マダムようの映画日記

毎日せっせと映画を見ているので、日記形式で記録していきたいと思います。ネタバレありです。コメントは事前承認が必要です。

イースタンプロミス

2008-06-28 16:21:39 | 映画ー劇場鑑賞


ーイースタンプロミスーEASTERN PROMISES
2007年 イギリス/カナダ/アメリカ
デヴィッド・クローネンバーグ監督 ヴィゴ・モーテンセン(ニコライ)ナオミ・ワッツ(アンナ)ヴァンサン・カッセル(キリル)アーミン・ミューラー=スタール(セミオン)イエジー・スコリモフスキー(ステパン)シニード・キューザック(ヘレン)

【解説】
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のデヴィッド・クローネンバーグ監督とヴィゴ・モーテンセンが再びタッグを組み、ロンドンに暗躍するロシアン・マフィアを描いた犯罪バイオレンス。出産と引き換えに死亡した少女の日記をきっかけに、非情なマフィアの存在が露呈していく。共演は『キング・コング』のナオミ・ワッツと『ジェヴォーダンの獣』のヴァンサン・カッセル。サウナで繰り広げられる、ヴィゴ・モーテンセンのリアルな格闘シーンは必見。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
ロンドンの病院で産婦人科医をしているアンナ(ナオミ・ワッツ)のもとに、ロシア人の少女が運び込まれる。しかし、出産の直後に少女は命を落とし、日記と赤ん坊が残された。そこに記された内容に危険を感じながらも、赤ん坊の家族を見つけ出そうとするアンナ。彼女はあるロシアン・レストランにたどり着き、ロシアン・マフィアに雇われているミステリアスな男ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)に出会う。(シネマトゥデイ)

【感想】
私はデヴィッド・クローネンバーグ監督とヴィゴ・モーテンセンの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」もとても気に入っていて、この作品も「痛いよ」と友達から聞いていながらも、期待して見に行きました。

見終わって、大満足。
でも、なぜかしら。

はっきりいって、私はやくざ映画もマフィアも大嫌い。
ホラーも、バイオレンスも大嫌い。

およそ、私の好みからはかけ離れた作品なのに、なぜこうも魅力的なのか。

この作品のテーマはイギリス社会のロシアマフィア。
人身売買と、レイプと売春。

イギリスって、移民社会でもあるのですね。
しかも住み分けが進んでいるようです。

暗躍するKGB。
名前がFSBに変わっても、恐ろしいイメージは拭えません。
ロンドンで、事件もありましたねえ。

 アンナ
アンナ(ナオミ・ワッツ)は、赤ちゃんを流産して、恋人と別れ、母親の元に戻ってきた、ロシア人の血を引く助産婦です。
その彼女が働いている病院へ、瀕死の妊婦が送られてきた。
見るとまだ子供。
赤ちゃんは助かるが、少女は死んでしまう。

赤ちゃんの身内を捜そうと、少女の持っていた手帳に挟んであったレストランを訪れたことで、アンナはおそろしい事件に巻き込まれていきます。
なぜなら、このレストランこそ、ロシアマフィアのボス(アーミン・ミューラー=スタール)が経営するレストランだったからです。

人当たりのいい老人が、一皮むけば、非情なボス。
でも、身内はとても大切にします。
反対に、秘密を嗅ぎ付けた人間には容赦なしです。

飲んだくれで、どうしようもないバカ息子のキリル(ヴァンサン・カッセル)。
人も虫けら同然に扱って平気な人です。

この二人に使え、ファミリーの一員になることを狙っているのがニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)です。

彼は、何者なのか?
敵なのか味方なのか?

それは見てのお楽しみですが、必見はサウナ風呂で、全裸のニコライが殺し屋2人に襲われるるシーン。

監督いわく、全裸は人間の弱さを表しているのだそうです。
そこで試される、人間の防衛力。
生への執着としてのバイオレンス。
これは、言葉では説明ができません。
演じるヴィゴと演出する監督の信頼関係のなせる技だと、感動しました。

ほんと、すごいから、見て欲しい!!

それから、ヴィゴ自身がロシアまで取材に行って、ロシアマフィアの役作りをしたそうです。
さらに、監督に進言して脚本まで書きかえたというタトゥにこめられたメッセージ。
華やかさはまったくなく、無機的で非情な感じでした。
ヴィゴは43カ所もタトゥを入れたそうです。

とにかく、冷徹非情に徹して作った作品なのに、短いシーンで人のぬくもりや心の交流を感じさせるのは、監督の力量だと思いました。

ラストのワンショット。
全裸でいるより、セクシーで、エロティシズムに溢れたヴィゴの姿。
これぞ、男!!
男の魅力全開のヴィゴの映画でした。

幻影師アイゼンハイム

2008-06-28 16:16:14 | 映画ー劇場鑑賞
ー幻影師アイゼンハイムーTHE ILLUSIONIST
2006年 アメリカ/チェコ
ニール・バーガー監督 エドワード・ノートン(幻影師アイゼンハイム)ポール・ジアマッティ(ウール警部)ジェシカ・ビール(公爵令嬢ソフィ)
ルーファス・シーウェル(皇太子レオポルド)エドワード・マーサン(興行師フィッシャー)ジェイク・ウッド(ヤルカ)トム・フィッシャー(ウィリグート)アーロン・ジョンソン(若きアイゼンハイム)エレナー・トムリンソン(若きソフィ)カール・ジョンソン(医者/老紳士)

【解説】
9世紀末のウィーンを舞台に、見事なイリュージョンで人々を魅了した天才幻影師と、皇太子との結婚を控えた公爵令嬢の禁断の愛を描いたラブストーリー。ピューリッツァー賞受賞作家スティーヴン・ミルハウザーの短編を新鋭監督ニール・バーカーが映画化。主人公の幻影師をエドワード・ノートン、彼と惹(ひ)かれ合う公爵令嬢を『NEXT ‐ネクスト‐』ジェシカ・ビールが演じている。当時の世相を加味したゴージャスでサスペンスフルな展開と驚きのラストシーンに注目だ。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
魅惑的なイリュージョンで、大衆の心をつかむ幻影師アイゼンハイム(エドワード・ノートン)。ある日、彼の評判を聞きつけた皇太子レオポルド(ルーファス・シーウェル)が、婚約者のソフィ(ジェシカ・ビール)を連れて彼のショーを観覧。しかし、アイゼンハイムとソフィの間には、幼い日に身分の違いが原因で引き裂かれた過去があった。(シネマトゥデイ)

【感想】
これは、「プレステージ」と同じ頃の作品ですが、日本では同じ魔術師ものということで、かぶるのをはばかったのか、いまごろの公開で、しかも単館系、地味な公開になってしまいました。

でも、作品が地味かと言うと、そんなことはありません。
作品的には互角、私は、圧倒的にこちらが好きです。

美男美女(エドワート・ノートンとジェシカ・ビール)の恋が、身分違いで引き裂かれ、再開した初恋の人は、もうすぐ独裁者になることを画策している皇太子に嫁がなければならない運命。
典型的な悲恋物語、しかも、その悪役がルーファス・シーウェル、こわい。

その間を行ったり来たりするお人好し、小市民の刑事がポール・ジアマッティ。

もう、役者がハマっているでしょう?

エドワート・ノートンは、得体の知れないカリスマ性にとんだイリュージオニストにぴったりでした。
いつもの彼の映画とは違って、最後はお姫様を救い出すヒーローに。
きゃあ、きゃあ。
ノートン素敵!!

観客は大満足のラストじゃないかなあ。

もう少し、たくさんの劇場で公開しても損はない作品だと思うけどなあ。

ジュノ

2008-06-28 16:09:24 | 映画ー劇場鑑賞

ージュノーJUNO
2007年 アメリカ ジェイソン・ライトマン監督 エレン・ペイジ(ジュノ)マイケル・セラ(ポーリー)ジェニファー・ガーナー(ヴァネッサ)ジェイソン・ベイトマン(マーク)オリヴィア・サールビー(リア)J・K・シモンズ(マック(ジュノの父))アリソン・ジャネイ(ブレン(ジュノの義理の母))

【解説】
16歳の少女が予想外の妊娠を経験し、現実を受け止めながら成長していくさまを描いたヒューマンコメディー。『サンキュー・スモーキング』のジェイソン・ライトマン監督が、『ハード キャンディ』で衝撃を与えた成長著しいエレン・ペイジの魅力をいかんなく引き出した。共演にはカナダの子役出身マイケル・セラ、『キングダム/見えざる敵』のジェニファー・ガーナー。周りを振り回すほど自意識過剰な少女を取り囲む家族や女友だちや、ボーイフレンドの視線がほほ笑ましい。(シネマトゥデイ)

【あらすじ】
パンクとホラーが好きなクールな女子高生ジュノ(エレン・ペイジ)は、親友ブリーカー(マイケル・セラ)との興味本位にセックスをして妊娠してしまう。中絶を思いとどまったジュノは友だちのリア(オリヴィア・サールビー)に協力してもらい、養子を希望している夫婦を探すことに。理想的な夫婦を見つけ、会いに行ったジュノだったが……。(シネマトゥデイ)

【感想】
今年のアカデミー賞の台風の目となった感じの作品。
評判が高く、すごく楽しみでした。

日本での評価は賛否両論に分かれているようだけど、私はすごく面白かった。

「ハードキャンディ」で、痛快に少女の敵をやっつけたエレン・ペイジが、さらにパワーアップしてスクリーンに戻ってきたという印象を受けました。

そして、ジュノ(エレン・ペイジ)を取り巻くキャラクターの素敵なこと。

まず、赤ちゃんの父親のポーリー(マイケル・セラ)。
この、ボォーッとしている感じが、ジュノの癒しだね。
ただの興味本位のセックス、おませなジュノに振り切られた感じだけど、彼は彼なりに、ジュノに寄り添おうとしていたんだと思うなあ。

親友のリア(オリヴィア・サールビー)。
彼女とジュノの距離もいい感じ。

一番の味方は、パパ(J・K・シモンズ)。
娘のやったことを受け入れ、娘の希望を最大限かなえてくれようと努力してくれる器の大きい人。

そして、継母(アリソン・ジャネイ)。
いい距離を保ちながらも、ジュノの絶対的な味方でいようとしてくれる。
検査技師に言い返したのは、痛快でした。



赤ちゃんの養子先の夫婦。
妻のヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)は、完璧主義なのに、自分に赤ちゃんができないことが悲しい。
いままで、不妊ではずいぶん努力もし、落胆も繰り返してきたのでしょう。
かなり、神経が過敏になっている様子。
一方、夫のマーク(ジェイソン・ベイトマン)は、呑気で明るい、裕福なCM作曲家。

確かに、高校生が興味本位のセックスすることは、責められるべきことだと思う。
でも、できちゃった命には罪がない。

日本人ならどうするか?
中絶を選ばないなら、どちらかの親が育てるということになるのでしょうか?
里親という発想は、なかなか生まれないでしょうね。

でも、この舞台はアメリカなので、都合良過ぎる話、というのには目をつぶって(映画なんだから)、里親がみつかりました。
ここからお話はスタートします。

ジュノの選択を支持するパハ。
ジュノが、あいかわらず嫌われるようなことばかり言っているのを、パパが大人の解説をして、話をまとめてくれます。
頼もしいパパ。

ヴァネッサは、高鳴る期待に冷静さを装うけど、自分にも赤ちゃんが持てるという喜びは抑えきれない。
一方マークは、天真爛漫なジュノと接しているうちに、眠っていた夢を思い出してしまう。
自分らしい音楽活動をしたいという夢ー。

夫婦の間に生じた温度差。
自分たちに授かった赤ちゃんなら、マークも父親になることを受け入れたかもしれない。
ちょっと無責任な感じだけど、二人は別居を決意する。

大人の諍いを目の当たりにしたジュノ。

「ぎゅっとしぼりだして、ヴァネッサにあげるよ。それで終わり」と、ドライに言い放っていたジュノだけど、赤ちゃんの誕生って、そんなんじゃない、もっと神聖で喜びに満ちたものだということが、きっとわかったと思う。

 急げー!!産まれちゃう!!
ポーリーと寄り添って「自分たちの赤ちゃんじゃないもの」と涙を流していたジュノが、失ったものと得たものの間で、どう生きていくか、大人たちははらはらどきどき見守るしかないなあ、と思いました。

不妊の妻を演じたジェニファー、いい演技でした。
赤ちゃんが持てるとわかって泣いたとき、私ももらい泣きしてしまったもの。
できるひとにはわからないけど、赤ちゃんができないって、本当に辛いと思うわ。
あんなふうに、ちょっとエキセントリックな感じでも、責められないと思いました。

アメリカでは、この映画の影響と言われている、高校生の集団妊娠が発覚。
これは、よくないわあ。

赤ちゃんは、みんなに幸せをもたらしてくれる天使です。
誰にでも産めるけど、本当に大切なのは育てていくこと。
それには、たくさんの愛情と、少しのお金が必要です。

ジュノの場合は、子供が赤ちゃんを産んでしまったところが大問題でした。

でも、さすが「サンキュースモーキング」の監督ジェイソン・ライトマン、誰に肩入れすることもなく、みんなを幸せに納めてしまいました。
うまい!!

この映画を見た若い人たちも、妊娠とか出産とか、よーく考えてほしいなあ。