のろのろ台風の北上で蒸し暑い日の午後、洗濯物を取り入れに庭に下りた。と、目に入ったのは鉄棒くらいはあろうか、どす黒いものが鉢の横にスルスルと消えていく。蛇! 悲鳴に驚き飛び出してきた夫は半信半疑。あっという間に影も形もない。まるでマジックのよう。まだ近くにいるようで胸が苦しく、夜になると生々しく再生され眠れない。お店に並ぶ旬のサンマにギョッと目を背ける。色、形がそっくりなのだ。食べる気はもちろん買う気にもなれない。インプットされた一瞬のショックが消え、おいしいサンマが食卓に並ぶのはいつのことやら。
薩摩川内市 田中由利子(67) 2008/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載
写真は桜香さん
脂がのって今が一番おいしいのに…。
残念ですね。