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●科学技術ニュース●KEKなど、”2024年は「ミュオン加速元年」” 正ミュオンを光速の約4%まで加速する実証に成功しミュオン加速器実現へ

2024-06-25 09:50:10 |    物理
 高エネルギー加速器機構(KEK)、岡山大学、名古屋大学、九州大学、茨城大学、日本原子力研究開発機構、新潟大学の共同研究グループは、J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)のミュオン実験施設において、ミュオンの冷却技術、高周波加速技術を組み合わせることで、正ミュオンを光速の約4%まで加速する技術の実証に成功した。これは、世界初の成果となるもの。

 ミュオンの寿命は、2マイクロ秒(100万分の2秒)ほどしかなく、素早く加速しないと崩壊してしまう。

 また、電子より200倍重いので段階的に加速する必要もあるが、技術開発を進め、最終的には光速の94%まで加速する予定。

 ミュオンの加速技術にめどがついたことで、世界で初めての「ミュオン加速器」の実現が視野に入り、2024年は「ミュオン加速元年」とでも呼ぶべき年になった。

 今後、加速されたミュオンを使ったさまざまな研究が進むことが期待される。

 素粒子ミュオンを加速器で加速できると、素粒子物理学や物質生命科学、地球科学など、さまざまな分野での活用が期待される。ミュオンは、ミュオン g-2/EDM 実験と呼ばれる素粒子標準理論のほころびの超精密検証実験などに有用だが、加速は技術的に難しく、成功例はなかった。

 加速器を用いて人工的につくったミュオンは、向きや速さのばらつきが大きく、上記のような実験に適しない。しかしプラスの電荷を持つミュオン(ミュオンの反粒子の正ミュオン)なら、ほぼ止まるまでいったん減速して向きや速さをそろえる(冷却する)ことができる。今回、正ミュオンを改めて光速の約4%まで加速することに世界で初めて成功した。

 同研究グループでは、これまで冷却・加速技術の開発を続けてきており、今回初めて、素粒子ミュオンそのものの冷却・加速ができることを示した。標準理論の超精密検証実験を始めるための大きな一歩となる。加速ミュオンを用いた全く新しいイメージングによって、ミュオン顕微鏡、文理融合研究などさまざまな応用も検討されている。<高エネルギー加速器機構(KEK)>
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