核融合科学研究所(NIFS)は、今回、次世代の核融合実験装置に適用できる2万アンペア級の高温超伝導「STARS導体」を開発した。
STARS導体は、特に電流密度(電流値を導体の断面積で割った値)が高いことが特徴で、1平方mmあたり80アンペアを流すことを目標としており、同規模の低温超伝導導体に対して約2倍となる。
電流密度を高くできると核融合炉のマグネットを細くでき、プラズマの周りを取り囲む機器の設置に余裕ができる。STARS導体ではREBCO系線材を15枚積層し、安定化銅ジャケットに収め、外側のステンレスジャケットで強度を確保した。
全長6メートルの導体を構成し、直径60 cmで3回ほど巻いたコイル形状試験体を製作したところ、温度マイナス253度、磁場強度8テスラにおいて1万8千アンペアの定格電流まで安定に通電できることを確認した。
これは、目標とした1平方mmあたり80アンペアの電流密度を達成したことになる。また、電流の上げ下げで毎秒1千アンペアという高速通電を行い、これを合計で2百回以上繰り返しても安定に通電されていることが確かめられた。
一方、大型コイルを巻くためには複数の導体(1本の長さは十m~数百m)を接続することによって延ばしていく必要がある。STARS導体では東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻の伊藤悟准教授らが開発してきた「機械的ラップ接合法」を採用しており、導体内部の高温超伝導テープ線材同士を低抵抗で接続することが可能。
今回の2万アンペア級導体の試験体でも、この接続方法を応用した電流導入部を製作したことが良好な結果を得ることに役立った。
核融合科学研究所(NIFS)は、世界に先駆けて2005年から核融合炉の大型マグネットに適用できる高温超伝導大電流導体の開発に着手した。
これには日本を中心に開発された高温超伝導線材であるREBCO(レブコ)系線材を当初から用いている。REBCO系線材はテープ形状をしており、幅4 mm~12 mm、厚さ0.1 mmというもの。
NIFSで開発を進めてきたSTARS導体は、逆転の発想でテープ線材を単純に積層するだけとしており、これにより機械的に強い構造が採用できている。
これは、低温超伝導導体と同様に偏流が生じ大きな電流を担った線材が臨界を超えても、過剰な電流を他の線材に受け渡すのに余裕があり、結果として導体全体の温度を上げないよう保つことができる。
実際に導体を試作したところ、2014年に10万アンペア(現在でも高温超伝導導体の電流世界記録)を達成し、原理検証ができたが、実用化できる本格導体として仕上げるのに更に8年を要した。
核融合炉に適用できる高温超伝導大電流導体については世界でも開発が行われている。多くの研究機関や民間スタートアップ企業でいろいろな種類の導体とコイルが開発されているが、いずれも完全な完成には至っておらず、世界における競争は激しさを増している。<核融合科学研究所(NIFS)>
STARS導体は、特に電流密度(電流値を導体の断面積で割った値)が高いことが特徴で、1平方mmあたり80アンペアを流すことを目標としており、同規模の低温超伝導導体に対して約2倍となる。
電流密度を高くできると核融合炉のマグネットを細くでき、プラズマの周りを取り囲む機器の設置に余裕ができる。STARS導体ではREBCO系線材を15枚積層し、安定化銅ジャケットに収め、外側のステンレスジャケットで強度を確保した。
全長6メートルの導体を構成し、直径60 cmで3回ほど巻いたコイル形状試験体を製作したところ、温度マイナス253度、磁場強度8テスラにおいて1万8千アンペアの定格電流まで安定に通電できることを確認した。
これは、目標とした1平方mmあたり80アンペアの電流密度を達成したことになる。また、電流の上げ下げで毎秒1千アンペアという高速通電を行い、これを合計で2百回以上繰り返しても安定に通電されていることが確かめられた。
一方、大型コイルを巻くためには複数の導体(1本の長さは十m~数百m)を接続することによって延ばしていく必要がある。STARS導体では東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻の伊藤悟准教授らが開発してきた「機械的ラップ接合法」を採用しており、導体内部の高温超伝導テープ線材同士を低抵抗で接続することが可能。
今回の2万アンペア級導体の試験体でも、この接続方法を応用した電流導入部を製作したことが良好な結果を得ることに役立った。
核融合科学研究所(NIFS)は、世界に先駆けて2005年から核融合炉の大型マグネットに適用できる高温超伝導大電流導体の開発に着手した。
これには日本を中心に開発された高温超伝導線材であるREBCO(レブコ)系線材を当初から用いている。REBCO系線材はテープ形状をしており、幅4 mm~12 mm、厚さ0.1 mmというもの。
NIFSで開発を進めてきたSTARS導体は、逆転の発想でテープ線材を単純に積層するだけとしており、これにより機械的に強い構造が採用できている。
これは、低温超伝導導体と同様に偏流が生じ大きな電流を担った線材が臨界を超えても、過剰な電流を他の線材に受け渡すのに余裕があり、結果として導体全体の温度を上げないよう保つことができる。
実際に導体を試作したところ、2014年に10万アンペア(現在でも高温超伝導導体の電流世界記録)を達成し、原理検証ができたが、実用化できる本格導体として仕上げるのに更に8年を要した。
核融合炉に適用できる高温超伝導大電流導体については世界でも開発が行われている。多くの研究機関や民間スタートアップ企業でいろいろな種類の導体とコイルが開発されているが、いずれも完全な完成には至っておらず、世界における競争は激しさを増している。<核融合科学研究所(NIFS)>