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●科学技術ニュース●岡山大学など、結晶中のトリウム229原子核アイソマーをX線で制御に成功し超高精度「固体原子核時計」実現に向けて大きく前進

2024-08-02 09:31:40 |    物理
 岡山大学異分野基礎科学研究所の吉村浩司教授、吉見彰洋准教授、平木貴宏研究助教、高輝度光科学研究センター(JASRI)の依田芳卓主幹研究員、永澤延元研究員、京都大学複合原子力科学研究所の瀬戸誠教授、北尾真司准教授、理化学研究所の山口敦史専任研究員、重河優大特別研究員、羽場宏光室長、玉作賢治チームリーダー、大阪大学大学院理学研究科の笠松良崇教授、産業技術総合研究所(産総研)の渡部司上級主任研究員、ウィーン工科大学のThorsten Schumm教授らの共同研究グループは、大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す理化学研究所の施設)の高輝度X線を用いて、固体結晶中のトリウム229をアイソマー状態に励起し、それが基底状態に戻る際の光を観測することに成功した。

 この際、アイソマー状態のほぼすべてが光を発して遷移することを確認し、その寿命とエネルギーを測定した。

 さらに、X線照射によってアイソマー状態の寿命を10分の1程度に短くできることを発見した。

 これは、固体結晶中のアイソマー状態を外部から制御できることを示すもの。

 これらの成果により固体原子核時計の実現に向けて大きく前進が期待される。

 同研究の意義のひとつは、固体結晶中に埋めこんだトリウム229をX線によって励起することに成功し、その脱励起光を観測した点にある。

 固体結晶中に埋めこむと、光を出さずに電子を放出する遷移(内部転換過程)で脱励起する可能性もあったが、今回の観測により、ほぼすべてのアイソマー状態が光遷移で基底状態に戻ることが示された。

 またX線照射によりアイソマー状態の寿命が制御可能なことが分かった。

 これらは固体原子核時計の実現に必要な情報であり、その実現に大きく前進したということができる。

 今後、この手法を進化させて、さらにその詳細を明らかにして、高精度のレーザー(開発中)と組み合わせることで、原子核時計を実現していくことを目標にしている。<産業技術総合研究所(AIST)>
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