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大学構内の旧BOX前畑を維持管理しているのだが、ここでは素敵な出会いがたくさんある。
昆虫の数だ。それは殆どが直翅目、つまりバッタ類なのだが、その種類の多さには驚かされるばかりだ。
ほんの小さな空間なのである。こじんまりとしたビオトープの中に、あらゆる姿かたちをしたバッタたちが、ぴょんぴょん跳ね回っているのだ。その跳ね回り方も多彩なのだから面白い。
そんな中で、「直翅目の王」とでもいえる存在の者が、特に目立つようになってきた。
カマキリだ。鋭い眼光で、しかし体は茂みに隠し、じっと獲物を狙っている。その重厚なオーラは、人間でも畏怖してしまいそうだ。
しかしこのように、貫禄がついたカマキリたちも、つい最近まではちっぽけで、人間が近づくとすごすごと逃げていたのだ。
人の手が近づくと、まず後ずさりして、そしてすばやく茂みの奥へ身を隠す。バッタよりも、臆病な胆の持ち主あった。
やがて成長し、10センチくらいの大物になると、もはや人間の手なぞに屈するものはいない。まずは、持ち前の鎌で持って威嚇し、振り下ろすのだ。
もちろんそれでも人間の方が勝つのだから、最後には持ち前の俊敏な足でさっと逃げてしまうのだが。
それにしてもバッタ類というものは不思議なものである。
生まれながらにしてすでに親と同じ体つきをしている、昆虫界では異彩を放つ者たちである。
その子供たちは1センチにも満たないほど小さな体だったにも拘らず、3ヶ月ほどで、体長が3倍にも5倍にも、10倍にもなるのである。これは体積にして、27倍、125倍、1000倍なのである。真に不思議なものであると感嘆せざるを得ない。
ところで話を戻すが、何故成長したカマキリは、いくら大きくなったとはいえ、こうも人間の手に立ち向かおうとするのだろうか。人間だからよいものを、猫だったら完全にその胃の中に収められてしまうであろうのに。
それは、ハンターとしての宿命なのかもしれない。
兎に角動くものを、生きとし生きるものを食らっていかねば、己の生命を保持することが出来ない。
肉食獣なども含めたいわゆる高次消費者は、一次消費者や生産者からすれば、効率よく食物を摂取してずるいと映るかも知れない。
しかしそれを弁護する立場に立つと、高次消費者は、常に他の生命を絶やさない限り、生きていくことが出来ないのである。常に何者かを殺さねばならない。ある意味あくどくて、貪欲でなくてはならない。だから、どんな生物であろうとも、獲物として見なくてはならない。
それはもっと突き詰めていうと、常に己の命と引き換えでなくてはならない。真剣勝負なのだ。本当は切ない、生き方を選んでしまった者たちではないか。
…とまぁ、実に人間的な、感情的な分析をしてしまったものだ。人間はそう思って、つまり食事の際に神に感謝の祈りをささげたり、手を合わせて「いただきます」と唱えるのであろうが、果たしてカマキリがそんなことを考えていようはずも無い。
ただ、やはりカマキリが別の生命体を食らっているところを見ると、その餌食に同情の念を抱き、勝手に怨念をそのカマキリに抱いてしまいかねない。
人によっては、それが「弱いものいじめ」に映るようで、カマキリなど捕食者を敵とする伝説や逸話も多くある。そのもっともたるものが狼であろう。
いずれにしろ、それではカマキリたち捕食者の肩身が狭い。
そのものたちの復権のために、ある意味、生態学というのが発展してきたのかもしれない。
例えばサバンナのライオンなぞは、シマウマを2,3日に1頭食べる代わりに、結果としてシマウマたちのテリトリーを守っているのである。
また、寓話では敵役が多い狼も、狼の絶滅などで分かったことだが、鹿などの草食者の無秩序な繁殖を防止したり、その餌食の食いかけを他の動物たちも享受することによって、豊かな生態系が発達してきたということが分かってきた。
それでは、カマキリたちが守っているものとは何か。
考えてみよ、カマキリはバッタや甲虫などの昆虫を食べるのである。ではその昆虫たちが増えすぎるとどうなるか。当然、その近辺の草本があっという間に食い尽くされてしまう。
なおかつ、ここは旧BOX前畑、ここでは花などを植えている場所である。
特に今年はカメムシやら甲虫やらが異常発生し、作物に多大なるダメージを与えていると聞く。ここも例外ではなくカメムシや甲虫を多く見かけるが、そこまで大事には至っていない。
これも、カマキリのおかげなのである。もちろん、大きな巣を張った蜘蛛のおかげでもある。
これらの偉大なる生命のつながり、生態系に思いを馳せるとき、その大きなカマキリの目に映るものの先には、生態系をコントロールするための任務が…いやいや、考えすぎか。
カマキリ1匹を目の前にして、またつまらぬ考察をしてしまった。