四郎
兵庫屋八ツ橋        中村 雀右衛門
下男治六            中村 又五郎
兵庫屋九重          市川 高麗蔵
兵庫屋七越          澤村 宗之助
兵庫屋初菊          中村 米吉
若い者与助          大谷 廣太郎
絹商人丈助          中村 吉之丞
絹商人丹兵衛        嵐 橘三郎
釣鐘権八            松本 錦吾
繁山栄之丞          中村 歌六
立花屋女房おきつ    片岡 秀太郎
立花屋長兵衛        幸四郎改め 松本 白鸚

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松竹大歌舞伎「義経千本桜・すし屋」「釣女」 @岐阜県羽島市・不二羽島文化センター

2017年11月26日 | 歌舞伎

松竹大歌舞伎「義経千本桜・すし屋」「釣女」(11月24日・不二羽島文化センター)

 前日の「中村獅童による歌舞伎の見方」に続いて、こちらは歌舞伎巡業公演。毎年この岐阜県羽島市の会場に出かけているが、いつも困るのが駐車場。もちろんいくつか用意してあるのだが、毎回満車になってしまい、代替場所を尋ねると「もうありません」と言われてしまうことも。この日はそれを予測して少し早く着くようにしたので良かったが、周りの席の人達が「路上駐車した」という声が聞こえてきた。ここは催し物に積極的な素晴らしい会場だが、駅から遠くて乗用車で来る客が多いはずなので何とかしてもらわないとなァ。

今回も例年の如くチケット購入に出遅れて(←いい加減学習しろ)2階席。遠いがど真ん中でなかなか視界は良く、どのみち花道は用意されていないので見やすかった。ただいつもバッグに入れている単眼鏡を忘れてしまったので、ちょっと役者の表情の細かい所までは見ることが出来ないのが残念。

「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)」の「すし屋」の段は以前、歌舞伎座で観たことがある。その時の配役は菊五郎。菊五郎の権太は品の良さが滲み出てしまっていたが、今回の獅童はまさにぴったりのちょっと荒くれた雰囲気(獅童が品が無いという訳ではありません・笑)。この日は舞台袖ではなく客席後方から登場。つかみで観客を沸かせた。昨日自分の目と鼻の先に居た人物が、今日は1000人を相手に芝居だ。最期の場面の悲しみはあまり伝わってこなかったが、長い台詞回しは素晴らしかった。娘お里の役は米吉。米吉を観るのは2度目かな。口跡もはっきりとしているし、娘役の若い美しさ、可愛らしさが出ていて良かった。贔屓にしている亀蔵は悪役を演っている時のようなアクの強さは無いものの、やはりこの人が出ていると舞台が締まる。

「釣女(つりおんな)」は松羽目物。松羽目物(まつばめもの)とは能や狂言をルーツとする演目で、それらと同様に松の絵が背景の舞台で、衣装も同様のもので演じられる。先日観た「棒しばり」のように滑稽なものもあり理屈抜きで楽しめる。「釣女」も楽しい演目。ボケ役の太郎冠者が亀鶴。萬太郎は先程の「すし屋」に続いて高貴な役(歌舞伎では高貴な男性は白塗りの化粧で表わされる)。お楽しみの醜女(しこめ=ブス)役は稀代のキャラクター亀蔵。うん、さすが、ブスだなァ(笑)。今は歌舞伎人気が高いので大丈夫だが、今後の歌舞伎の裾野を拡げる為に、こういう”志村”的な分かり易く楽しい演目、どんどん小中学生に見せるべきだと思うんだけどなァ。

 

一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
すし屋

いがみの権太              中村 獅童
梶原平三景時              中村 亀鶴
弥助実は三位中将維盛  中村 萬太郎
娘お里                      中村 米吉
弥左衛門女房おくら     中村 梅花
若葉の内侍                 澤村 宗之助
鮓屋弥左衛門              片岡 亀蔵


二、釣女(つりおんな)


太郎冠者        中村 亀鶴
大名某           中村 萬太郎
上臈             中村 米吉
醜女             片岡 亀蔵

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中村獅童による歌舞伎の見方 @岐阜県各務原市・村国座

2017年11月24日 | 歌舞伎

「中村獅童による歌舞伎の見方」 (11月23日 村国座)

地歌舞伎が盛んな岐阜県。県内には芝居小屋が10箇所以上も現存している。そのうちのひとつ各務原市の村国神社に隣接する「村国座」で中村獅童が歌舞伎を解説するトークショーが行われた。チケットの発売は同市内の2ヵ所のみでネット販売も無かったので、仕方なく発売時間に仕事を抜けて売場のひとつへ。すでに行列が出来ているが取扱枚数も何も情報が無く、不安だったが何とかチケットを購入出来た。自分の後には間もなく売り切れて無駄足になった人も。危ない危ない。(※屋外写真は別日に撮影)

 

 

当日は嫁と車で出かける。駐車場を心配したが問題なく近くの駐車場に停めることが出来てひと安心(ここよりも翌日の羽島市の歌舞伎公演会場の駐車場が心配だ…)。並びの後尾について場内へ。外からは見たことがあったが中に入るのは初めて。靴をビニール袋に入れて、いったん正面に座るも嫁が2階の桟敷席に行きたいと言ったので席を移る。奇しくも先日行った「東座」と同じような位置。ここは東座よりも小さく、見えっ放しの太い梁など造りは似ているが、照明の数も少なく、壁に隙間も見えてより素朴。なのに舞台上には本格的な廻り舞台もある(なのでもちろん奈落もあるそうだ)。正面舞台上の梁には飾り彫りも見える。

 

 

獅童が和装で登場し、マイクを持って歌舞伎の「下座音楽」「所作音楽」「ツケ」など、音楽や効果音を実演付きで解説。舞台前のかぶりつきの席には招待された地元の子供歌舞伎の少年少女がおり、その子らを舞台に上げて立廻りを教えたり、白塗りの化粧を施し「菅原伝授手習鑑」の梅王丸、松王丸、桜丸の隈取を再現するなど楽しい趣向。東座でも同様の趣向があったが、こうして改めて丁寧に説明があると、本をたくさん読んでいても気づかない事、知らない事がまだ沢山あるんだなァと自覚出来て興味深い。獅童が場内を動き回ると、ちょうどその顔が自分達が座っている膝の真ん前を通過する感じで、近過ぎて驚くほど。嫁は「獅童の顔が近いっ」と興奮気味。こんな会場なのでほのぼのとした雰囲気で進行していく。最後には獅童自身が石川五右衛門を化粧無しで演じ「楼門五三桐(さんもんごさんのきり」の有名な台詞「絶景かな、絶景かなァ」と演って終了。とても楽しいイベントだった。

獅童は翌日(24日)岐阜羽島で巡業公演。人気歌舞伎役者って本当にいつ休んでいるんだろう?

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全国芝居小屋錦秋特別公演2017 @岐阜県加茂郡白川町・東座

2017年11月05日 | 歌舞伎

歌舞伎「全国芝居小屋錦秋特別公演2017」 (11月4日 東座)

 中村屋が全国に散らばる芝居小屋を廻る「全国芝居小屋錦秋特別公演2017」。岐阜県で地歌舞伎が盛んなことは知っていたが、今回も8公演のうち3公演が岐阜県内(現在も県内に10を超える小屋が残っているそうだ)。そのうち加茂郡白川町の「東座」(舞台:明治22年・1889、客席:明治33年・1900・建造)で行われた公演に息子(嫁の代理)と2人で行ってきた。息子は初歌舞伎鑑賞。初めての歌舞伎が芝居小屋公演って凄いナ。

国道41号線を北上し白川町に入る。一部車がすれ違えない細い道もあり、こんな山奥に本当に芝居小屋が?と不安になるくらい。小屋に着くとすでに昼公演を観終えた人達が帰っていく途中。案内らしきものは無く、小屋まで来たが駐車場は無いとのこと。近くの小学校校庭まで引き返し、シャトルバスで小屋に戻る。地元の人が運営しているので行き渡らないことも多いが、手作り感が溢れてこれはこれで楽しい。こんな小さな小屋で中村屋を観られるんだもの、気分が上がる。

 

バスが会場に到着。場外で助六寿司とお茶を購入して小屋の中へ。靴を脱いでビニール袋に入れて持ち、中に入るとすでに1階正面はほぼ満席。それにしても数多くの提灯がぶら下がり、舞台はすぐ目の前という感じ。大きな梁がむき出しの会場は何とも素晴らしい空間。収容人数は600人らしいが、客席の誰の顔も判別出来るくらいの空間なので、まさに”小屋”といった感じ。

どこで観ても不満はなさそうなので2階上手の桟敷席へ進む。桟敷には2列座布団が敷かれているがほぼ埋まっているようだったので、そのすぐ後ろの板が渡してあるところに腰かける(ちょっとお尻が痛いが)。煤けて年季が入った大きな東座の看板が見える。自分の席から客席を見渡すとこんな感じ(写真下)。舞台も花道のある下手側も近い近い。目の前には太い梁があり、造作を含めて何とも言えない、いい雰囲気。場内アナウンスも地元のおばちゃんだがたどたどしくて可笑しい。

 

まずは「歌舞伎塾」と題して、勘九郎、七之助、それに司会の澤村國久、地元恵那市出身のいてう(いちょう)が登場し、楽屋入りから女形の化粧が完成するまでを仲弥をモデルに見せたり、舞台での太鼓による効果音を再現したりと楽しくおしゃべり。勘九郎が仲弥を”タイ人の交換留学生”(笑)と紹介していたが、周りの人は「へぇー」と感心していた。オイ、信じてる人いるんじゃないか?(苦笑)。客席との交流もあり、和やかな雰囲気で進む。息子にはちょうどいいイントロだった。

そして松羽目もの「棒しばり」。勘九郎はもちろん、若い鶴松の太郎冠者も小気味よい演技で楽しい。息子も声を上げて笑っていた。分かり易く楽しい演目だが、諸手が不自由な踊りはかなり厳しそう。歌舞伎役者ってすごいなァ。歌舞伎座を含む大きな会場の前列よりも距離感は近いので、本当に目の前で踊っている感じ。

休憩の後は七之助の「藤娘」。真っ暗闇の会場にパッと明かりが点くと、もう会場中ため息しか出ない美しさ。実は嫁が七之助の藤娘をとても楽しみにしていたのだが、用事が出来て代わりに息子が観劇したのだ。この美しさを通常の会場とは全然違う距離感で見せてやりたかった…。藤娘が踊りだしてすぐ、田舎の会場らしくなぜか場内に鳥だかコウモリだかが飛んでいて、ざわつく(苦笑)。途中着物の早変わりがあり、その度に会場を埋めるため息、ため息。男でも惚れるわ、あれは…。あまりにも美しい舞いが終わる。名残り惜しいがこれで幕。とても素晴らしい空間だった。

 東座下足札(お土産)

 

一、歌舞伎塾

中村勘九郎
中村七之助

 

二、棒しばり(ぼうしばり)

次郎冠者:中村勘九郎
太郎冠者:中村鶴松
曽根松兵衛:中村小三郎

 

三、藤娘(ふじむすめ)

藤の精:中村七之助

 

( 地芝居 地歌舞伎 黒川東座 あずま座 芝居小屋 )

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錦秋名古屋顔見世「恋女房染分手綱」「番町皿屋敷」「蜘蛛絲梓弦」 @名古屋・日本特殊陶業市民会館

2017年10月14日 | 歌舞伎

歌舞伎「錦秋名古屋顔見世」(10月12日 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール・昼の部)

恒例の「錦秋名古屋顔見世」。今年も金山の「日本特殊陶業市民会館(名古屋市民会館)」にて開催。来年は御園座が杮落しなので、これで最後になるのかな。今年は珍しく9月に入ってすぐに秋らしくなって、10月には小寒い感じもあったのに、前々日ぐらいから夏日に逆戻り。昨日よりは少し収まったけれど、汗をかくのは嫌なので地下鉄からの連絡通路を使って会場へ。席は2階席。ビレッジホールは大きくないので充分に見られる席だ。客の入りは自分の周りを見る分にはまあまあじゃなかったかな。

 

一幕目は「恋女房染分手綱」。行き別れた母親と子供が主役の話。この子役が素晴らしかった。名跡のジュニアではないと思うが、見得も堂に入っていて、長台詞も危なっかしいところが無く、抑揚は無いものの(歌舞伎の子役の台詞は棒読みに近いものと決まっている)、演技も上手い。慣例で襲名以外で子役の名前は出ないのが惜しいが熱演だった。それにしても後ろの席のおばはん2人がずっと膝の上(つまり自分の頭のすぐ後ろ)でビニール袋をガサガサと触る音が気になる…(チッ)。

二幕目はお馴染みの「番町皿屋敷」。主役は梅玉。結婚していない血気盛んな独り身の武士を演じるには少し年齢が行き過ぎているが、それも含めて歌舞伎の独特なところ。爺さんが若い娘を演じたりもするからね。お化けになって出てくる話ではないが、壱太郎の独特の口跡がお菊の心情と重なって…、怖い(笑)。しかし、あれだけくどいほど事前に携帯電話の注意が入るにも関わらず、相変わらず鳴らす馬鹿が居て、うんざり。しかもたいてい静かな場面なんだよなァ…。

三幕目の「蜘蛛絲梓弦」は愛之助の5役早変わりが目玉のSF妖怪スペクタクル! 歌舞伎のこういう振り切ったところっていうのは本当に不思議で面白い。どこからああいう発想が出てくるのか…。愛之助は老人役でも男役でも女形でも懐の深いところを見せていた。声色も多彩。この日は”大向こう”(「〇×屋!」などと声を掛ける人)は2階の端っこの1人のみ。声が重なってしまったり、下手なタイミングの人も居るので、ずっと無くても別にいいと思っていたが、やはり役者が見得をしたところで声が掛からないのは結構寂しいものだ。

巡業公演だと演目のうちひとつは短い舞踊だったりして物足りなさを感じることもあるが、この日はさすがに錦秋名古屋顔見世、3幕共に物語がある演目で、見応えがあってとても満足して会場を後にした。それにしても東京に住んでいる人は毎月替わりで楽しむことが出来て羨ましいなァ…。

 

一、恋女房染分手綱(こいにょうぼうそめわけたづな)

重の井

乳人重の井        魁春
腰元若菜          吉之丞
本田弥三左衛門   東蔵

 

岡本綺堂 作

二、番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)

青山播磨         梅玉
お菊             壱太郎
後室真弓         歌女之丞
腰元お仙         梅丸
奴権次           吉之丞
用人柴田十太夫  橘三郎
放駒四郎兵衛    愛之助

 

三、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)

片岡愛之助五変化相勤め申し候

小姓寛丸      愛之助
太鼓持愛平
座頭松市
傾城薄雲太夫
蜘蛛の精

碓井貞光      松江
坂田金時      亀鶴
源頼光        梅玉

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平成二十九年度 松竹大歌舞伎 「猩々」「口上」「一谷嫩軍記・熊谷陣屋」 @岐阜市民会館

2017年09月06日 | 歌舞伎

歌舞伎「松竹大歌舞伎」(9月3日・岐阜・岐阜市民会館)

秋になると毎年名古屋公演と岐阜での巡業公演があり、いくつも観劇出来て嬉しいが、いつもチケットの手配に手間取って、どれがどれだか分からなくなり、この日も昼の部と夜の部(演目は同じ)を2枚づつ別の日に買ってしまう失態(汗)。嫁は昼の方が都合が良いと言うので、夜のチケットはお義母さんに貰っていただく。岐阜市民会館のチケットは「歌舞伎美人」で情報を得ても、発売予定日の前にとっくに会館にて売られているという何だか納得がいかない状況に毎年振り回されます(←いいかげん学習しろ)。嫁と近くの「更科」でお腹を満たしてから会場へ向かう。もちろん日差しはまだ強いが、今年は9月になったら即秋の空気がやって来たので不快ではない。夜は1階席だったが昼は2階席。こちらの会場は小さくないので少し距離は遠いが見やすい席ではある。

この公演は、中村橋之助が八代目「芝翫(しかん)」を襲名する襲名披露巡業公演。息子らもそれぞれ「橋之助」「福之助」を同時襲名するのだが、アナウンスによると宗生改め福之助が体調不良の為に休演とのこと。親子3人揃っての襲名披露が売りだっただけに、本人もさぞかし悔しいことだろう。

最初の演目は「猩々」。松緑と合わせて珍しい3人(3匹)の猩々(赤毛の架空の動物)の舞いが見られると思っていたが、福之助の休演のため通常通り2人での舞い。2人で調子を合わせるだろう所で微妙にずれたり、所作が若干違っていたりするのは演出なのか、それとも予定になかった2人での舞いのせいなのだろうか。それにしても橋之助、化粧の上からでもくっきりとした目鼻立ちがよく分かる。男前だなァ。

次は襲名披露の口上。俳優が揃って裃姿で順番に挨拶。四代目以来の立役による芝翫襲名だそうで、新芝翫は以前にも増して男らしさ、力強さを意識しているように見える。年輩の中村芝喜松も「梅花」を昨年襲名と紹介される。ただし”血”が物を言う歌舞伎界においては扱いは控えめ。松緑だけカミカミの口上(笑)。

そして「一谷嫩軍記・熊谷陣屋」。初めて歌舞伎を本格的に観劇した時の演目が国立劇場での通しでの「一谷嫩軍記」だったので感慨深い。今回の熊谷陣屋は吉右衛門や幸四郎で有名な團十郎型ではなく”芝翫型”なのだそう。初役でこれを復活させようと八代目芝翫は過去の書抜きで随分勉強したらしい。なるほど隈取といい、衣装といい、演技といい、随所に違う演出がある。出家を決めた熊谷も坊主頭ではなく有髪で、あの有名な最後の幕外での演技も無し。最後は舞台で複数の演者が見得を切る。かなり戸惑ったが同じ演目でもこんなに演出が違うなんて面白いもんだなァ。この話では、いつも”白毫弥陀六”という人物像が頭に入らず、観ている時においてけぼりになるのだが、後で嫁と話をしたら観劇数の少ない嫁の方がよっぽど理解していて、自分の記憶力の悪さ加減にガックリ…。

<演目>

一、猩々(しょうじょう)

猩々   尾上 松緑
猩々   国生改め  中村橋之助
酒売り  芝喜松改め 中村梅花


二、襲名披露 口上(こうじょう)     

橋之助改め 中村芝翫
国生改め  中村橋之助
宗生改め  中村福之助
幹部俳優出演


一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)

三、熊谷陣屋(くまがいじんや)

熊谷直実    橋之助改め 中村芝翫
相模      中村扇雀
堤軍次     国生改め 中村橋之助
梶原平次景高  市村橘太郎
藤の方     市川高麗蔵
白毫弥陀六   坂東彌十郎
源義経     中村梅玉

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平成中村座「義経千本桜」「弁天娘女男白浪」「仇ゆめ」 @名古屋・名古屋城 二乃丸広場内特設会場

2017年06月13日 | 歌舞伎

歌舞伎「平成中村座」(6月7日・名古屋城 二乃丸広場内特設会場・夜の部)

   

初めての平成中村座。名古屋で8年ぶりという興業は名古屋城内の二乃丸広場特設会場というこれ以上ないロケーション。もともと初代中村屋は名古屋の中村区出身だそうで、中村公園内にも初代の銅像が出来て、先日勘三郎と七之助も参加して除幕式が執り行われた。せっかく名古屋城の入場料もチケット代に含まれているので、少し早く着いて城内を見学。そして会場内へ。

外では切子や刷毛など江戸仕事、それに弁当の屋台が出たりして大賑わい。靴を脱いで上がる場内は、昔の芝居小屋をイメージして造られていて舞台がグッと近く、天井からぶら下がった大きな提灯といい、周囲に飾られた赤い提灯といい、舞台正面に特別に設えられた「お大尽席」(会場からの退場時も提灯を持ったお茶子さんが城門まで送ってくれる特別席)といい、雰囲気たっぷり。もちろん定式幕は中村座カラー。人気の公演とあって会場はほぼ満席。今回自分が取った席は、花道のすぐ横下手側の座椅子の通称”ドブ席”。花道で見栄を切る役者が背中を見せてしまう席だが、臨場感は抜群。それこそ見上げるとすぐそこの役者の汗や唾が飛んできそう。このドブ席は1列だけで、すぐ横には椅子席があり、ご裕福そうな旦那様や奥様が座っていらした(笑)。この狭い雰囲気で気分も盛り上がる。

 

芝居は普通こんなに有名な話を並べないだろうという大盤振る舞いな演目。まずは扇雀が狐忠信を演じる「川連法眼館(通称:四の切)」。てっきり狐は勘九郎だろうと思っていたので意外だった(配役をよく見ていなかった)。扇雀は50代後半。それが飛んだり跳ねたりと舞台をトリッキーに駆け回るんだからスゴイ。さすが。1か月の長丁場ですけど大丈夫ですか?(笑)。

「弁天娘女男白浪」は何といっても七之助。女形では当代随一の艶っぽさ。もう男が観ても”惚れてまうやろ”という美しさと、女装がバレた後のはっちゃけた演技の対比が楽しい。自分の近くに座っていた女性客は大ファンなのだろう、目が完全にハート型になっていた(笑)。器用な萬太郎も、女形を演らせるとピカイチの梅枝も、悪人役ではあまり見せ場が無いか。体躯が大きい彌十郎はさすがの存在感。でもこの2つの話を見て自分の眼が釘付けになったのは亀蔵。その類稀な外見(失礼)と腰の座った迫力ある口跡、時々見せる茶目っ気と、いっぺんでファンになってしまった。

最後は「仇ゆめ」。狸が化けた踊りの師匠は勘九郎。七之助は今いちど女形での登場。この2人を一度に見ると、勘三郎の息子2人の産み分けがどれだけ”奇跡”なのかよく分かる。勘九郎は口跡だけ聞いているとちょっとかすれた勘三郎、といった感じで目をつぶると分からないほど親父にそっくりになってきている。ただ女形を演らせるとやっぱり醜女。それが弟の七之助はため息が出るほどの色っぽさ。兄弟でこれだけ個性や外見が違うからこそ同じ舞台で演じ分けられる。この「仇ゆめ」では勘九郎が大サービスで会場内を駆け回った。そして圧巻は…、舞台のバックドロップがドーンと開いて、その向こうには薄暮に浮かび上がる本物の名古屋城という演出。これは凄い!(自分の席からはばっちりの眺めだった席によっては見えないかも)。ずっとコミカルに演じ続けてきた狸(勘九郎)が死に際にもう一目、と惚れた深雪(七之助)と絡む場面。客席から笑い声が漏れたのはどうして? 畜生とはいえ、あそこは切ない場面だと思うのだが…。

歌舞伎には珍しくカーテン・コールもあり、幕間を入れて約4時間で終演。満足。文句なしに楽しかった。

 

一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)

川連法眼館(かわつらほうげんやかた)

佐藤忠信/忠信実は源九郎狐  中村 扇雀
静御前  中村 梅枝
亀井六郎  中村 萬太郎
駿河次郎  中村 虎之介
妻飛鳥  中村 歌女之丞
川連法眼  片岡 亀蔵
源九郎判官義経  中村 勘九郎

 

河竹黙阿弥 作

二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)

浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場


弁天小僧菊之助  中村 七之助
南郷力丸  片岡 亀蔵
赤星十三郎  中村 梅枝
忠信利平  中村 萬太郎
伜宗之助  中村 虎之介
日本駄右衛門  坂東 彌十郎

 

北條秀司 作・演出

三、仇ゆめ(あだゆめ)

狸  中村 勘九郎
深雪太夫  中村 七之助
舞の師匠  坂東 新悟
揚屋の亭主  坂東 彌十郎

2017.6.7

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錦秋名古屋顔見世「寺子屋」「英執着獅子」「品川心中」 @名古屋・日本特殊陶業市民会館

2016年10月18日 | 歌舞伎

歌舞伎「錦秋名古屋顔見世」(10月13日 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール・夜の部)

 恒例の秋の名古屋での歌舞伎。御園座の完成(2018年予定)はまだまだなので、今年もここ名古屋市民会館(ネーミングライツで上記の名前に)。本当は昼の部も見たかったがなかなか休みを取ることは出来ず、必死に仕事をやりくりして金山へ。自分は片岡仁左衛門を観るのが初めてなので、本当に楽しみにしていた。会場に入ると空席は目立つものの、まあまあの入り。連日昼夜公演なので平日はこんなもんだろう。2階席真ん中辺りだったので、芝居を見るには悪くない席。

まずは「寺子屋」。歌舞伎の演目の中でも特に有名な「菅原伝授手習鑑」の段のひとつなので、話のあらすじも知っているし、少し前にテレビで放映された海老蔵、松緑で演っていたのを見ている。男が見てもカッコイイ仁左衛門が松王丸を演じ、武部源蔵役は染五郎。重い話だし、仁左衛門メインなのだが最後ではなく、初っ端の上演。衣装も化粧も派手なので、あの線の細さというか色気は見づらいが、やっぱりこの人は絵になるなァ(人間国宝になっていたとは知らなかった)。「せまじきものは宮仕え」の有名な台詞のあるこの話、封建時代の理不尽さ(恩義を感じている人間と、仕えている主君の為に自分の子供の首を切らせる)がどうしようもなく厳しいが、話の筋を知っていても迫真の演技を目の前にすると泣けてきてしまった。同じ演目でも屋号が違うと細かい台詞や所作の解釈が違うのがよく分かって、それぞれの役者の(あるいは家の)こだわりの奥深さが興味深い(ちなみに仁左衛門の解釈はこちら)。

「英執着獅子」は時蔵による舞踊。いわゆる「獅子物」。前シテ(役柄)ではお姫様。衣装の早替りでは客からため息が。後シテでは獅子の精が乗り移り、豪快な舞い(有名な毛振り)となる。いったん下がって再登場し、毛振り。歌舞伎では当たり前のことなのかもしれないが、60歳を超えた時蔵が石橋の上で毛振りするのはさぞかし大変だろうと思う。客からやんやの拍手でと思いきや、この日の客は全体的に拍手が薄い。ココ一番拍手するとこでしょ!とばかりに手を叩くが、全体的に何となく冷めたような雰囲気が…(自分の周りだけかな?)。これ、演者にも伝わるよなァ。台詞は無いので、あの特徴的な口跡を聞くことはなかったが、素晴らしい舞踊だった。

最後は落語を基にした世話物「品川心中」。寺子屋と打って変わって楽しい演目なのだが、ちょっと無理やり歌舞伎に入れ込んだ感じがあるのと、この日の客の全体的な雰囲気なのか、くすぐってもなかなか盛り上がらない。それに染五郎が花道に出てきても拍手が起きなかったのにはビックリ…。こういうひょうきんな役を演る染五郎を見ると、故・勘三郎を思い出す。口跡も途中聞き間違ったと思うほどよく似ていた(役柄なのかもしれないが)。誰が演じてもこうなるのか興味が涌く。この日の染五郎は風邪をひいたとみえ、声がかすれて聞き辛く、客席まで届かないのも追い打ちをかけ、終始スベり気味になって今ひとつ盛り上がりに欠けた(ように感じた)のがやや残念だったかな。昼の部も見に行きたいなァ。 

 

一、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)

寺子屋

松王丸    仁左衛門
武部源蔵   染五郎
戸浪     梅枝
涎くり与太郎 廣太郎
百姓吾作   松之助
園生の前   新悟
春藤玄蕃   亀蔵
千代     孝太郎

 

二、英執着獅子(はなぶさしゅうちゃくじし)

姫後に獅子の精 時蔵
 
 

矢田弥八 作

三、品川心中(しながわしんじゅう)

幇間梅の家一八   染五郎
一八女房おたね   梅枝
城木屋楼若い衆廣吉 廣太郎
城木屋楼女郎おそめ 新悟
大工の棟梁六三   亀鶴

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平成二十八年度 松竹大歌舞伎 「獨道中五十三驛」 @不二羽島文化センター

2016年10月06日 | 歌舞伎

歌舞伎「松竹大歌舞伎」(10月5日 不二羽島文化センター スカイホール)

嫁と一緒に歌舞伎観劇。仕事の関係上、普段はあまり一緒に行けないのだが、嫁も自分ほどではないにせよ、あの非現実的な空間がとても気に入っているようで気楽に楽しんでいる。昼食を済ませ会場へ。会場周辺にいくつかある駐車場は満車状態。皆途方に暮れていて、係員にどこに停めたらいいか訊くと「さぁ、分かりません。」との信じられない返事。路上駐車もやむなしかと思っていたところに、運良く微かなスペースを見つけて強引に駐車(→結局終演後外に出たら路駐の列)。公共交通機関ですっと行けるような場所じゃないんだから何とかしてくれないと…。

開演前のロビーは前回の岐阜よりははるかに活気が見られる。席もほぼ満席の盛況だった。今回は初めての4代目市川猿之助の公演とあってとても楽しみにしていた。しかもお家芸である「宙乗りならびに十三役早替り相勤め申し候」とあって、いやがうえにも期待が高まる。いつもは話の筋をある程度予習して臨むのだが、今回は良いテキストが見つからず、ぶっつけ本番。地方巡業という制約の中で、どんな「外連(けれん)」を見せてくれるのか。

まずは弥次さん、喜多さんが登場して狂言回し。ざっくばらんな感じで賑やかしてくれる。「やらずのお萩」を演じた春猿を見るのは初めてだったが、さすがに、うちの嫁もウットリするほど綺麗。演技の終わりに口上があり、昭和5年生まれ(御年86才!)という寿猿と楽しく絡んで和ませた。今回の演目は副題に「京三條大橋より江戸日本橋まで」とあったので、全段をどうやって演るのかなと思っていたら、やはり途中の段は端折って一気に岡崎まで行き、その後は浄瑠璃で駆け足で見せるという趣向だった。その為に口上である程度の説明が入るという寸法。

短い幕間があって、次はお待ちかね猿之助の登場。老婆「おさん」では客席から「うわぁ…」と声が出るくらい不気味な喋りと老婆らしい動きで引き付けておいて、いざ化け猫の正体を現した時には思い切り跳ね回る、その対比が面白い。血は出るわ、音も出るわ、着ぐるみもあるわ、飛び回るわの大仕掛け。濃い化粧で実際の表情は分からないのだが、猿之助はいかにもこういう「外連」が楽しそう。名前の出ていない相手役も大奮闘。そして最後は宙乗り。巡業公演とあってステージ上だけの宙乗りだったが、色々な演出があるものだ。話の筋や、難しいことは考えず、文句無しに楽しい。

最後の段はまた弥次さん、喜多さんの口上で説明があり、巳之助が浄瑠璃に合わせて十三役の早変わりを見せて、江戸は日本橋までの道程を見せる。女房から、芸者から、弁天小僧、雷、などと様々な手法で、あっという間の変身に次ぐ、変身。舞台裏はさぞかし大変なことになってんだろうな、と思わせる早替りの連続。会場からもため息が漏れる。2階席から見ているから俯瞰するような感じになってしまうけれど、これ1階の正面から見ていたらもっといい感じだろう。これも文句無しに楽しいなァ。三津五郎亡き後、巳之助に対する期待も、責任も大きいだろうが、口跡も分かり易く、安心して観ていられた。これから歳を重ねるにしたがって、更に色んなものを身に着けていくんだろう。

こういう外連味たっぷりの歌舞伎もやはり楽しいものだ。

 

四世鶴屋南北 作
奈河彰輔 脚本・演出
石川耕士 補綴・演出
市川猿翁 演出

三代猿之助四十八撰の内
獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)

京三條大橋より江戸日本橋まで
浄瑠璃 お半長吉「写書東驛路」(うつしがきあずまのうまやじ)
市川猿之助・坂東巳之助 宙乗りならびに十三役早替り相勤め申し候


おさん実は猫の怪    市川 猿之助
由留木調之助              

丹波与八郎       坂東 巳之助
丁稚長吉
信濃屋娘お半
芸者雪野
長吉許嫁お関
弁天小僧菊之助
土手の道哲
長右衛門女房お絹
鳶頭三吉

船頭浪七
江戸兵衛


女房お六重の井姫     市川 笑也
半次郎女房お袖      市川 笑三郎
丹波与惚兵衛/赤星十三郎   市川 寿猿
やらずのお萩       市川 春猿
赤堀水右衛門       市川 猿弥
石井半次郎        市川 門之助

 

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