はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ちまき

2013-06-03 21:22:09 | はがき随筆
 長年、ちまき作りに挑戦したいと思いつつ、なかなか始まらなかった。友人から圧力なべでも簡単に作れると聞き、いろりの木灰を夫に手配してもらい、竹の子の皮など材料を準備した。
 まずザルに布巾を厚めに敷き、沸騰したお湯を回しかけ、灰汁を取る。洗米したコメを茶色の灰汁に一昼夜漬け込み、洗った竹の子の皮に米を詰め、煮ること1時間。べっ甲色に染まり、トロットした口当たりに仕上がった。湯気の立つ出来立てを娘にその足で送った。姑がまだ元気な頃、教えを請うたが「忙しくなるから覚えんほうがよかど」と言われたのを思い出した。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

公費の使い方

2013-06-03 20:57:27 | ペン&ぺん

 県は利用者減が続く定期航空路、上海(中国)─鹿児島線の利用促進を図ろうと、県職員1000人を上海に派遣する経費1億1800万円を今年度一般会計補正予算案に計上した。3泊4日の日程で、50人のグループを20回に分け、上海のインフラ整備や教育、文化施設などを視察し、国際感覚を養ってもらうことなとが狙いという。食事代やパスポート申請費も、県が負担する。
 上海─鹿児島線の誕生の経緯や一度なくなった定期航空路の復活が厳しいこと、人的、物的交流や観光など経済面への影響─と理解できないわけではない。ただ、これらは公費。識者からも厳しい指摘があった。利用が少ない路線を公費で支援する必要があるのか。研修が終われば、再び利用者数は減るが、どうするのか。一時しのぎではないのか? このご時世に納税者(県民)の理解は得られるのかと。
 新聞の読者が減り、広告収入も今ひとつ。経費カットや人員削減にうめき、仕事をしている私にはうらやましい限り。民間なら「自分のお金でおやりなさい」で片付く。利用率が低いのは需要が少ないから。仮に、新聞の読者離れの理由が「読む魅力がないから」としても、誰も「言論機関を守れ」と言って、公費で支援などはしない。
 全国市民オンブズマン連絡会議の児嶋研二代表幹事は「1億円もあれば、どれだけ多くの県民にサービスができるだろう。極めて時代錯誤と言わざるを得ない」と厳しい。さて県議会はどんな議論をするのだろうか。地元紙も全国紙も大きく紙面を割き、上海研修を読者に伝えた。「え~、なぜ」「おかしい」と反発する県民も多いはず。民主党政権時、事業仕分けで税金、公金の使い方が注目されたが、納得できれば、誰も疑問など呈しない。経費の財源となる納税者の皆さんは、どう思いますか。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

約束を守った花

2013-06-03 20:16:48 | はがき随筆


 クジャクサボテンの花芽を見つけたのは、まだ寒い3月下旬だった。小豆ぐらいの花芽が幾つもついており、感動した。
 それは昨年の事。「来年も咲いてね」と約束したことを、花はしっかり守ってくれたのだと思った。それから毎朝、花芽の成長を確認し、4月中の低気温には花芽の落花を心配したが、順調に育った。
 5月は晴天続きで11個のつぼみは日増しに膨らみ、開花を待ち望んだ。そしてついに第1号があでやかな姿を披露してくれた。「やったー」と心の中で叫び、赤紫色の大輪に「ありがとう」と頬ずりした。
  鹿児島市 竹之内美知子 2013/6/2 毎日新聞鹿児島版掲載