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●科学技術ニュース●理化学研究所、東京大学と愛知学院大学、超特異的な遺伝子ノックダウン法を開発し特異性が高く副作用の低い治療へ道

2024-04-18 09:31:33 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)開拓研究本部 岩崎RNAシステム生化学研究室の岩崎 信太郎 主任研究員、アントニオス・アポストロプロス 国際プログラム・アソシエイト(研究当時、現研究生、東京大学 生産技術研究所 特任研究員)、河本 尚大 学振特別研究員PD、七野 悠一 研究員、東京大学 生産技術研究所の池内 与志穂 准教授、周 小余 特任助教、愛知学院大学 薬学部の築地 仁美 教授らの共同研究グループは、目的の遺伝子の翻訳を極めて特異的に抑制する新手法CRISPRδ(クリスパー・デルタ)を開発した。

 同研究成果は、遺伝子の機能を理解するという基礎生物学の発展に貢献するだけでなく、原因遺伝子の機能抑制を通じた疾患治療など、さまざまな応用につながることが期待される。

 遺伝子の機能を理解するためには、何らかの手法でその遺伝子の発現量を抑制し、抑制による影響を調べる必要がありる。しかし、既存の手法では目的の遺伝子以外も抑制してしまうことがあり、問題となっていた。

 同共同研究グループは、dCas13というタンパク質を標的メッセンジャーRNA(mRNA)に結合させ、その翻訳を非常に特異的に抑制する新手法CRISPRδを開発した。

 CRISPRδは、ゲノムに通常存在する内在性の遺伝子だけでなく、ウイルス特異的な翻訳様式や神経変性疾患の原因となり得る特殊な翻訳様式も抑制できることが分かった。

 同研究は、翻訳を対象とした新しい遺伝子ノックダウン手法CRISPRδを開発し、非常に高い特異性で翻訳抑制できることを明らかにした。

 遺伝子ノックダウン技術は、遺伝子機能の理解に基づく基礎生物学の発展と、バイオテクノロジーや疾患治療などの応用的な側面にも貢献してきた。実際にRNA干渉を用いた医薬品もすでに実用化されている。

 今回、CRIPSRδはウイルスや神経変性疾患と関連する特殊な翻訳様式も抑制できることが分かりった。

 よって、ウイルス感染や神経変性疾患に対して、より特異性が高く副作用の低い治療を提供できる可能性も期待される。<理化学研究所(理研)>
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