科学技術振興機構(JST)は、ダイバーシティを推進する取り組みの1つとして、女性研究者の活躍を推進している。日本では研究者に占める女性の割合がいまだに低く、研究開発プログラムなどへの女性研究者の参画も少ない状況にある。そこで、持続的な社会と未来に貢献する優れた研究などを行っている女性研究者、および女性研究者の活躍を推進している機関を表彰する制度を創設した。芦田基金(1994年に、デザイナーの故芦田 淳氏が、青少年教育を目的として設立した基金)より、副賞100万円が提供される。
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<輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)>
戎家 美紀 欧州分子生物学研究所(EMBL)バルセロナ グループリーダー 構成的発生生物学
戎家氏は、自発的な細胞分化やパターン形成を人工的に「作る」研究に取り組み、合成生物学の分野において成果をあげてきた。また近年は、生物学の本質的な問題である「生物種により時間スケールが異なるしくみ」の解明に取り組み、世界の注目を集めている。研究以外の社会貢献においても、ヨーロッパと日本の研究者の交流促進を図る活動など、海外に拠点を構える日本人研究者として関係分野、環境整備へ貢献している。
<輝く女性研究者活躍推進賞(ジュン アシダ賞)>
国立大学法人 九州大学(総長 久保 千春)
九州大学は、2009年に他大学に先駆けて「女性枠設定による教員採用・養成システム」を立ち上げ、女性研究者を国際公募により広く募り、透明性の高い二段階審査により優秀な女性人材を発掘、育成するという「九大方式」を構築するほか、2017年には配偶者帯同雇用制度を創設した。また、女性枠教員の論文業績分析により、女性限定公募制度の効果を定量的に検証し、可視化した。この結果、同制度の意義を実証し、女性研究者の研究力に関する無意識のバイアスを是正するとともに、国際会議での発信などにより他機関への連携、展開にも取り組んでおり、国内外で注目されている。
<輝く女性研究者賞(科学技術振興機構理事長賞)>
深澤 愛子 国立大学法人 京都大学 高等研究院 物質-細胞統合システム拠点 教授 有機典型元素化学、有機材料化学
深澤氏は、高強度な光照射下でも退色しない超耐光性蛍光色素の市販化や、大気下でも安定な塗布型有機半導体への応用展開など、機能性有機材料の創製において突出した研究実績および成果の社会への還元実績を有している。また、研究以外の社会貢献においても、各種メディアを通して社会への情報発信に継続的に取り組むなど、化学の分野で男女問わず若手研究者から目標とされるべき活動を実施している。