ー遥かな町へーQUARTIER LOINTAIN
2010年 フランス 97分
サム・カルバルスキ監督 谷口ジロー原作 パスカル・グレゴリー(トマ・ヴェルニア)ジョナサン・ザッカイ(ブリュノ)アレクサンドラ・マリア・ララ(アンナ)レオ・ルグラン(トマ・ヴェルニア(14歳))タニア・ガルバルスキ(ネリー)ローラ・マルタン(シルヴィ)
【解説・あらすじ】
原作は、谷口ジーローのマンガ作品。鳥取県倉吉市の「白壁土蔵群」や「昭和の色彩」が残る街並が舞台となっている。また「映画ならカンヌ、漫画ならアングレーム」と称されるほどヨーロッパでは権威ある「アングレーム国際漫画フェスティバル」でベストシナリオ賞などを受賞。
パリ在住の漫画家トマ・ヴェルニアは、48歳の中年男性。あるときトマはふとした事から郷里である1960年代のフランスの田舎町にタイムスリップしてしまう。そこはまさに父が失踪する数日前であった。14歳に戻ったトマは繰り返される人生のなかで、父がいなくなってしまう理由を知ろうとするのだが…。果たしてトマは、やがて訪れる"父の失踪"を止められるのか?友人や初恋の人との再会、両親の苦悩などを通じ、現代人にとっての「郷里」「家族」とは何かを問いかける。(公式HRより)
【感想】
DVDスルーになった作品のようですが、日本人の漫画家の原作だし、親しみのわく、心に残るいい作品でした。
中年の漫画家トマ・ヴェルニア(パスカル・グレゴリー)は、妻と二人の娘に囲まれて幸せに暮らしているけれど、疎外感があった。
漫画展のあと、列車を乗り間違え、生まれ故郷の町で下車する。
次の列車まで時間があるので、母の墓参りをすることにした。
そこで、めまいを覚え気を失ってしまう。
トマが14歳のとき、父は自分の誕生日に失踪し、その後残された母の苦労は大変なものだった。
母は、失意の中で若くして亡くなった。
次に目覚めると、トマは14歳の少年の頃の自分になっていた。
トマが家に戻ったときは、父の誕生日を過ぎていて、父が失踪していないことにほっとする。
しかし、それは勘違いで、父の誕生パーティが1週間ずれていたのだった。
父には親友がいて、その親友の恋人が母だったことを祖母から聞いた。
その親友は戦争に巻き込まれて銃殺されたのだ。
その後、傷心の二人が結ばれたということを知る。
さらに、父には秘密があり、跡を付けたトマは父が病気の女性と会っていることを知る。
大人の心で14歳になっているトマは、なんとか父を引き止められないかと心を砕くが、やはり、誕生日の夜、父はいなくなった。
トマは駅で父を捕まえて説得するが、父の決意は固く、やはり列車に乗って去ってしまった。
トマに女性が亡くなったことを告げ、「自分の人生を生きる」と言い残して。
墓場で意識を取り戻したトマ。
母の人生を変えることはできなかったが、トマ自身は何かを得て、自分の家族が待っている家に帰っていった。
多感なときに、父の失踪というショッキングな出来事が起こってしまったトマ。
それが彼の人生に大きな影を落としていたのでしょう。
その時点を生き直すことによって、トラウマを振り払うことができたのかもしれません。
美しい風景とともに、少年時代の友情や初恋も織り込んで、詩情豊かな作品になっていました。
少年時代のトマを演じた少年が、なかなかの美少年です。