はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

Merry Christmas

2010-12-20 23:13:33 | アカショウビンのつぶやき

 町中ではクリスマスイブもまだ先なのですが、キリスト教会では、12月25日の直前の日曜日を、クリスマス礼拝として守る所が多いようです。
鹿屋キリスト教会も、19日にクリスマス礼拝を致しました。
この日は遠方から久しぶりに来られる方々もあり、ともに神の御子イエス様のお誕生を祝います。
今年のクリスマスメッセージは「驚きと喜びのクリスマス」。
「何かを頂くクリスマスでなく、与えるクリスマスにしましょう」とお話くださいました。



そして、特別賛美は、例年通り信愛コーラスの「グロリア」の合唱でした。
毎年歌っている、モーツアルトのグロリアですが、今年はもっと表情をはっきり出しましょう…と指導を頂きました。
楽譜にはメガネマークを一杯書き込みましたが…果たして本番はどうだったでしょう。
久しぶりにI市から来られたYさんは、ハーモニカで賛美歌を演奏り、それは素晴らしい演奏でした。


風が吹けば

2010-12-20 16:26:13 | ペン&ぺん
 俗に、歴史上の経済学者が10人集まると、景気対策が11案、提示されるという。「なぜなら、ケインズが最低2案以上、語り始めるから」というのが、このシャレのオチだ。
 確かに。税金で失業者を雇い、穴を掘り、出来た穴を埋め戻せ。それで給料を払え。もらった給料で、みんなモノを買うだろ。モノを売り買いすれば世の中のカネ回りが良くなるはず。なんてことは、才気煥発(さいきかんぱつ)の人にしか思いつかない。風が吹けば桶屋(おけや)がもうかる式の考え方だ。
 さて、菅直人政権の対策は、法人税率の引き下げ。会社が払う税金を負けてあげる。会社は浮いたカネで新しい機材を買ったり、何か新しい事業を始めたり。さすれば、世のカネ回りが良くなるって寸法だ。
 ──でも、そんなに上手に転がるの? 浮いたカネは借金の返済に回って終わるんじゃない? テレビのニュースで町工場のおやじさんが言っていた。「ここんとこ、稼ぎが悪くて、税金なんか納めてねぇーよ。税率が上がろうが、下がろうが関係ねぇーな」
今年をあらわす創作四字熟語。その秀作に、就職活動(かつどう)ならぬ就職渇望(かつぼう)というのがあった。会社に余力があっても、社員の採用人数は増えやしない。
 鹿児島の地場企業の人事部長と話す機会があった。「来年、何人ぐらい新卒を採る?」という問いに、彼は答えた。「正社員は採らない。今は契約社員とか、派遣とか、パートとか、使い勝手の良い方法が、あるんですよ」。ケインズもビックリ。かくして、若者は、職を探し、イチョウの濡(ぬ)れ落ち葉が敷き詰められた街角を、さまよい続けることになる。 
 政権のクリスマスプレゼントの贈り先は、会社だ。だから直接、個々人には届かぬらしい。私たちのフトコロ具合が寒いのは、ただ師走の北風のせいだけではない。
 鹿児島支局長 馬原浩 2010/12/20 毎日新聞掲載

鶴見吟行

2010-12-20 14:31:10 | はがき随筆
 11月30日のこと。鶴見吟行に行った。参加した会員は15人。1万羽を超える鶴が飛来していた。稲刈りの済んだ田園に鶴が羽を休め、飛び、優雅な姿で迎えてくれた。民宿から見る風情も、何百羽という鶴が一斉に飛び立つ姿も素晴らしかった。昼食の前、監視員Aさんの話を聞く。「ケガの鶴を保護している檻の上空を真っ先に飛んできた鶴が旋回しながら、鳴いている。パートナーを置いて帰った鶴。久しぶりの再会に喜んでいる様子」と。どんなに会いたかったことか! 夫婦愛、親子の愛など、胸が熱くなった。
【燦々と小春の空や夫婦鶴】
  出水市 橋口礼子 2010/12/20 毎日新聞鹿児島版掲載

傘寿への2年日記

2010-12-20 14:21:32 | はがき随筆
 生来は3日坊主なのに、不思議に日記だけは今日まで16年間継続し、新聞切り抜きも伴走している。
 記憶力が悪いので日記で残したい。希望が小さい自分史になり、今では自然体で生活習慣になり楽しい。
 最近は夫婦で“記憶再生帳”と名付けて苦笑しながら利用している。
 次の2年日記は楽ではない傘寿の坂道をゆっくりと楽しい日記を意識して、目標、やりたい事、今日の出来事の感想、今の感謝など含蓄ある「18年継続」達成の希望にしたいと思う。このから先は天命になる。
  鹿屋市 小幡晋一郎 2010/12/19 毎日新聞鹿児島版掲載

時は流れて

2010-12-20 14:05:50 | はがき随筆
 文箱の中には、かつて賞に輝いた自分の姿があった。今の自分とは別世界のことに思える。40年間の教職時代は音楽と書道を楽しみ、健康で走り回った。夫の強い希望で、生地へ62歳で移り住んだ。約束通り好きなように各地への旅行も、研修へも2人で参加して幸せな日々だった。
 まさか自分の心臓が停止、入院2回で退院して帰宅した夜に夫は急逝。雨の車椅子の葬儀の日、好きだった美しく香り高いロウ梅が咲いていた。
 指が動かず、つたない文字の写経だが、夫をしのび、3年前を想起する。
  いちき串木野市 上野昭子 2010/12/18 毎日新聞鹿児島版掲載

冬の花

2010-12-20 13:59:19 | はがき随筆
 新入学の緊張も解けて、大学生活に慣れ始めた5月、母から小包が届いた。中にはレンガ大の黒い携帯ラジオと手紙があった。居合わせた級友たちに「母の日のプレゼントだ」と言うと「逆やっがね!」と皆笑った。
 久しぶりに見る母の字。「この6年間、家事をありがとう。母親らしいことを何もしてやれずごめんね。何とか起き上がれるようになりました。安心して学業に励んで下さい。母より」
 うっと混み上げてくるものに耐え続けていたあの日──。
 母が好きだった冬の花が開き出した。寝たきりだった母の胸中を思うのだ。
  出水市 中島征士 2010/12/17 毎日新聞鹿児島版掲載

舟こぎ

2010-12-20 13:54:35 | はがき随筆
 どうやら道に迷ったらしい。
 「ここはどこ?」と尋ねたいのだが、声が出ない。誰もいない。
 頭はボーッとして体はユラユラと漂っている。何かしようと試してみるのだが、どこも動かない。ラベンダーの香りに包まれてうっとり……。
 「生きちょっか?」。そういう夫の大声が耳に入り、ハッとし我にかえった。この頃、入浴しながらコックリコックリ舟をこぐ。
 この世に未練などなく視力も弱い呆け婆ちゃんだが、行く先も間違えぬように、うまく舟をこいで生還する。
  馬渡浩子 2010/12/15 毎日新聞鹿児島版掲載

新しい古里

2010-12-20 13:18:36 | はがき随筆
 日曜の午後、私は団地の小さな公園を歩いていた。砂場やブランコのある傍らに野菊が小さく首を振っていた。広場では小学生を連れた4人の家族が楽しくボールを蹴っていた。
 「懐かしい、この公園。オレ、よくここで遊んだんだぞ」
 そんな声が聞こえて来た。振り向くと、なんと、それはボールを蹴った40歳ぐらいの父親の声だった。私は、その声を聞き、なぜか、自分の心の隙間を射抜かれた感じがした。そうだ、ここはこの人にとって故郷なのだ。しかし、団地が古里だなんて。
 私は今の今までそんなこと、考えてもいなかった。
  鹿児島市 高野幸祐 2010/12/14 毎日新聞鹿児島版掲載