理化学研究所(理研)光量子工学研究センター先端レーザー加工研究チームの杉岡幸次チームリーダーらの研究チームは、異なるフェムト秒レーザー加工技術を融合することにより、ごく微量の有害物質をリアルタイムで検出できる「3次元マイクロ流体表面増強ラマン散乱(SERS)センサー」を開発した。
同研究成果は、大気、水、土壌、食品などに含まれるごく微量の有害物質を、その場でリアルタイムに検出する技術への応用が期待できる。
今回、同研究チームは、3次元ガラスマイクロ流体チップ内に、SERSセンサーを集積することを提案した。まず、3次元マイクロ流体構造をガラスマイクロチップ内に構築し、さらに流体構造内部の所望の位置に、金属薄膜を選択的に堆積した。そして堆積した金属薄膜に、金属のナノドット周期構造を形成した。
これら一連のプロセスは、1台のフェムト秒レーザーで行うことができます(全フェムト秒レーザー加工)。形成したナノドット周期構造がSERSセンサーとして機能し、ガラス基板上でのラマン散乱と比較して7.3×108倍のラマン散乱強度の増強が得られた。
その結果、10ppb(1ppbは10億分の1)の検出感度で、異なる濃度のカドミウムイオン(Cd2+)をリアルタイムで検出できた。
マイクロ流体SERSセンサーを用いれば、大気、土壌、水、食品などに含まれたごく微量の有害物質を、高速・超高感度にリアルタイムで検出するできる。また、常温での保存や、持ち運びのうえ現場での利用も可能であり、長期間にわたって繰り返し使用することもできる。
また、ごく微量な有害物質の検出だけでなく、病気の早期発見・診断等医療用チップとしての利用も考えられ、安全、安心、健康な社会の実現に貢献すると期待できる。