はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

欣喜雀躍

2019-10-03 17:02:52 | はがき随筆
 すごい! すごいなぁ……。なんてすごい飛び方ができるんだ雀って。大きくカープを描き、降りるというより落ちる。びたっと着地。錐もみ降下もする。茂った木枝を巧みにかわし、右、左。その様は欣喜雀躍、小躍り遊ぶよう、この単語が妙に納得できる姿。
 昔は稲穂に群れなす雀を追い、爆竹やら、案山子やら、きらきらのロープ? やら、さまざまな仕掛けを見かけたが、今はそんな景色もない。人に最も親しいが貴重とも思われない雀たち。我が家の木々につく虫でもたっぷり食って、命を養ってくれ。薬剤散布なんかしないよ。
 熊本県阿蘇市 北窓和代(64) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

風のメール

2019-10-03 16:55:05 | はがき随筆
 被災地・大槌に「風の電話」と呼ばれる電話があるという。亡くなった愛しい人へつながる電話。線のつながっていない電話だが、こころを澄ませば聞こえてくるのだろう。
 散歩の道の上、色づいた木の葉がクモの糸につられ、くるくると回っていた。天空からの言の葉。私は立ち止まり、じっと見上げた。
 亡くなって1年、2年、3年……懐かしい人からポツリと届く「風の便り」そんなメールがあってもいいと思う。
 「⏤⏤元気ね?」たったひとことのメールでも、母からなら、私は永久保存するだろう。
 宮崎市 柏木正樹(70) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

プロの仕事に感謝

2019-10-03 16:47:28 | はがき随筆
 夕方、テレビのBSのスイッチを押すと画面にE202のエラーメッセージが出た。テレビとビデオの接続具合を調べてみたが異常はない。大リーグ中継もビデオ予約していたドラマも諦めるしかない。自分でもびっくりするほど落ち込んでしまった。
 前日、大雨が降ったし、強風も吹いていた、アンテナの故障だろうか。翌日駆け付けた電気屋さんは、アンテナに接続されたケーブル端子の不具合を見つけ、手際よく修理を済ませた。早速、BSテレビを見た。
 いつもと変わりない日常が帰ってきた。うれしかった、元気が出た。プロの仕事に感謝。
 熊本県菊陽町 有村貴代子(72) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

「これから…」

2019-10-03 16:38:17 | はがき随筆
 元宇宙飛行士の若田光一さんが、父親の故郷曽於市で公演されている様子をテレビで見た。とっさに、日本人初の宇宙飛行士、秋山豊寛さんのひと言を思い出した。
 昔、鹿児島市で講演があり、娘が小学生代表で質問の機会をいただいた。「宇宙に行って人生観が変わりましたか?」の質問に、ドキッとしたオーバーなリアクションで「これからでしょうね」と答えてくださった。TBSを早期退職。福島で有機野菜作りに従事。原発事故で避難生活。現在77歳で、三重県で有機野菜作りとか。きっと人生観が変わられたのだろう。
 鹿児島県垂水市 竹之内政子(69) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

二つの花

2019-10-03 16:09:36 | はがき随筆
 我が家の外玄関に、小さな花壇がある。春に植えた日々草が這うようにして花壇いっぱいに咲いている。その中に、ひとり生えした3本のケイトウがスクッと立場違いとも知らず元気いっぱいだ。高い背丈、赤く太い茎、大きな葉、その葉脈までも赤く存在感がすごい。見るたびに、日々草のかれんさとたくましいケイトウのアンバランスについ笑顔になる。
 最近では、そのケイトウが小さな日々草を守る「ナイト」に思えてきて頼もしくなった。このまま二つの花が仲良く長く咲いていてほしい。初秋の日、ほっと一息つける花たちである。
 宮崎県延岡市 橋本京子(75) 2019/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載