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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

猫様イークン君臨

2016-12-10 12:14:46 | はがき随筆






 猫様イークンが満5歳を迎えた。人間に換算すると40歳に相当するそうだ。年を重ねるごとに態度が大きくなっている。
 食事の催促も「オレ様は腹がすいているのだ」と言っているかのように低い声で「ニャーオン」と私の顔を見上げる。
 「ハイ、ハイただいま」食事係の私は直ちに食器に入れて差し上げる。さらにケズリブシの味を覚えたイークンは、食事を中断して、何か言いたげに、今度はカミさんを見上げる。
 「そう、ケズリブシも欲しいの、分かりました」。カミさんも言いなりだ。かくしてイークンは王様として君臨している。
  西之表市 武田静瞭 2016/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載

子に教えられる

2016-12-10 12:08:47 | はがき随筆
 娘が食事に誘ってくれた。「何か食べたいものある?」「そーねー」……。
 カウンターで揚げ立ての天ぷらを勧めてくれた。
 「油っぽくない?」と余計な一言。「もっとモチベーションを上げてよ」と娘は不満そう。子に教えられることでした。「ごめんごめん揚げ立ておいしそうね」と盛り上げる。一人暮らしの自由さは、ついわがままが飛び出し反省する。そして娘はとびきり上等の天ぷらをごちそうしてくれた。
 「老いては子に従え」。もっと素直な気持ちを持たねばと教えられる。
 鹿児島市 竹之内美知子 2016/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

母娘の涙

2016-12-10 12:01:16 | 女の気持ち/男の気持ち
 娘の家族に会いたい一心で、この夏、モロッコに一人で出かけた。2年ぶりに会った孫娘、ナディアが「バーバ、ママは年2回は泣くよ」と言った。
娘が小学5年の時に夫が急死。公舎を引き揚げ、転校した先で、仲間はずれにされていると知った時のことを思い出した。悲しみと怒りで母娘抱き合って泣いた。彼女の背をなでながら何としても強い子に育てよう、もう泣くまいと決めた。
 大学在学中のニュージーランドでのワーキングホリデー。長男が働いていたタイへの1人旅。大学卒業後は中国の大学へ留学。そこでモロッコの青年と知り合い結婚、と一人立ちの準備は万全だと思っていた。
 「なぜ泣くの?」「だって、お母さんがそばにいないんだもの」「そうか……。私が来ればいいのね」「バーバ、来るの? バ゛ンザーイ」。パパの所へ走って行ったナディアが「パパもさんせいだって、よかったね」と大喜び。
 娘は私が母の老後ほ見たように、自分も私を見たいという。「ありがとう」。涙を封じて34年。再び涙があふれ出てきた。私は土倉を望んでいる。大地に横たわり、静かに目を閉じる。深紅のバラを供えられた墓の下で、ゆっくとりアフリカの土になっていく姿を想像している。
 鹿児島県阿久根市 別枝由井 2016/11/24 毎日新聞鹿児島版「女の気持」爛掲載

バジリンピック

2016-12-10 12:00:34 | はがき随筆
 秋、鹿児島市紫原校区高齢者クラブ、第32回運動の集い。
 寄りも寄ったり10ダースのバーとジー。6組に分かれて競う種目は「ゆっくりいそげ」「だいやめ」「スマートで行こう」など10種類。「どれに出ますか?」と聞かれて「全部出る」と答えた私は83歳。さすがにフラダンスは踊れなかった。
 この団地は古い団地で、小学校は創立52周年とあるので、開校当時の私はまだ高齢者ではなく、住宅ローンということばも知らず国金と言っていたはず。
 そうなると、当時の小学生は団塊の世代となるわけか。「くわばら、くわばら」
  鹿児島市 高野幸祐 2016/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載