あぁ、やっぱりか。
マスツーリズム問題はこうも
繰り返されるものかは。
秘境や桃源郷のような場所が、
ひとたび国内や世界に知れ渡ると、
交通が利便になった今ではどっと人が
押し寄せてきてしまう。
世界遺産の弊害が指摘される
一つの所以である。
ただしそれは誤解だと考えるのだが─。
今日の「世界・ふしぎ発見!」(TBS)は、
中国の「福建の土楼群」でした。
土楼群の凄さは、去年散々語りましたので、
ここでは繰り返しません。
過去の記事を読んでもらえればと思うのです。
(去年1月の「探検ロマン世界遺産」と、
去年3月の「THE世界遺産」。)
しかし、あれから1年以上。
今日テレビで観た映像は、さらに衝撃的でした。
観光客がもうぞろぞろと。
神秘性も長閑な空気もどこへやら。
交通が不便なところにもかかわらず、
年間の観光客数は07年の8,000人から
09年は65,000人に激増したといいます。
遺跡史跡ならいざ知らず、
住民が住んでいる家にですよ。
番組のテーマは、住民である「客家(はっか)」
の教えを紹介するものでした。
しかしそれに並んで、観光問題も
取り上げられていたのはとても良いと思いました。
観光問題と伝統生活について、土楼の住民が
自治会の席で喧々囂々と議論していたのが
印象的でした。
出来れば、その話し合いの中身をもっと
教えて欲しかったなと思いました。
観光問題に神経を減らす住民の、
貴重な意見を聞きたかったところです。
議論の結論は、観光と文化は両方とも
大事で、どちらも守っていくような
方向性で努力していかねばならない
ということでした。
なんと素晴らしい結論だろうか、と思いました。
一見当たり前に見える結論ですが、
これがひと昔前だったら、環境問題よろしく
保護か開発か、という二元論的議論となって
平行線を辿るのが常でございましたから。
そして現に、観光よりも開発を取った
ドイツの「ドレスデン・エルベ渓谷」は
世界遺産登録を抹消(2009年)されたのですから。
すっかり観光地と化してしまった土楼群には
個人的にはもはや魅力が薄れたものとなって
しまいました。
しかし、かのような住民の結論が
導き出される限りは、この村の伝統文化は
まだまだ維持されていくだろうとの
期待を寄せるのです。
2,3年が経過したらどうなっているか、
大変気がかりな世界遺産です。