はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

なっちゃんへ

2014-12-04 21:51:13 | 岩国エッセイサロンより
2014年12月 3日 (水)


岩国市  会 員   貝 良枝

昨年、父さんが死の淵をさまよっていた時、仕事を辞めて帰る決心をしてくれてありがとう。母さんは心強かったよ。

あれから父さんは、奇跡の回復をし、車イスにも乗れるようになりました。父さんは、私ではなく貴女に車イスに乗せてもらい、院内を散歩するのを、とても楽しみにしていました。治療で薄くなった髪を散髪したり、気に入るおやつを買ってきてあげたり、よく世話をしてくれましたね。

62歳で逝ってしまった父さんの無念さを思うと涙が出ますが、貴方と過ごしたあの時があるから救われる気がします。父さんに幸せな時間をありがとう。そして、母さんにも幸せな時間をありがとう。それは、夕食を作って貴方の帰りを待つ時間。寂しさが薄れます。

貴方が、素敵な人と結婚するまでのひとときでしょうが、仲良く暮らしましょうね。その頃までには、母さんもひとりで涙が拭けるようになっているでしょうから。

(2014.12.07 猪苗代町絆づくり実行委員会「母から子への手紙」入選)岩国エッセイサロンより転載