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●科学技術ニュース●大阪公立大学、新型コロナウイルス由来のスパイクタンパク質を低出力レーザー光濃縮で迅速かつ高感度に検出

2024-07-10 09:54:12 |    生物・医学
 大阪公立大学 研究推進機構 協創研究センター LAC-SYS研究所の飯田 琢也所長、床波 志保副所長、理学研究科の叶田 雅俊大学院生(博士後期課程2年)らの研究チームは、抗原抗体反応を検出原理とする検査手法であるイムノアッセイに、光濃縮技術を取り入れた「光誘導イムノアッセイ技術」を新たに開発した。

 同研究チームは、500nmという極小のお椀構造(ボウル状構造)を持つ光濃縮基板(ナノボウル基板)を作製。それを用いることで、抗体をわずか1分でコーティング(固相化)し、レーザーポインターと同程度の微弱レーザー照射により超高効率な光濃縮を行い、タンパク質の迅速・高感度検出を実現した。

 適用例として、人工唾液中の擬似ウイルス(新型コロナウイルスのスパイクタンパク質で修飾されたナノ粒子)を約5分で選択的に検出できること、また、2回目のレーザー照射無しの場合に比べて10~20倍高感度な計測ができることを実証した。

 同研究成果により、煩雑な抗体コーティングのプロセスを短縮し、迅速かつ高感度なタンパク質検出を可能にした。

 これにより、さまざまな感染症、がん、認知症などの早期診断に貢献することが期待される。

 同研究において、コインサイズのナノボウル基板を用い、光濃縮により観察部位に抗体修飾ナノ粒子を集積させ、人工唾液中でも新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を表面に有する擬似ウイルスを高感度かつ短時間で選択的に検出できる可能性を明らかにした。

 この発見は、新型コロナウイルスだけでなく、さまざまな感染症や、がん、認知症の早期診断につながるマーカータンパク質の簡便かつハイスループットな検査に新しい選択肢を提供するもの。

 現在、ナノボウル基板を実装可能な汎用型の光濃縮システムなどソフト・ハード双方の研究開発を進めており、医療機関での実証を経て社会実装を目指している。

 また、コンパクトなシステムで迅速かつ低出力のレーザーを用い、さまざまな疾病の関連物質を高感度に計測できるため、医療分野にブレークスルーをもたらすだけでなく、食品中のウイルスや、河川や海洋中の有害ナノ物質の検出など環境計測への水平展開も期待できる。

 このように、幅広い分野で人類の安全・安心やSDGsの多くの課題への貢献を目指して発展研究を推進していく。<科学技術振興機構(JST)>
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