着物好きの妹は、福岡から和服で来る。着物の真の価値は目に見えない裏地によって決まると言う。着心地と使いやすさは表に現れてくる。表地に一番合う裏地を探し出すのは試行錯誤の連続だと言う。ふとそんなことを話す妹に、長い間の姉妹の違う暮らしを思う。
人間は良い意味でも悪い意味でも、表と裏の顔がある。ただ物ではない気配が表に出る人は力が入っている人であろう。人の見ていないところで善行をすることを「陰徳を積む」と言う、私もそんな人になりたかつた。ただ働いて年を取ってしまったようだ。
宮崎県延岡市 逢坂鶴子(95) 2022.4.12 毎日新聞鹿児島版掲載