はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

孝と不幸と

2017-10-10 22:17:34 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 9日 (月)

岩国市  会 員   吉岡 賢一

  その朝は、ちゃぶ台に卵が1個置かれていた。「これを飲んで滋養を付けて徒競走を頑張って」という家族の願いが込められた生卵である。台所では仕事を休んだ母が、運動会の弁当を手際よくこしらえている。
 「ヨーシ、今年こそはいいとこ見せよう」と気張ってはみるが、生来の鈍足。生卵のかいもなく孝行できないままに終わった。
 夢に描いた都会生活も俊足の兄に先を越された。夢を封印し同居を選んだ。父も母もこの手でお浄土へ送り届けお墓も仏壇も守っている。少しの孝と遠い昔の不幸が思い出される秋半ば。金木犀の香りが心潤す。
   (2017.10.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

メモで知識を充実化

2017-10-10 22:15:11 | 岩国エッセイサロンより
2017年10月 9日 (月)
     岩国市   会 員   片山清勝

 ある会の会報編集を年6回している。孫新聞は作り始めて17年だが、その作り方はいわゆる我流で通している。
  「伝わる文章力 広報紙の作り方のこつ」という興味を持たせる講座が公民館で開かれ、参加した。 広報に必要な文章の書き方、分かりやすいレイアウトなどの講義があった。
 文章は「分かりやすく、読者の気持ちを思って書くこと。もちろんミスは撲滅する」など、事例を交えての解説に納得した。
  「メモは言葉の引き出しを増やす」という言葉が心に残った。「これは」と気付けばメモする。書けないときはデジカメに撮っている。しかし、それはちょっとした覚書で、その存在を気にすることはなかった。
 今回の講座のレジュメにいくつか短いメモを残している。それがなければ、ポイントは思い出しづらいと気付いた。
 メモは知識の引き出しを充実させる。粗末にしてはつかんだものを逃してしまう。さて、次回からどう生かすか思案している。

     (2017.10.09 中国新聞「広場」掲載)