はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

少年の親切

2011-06-16 17:29:06 | はがき随筆
 5月中旬のこと。小雨の降っている日でした。足の少し不自由な私は杖をついてスーパーに買い物に行った帰り。左手に杖をつき右手に大きな荷物を持ち外に出て見ると、小学3年生くらいの男の子が近づき「荷物を持ちましょうか」と言って荷物を取り、車まで運んでくれました。急いでいた時でもあり大助かりでした。この少年は私が頭を下げてお礼を言うと軽くおじぎをし、さわなかな笑顔を残し去って行きました。こうするのが当然というごく自然な態度をとても好ましく感じました。私は手を振って、少年の真心に答えつつ家路につきました。
  出水市 橋口礼子 2011/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載

ダイエット

2011-06-16 17:22:23 | はがき随筆
 介護生活も終わり、仕事をやめ時間が思うようにとれる時がきて、さあダイエットに挑戦。タンスに十何年眠っていた水着を出し試着。体型も変わり肉を寄せたり押し込んだり。息を止めチャックをあげる。やっとの思いで着た。鏡を見るとボンレスハム状態! 主人の前に立つ。わっぜか!アッダゴ(あくまき)んごたぁ。うまい表現!
 水泳教室に申し込む。入会金ゼロ、シニア割引あり。あげくには脂肪買い取り、マイナス1㌔に1000円分の商品券がいただけるとか。必ずゲットできると思い、レッスンに通う。まずは水着に体をあわせようと。
  阿久根市 的場豊子 2011/6/15 毎日新聞鹿児島版掲載

妻の反省

2011-06-16 17:16:29 | はがき随筆
 妻の作る料理は品数も豊富だし味付けも申し分ない。肉食獣と揶揄されるぼくのために肉料理は欠かさない。そして「これだけ残してもあれだから……」とダメを押されて食べ続けた結果、肥満の進行が止まらない。堅持してきた体重がこの半年で4㌔余り増加。「あれだから」があれ、あれ、あれになってしまった。
 ぼく自身、何とかせねばと思いながら食べた方も悪いが、妻にも責任はある。この状況をぼく以上に看過できないのが、歳の離れた妻で、菜食を宣言。痩せても枯れても2人が健康ならばと考えたのだろう。
  志布志市 若宮庸成 2011/6/14 毎日新聞鹿児島版掲載

念仏

2011-06-16 16:57:05 | はがき随筆


 小雨がそぼ降る早朝に、小指の咲きほどの柿の実が32個も落下した。次の日も数個ずつ落下した。落ちた柿の実を集めて、母は根元に埋めて念仏を唱えた。
 一昨年の柿の実も、昨年の柿の実も10個だった。今年は100余りの実がつき、庭先でハンヤ節を母は有頂天で踊った。それも束の間の落下である。
 柿の実はなり止まらないと慰めても、背を丸めてしょげ返っている。お茶を飲んでため息。テレビを見てため息の連続だ。今朝も落下した柿の実も埋めて念仏を唱える。まじめな母の嘆きに私は神に祈ろう。
  出水市 道田道範 2011/6/12 毎日新聞鹿児島版掲載

「新婦品質保証書 両親が願い込め」

2011-06-16 16:51:22 | 岩国エッセイサロンより
2011年6月13日 (月)
    山陽小野田市  会 員    河村 仁美  
 
 28年前に行われた私たち夫婦の結婚披露宴で、私の両親は、主人に「品質保証証明書」なるものを手渡した。私を新車に見立て、「素晴らしい車に恥じない運転をお願いします」との趣向だ。
 
 久々に2人で保証書を読み返してみると、「過酷な条件下でも利用できますが適度の休息と思いやりの補充により性能を一層引き出せます」「返品交換には応じかねますが責任をもって修理再教育することを保証します」とある。

 最近は休息しすぎの気もするが、名車だったのか運転が上手だったのか、これまでのところ故障も返品もない。
 
 ところでこの保証書、有効期限はいつまでなのだろう。廃車にして新車購入、ということにならぬよう、お互いに努力しましょうね。
  (2011.06.12 読売新聞「気流広場;特集『結婚』」掲載)岩國エッセイサロンより転載

友に聞く畑作りの心

2011-06-16 16:49:43 | 岩国エッセイサロンより
2011年6月16日 (木)
   岩国市   会 員   片山 清勝

 運動不足解消にと、少し速足で畑が続く川沿いの道を歩いていた。「よ―い」と声がして麦わら帽子をかぶった人が手招きしている。野菜作りが趣味の同級生だ。

 自慢の畑を説明してくれる。10 種類以上の野菜が色濃く育っている。 見慣れた野菜に交じって、初めて目にするものもある。それぞれの野菜作りで工夫したことや思い入れを開く。

 時にはせっかく育てているものを抜いたり、もぎ取ったりしながら、その育ち具合を具体的に話してくれる。

 そんな畑の隅に、苗を植えた小さなポットがたくさんある。収穫を終えた後の畑に植える苗を育てているという。畑は休む間がないのだと知る。

 その畑はよく肥えた黒い土で、押さえるとふわっとして作物に優しそうだ。土は生きていると感した。

 これまで、この畑で育った野菜を何度も届けてもらっているが、畑を見るのは初めてだ。ひと回りしたところで、みずみずしい葉物などを2袋に詰め、持たせてくれた。

 妻は思わぬ収穫を喜ぶ。作る人の野菜への思いやりを知った。いい梅雨の晴れ間だった。

  (2011.06.16 中国新聞「広場」掲載) 岩国エッセイサロンより転載

紫陽花とともに

2011-06-16 16:12:11 | はがき随筆


 紫陽花の季節に台風。首をかしげた。5月28日夕方、雨が強くなって雨戸を閉めている時、娘から「花入れるでしょう」と手伝いの電話が来た。紫陽花4鉢とプランター一つを玄関いっぱいに運び入れた。ピンク、赤、紫。夜の玄関に咲き群れて壮観である。
 「百本余の紫陽花と今宵をともにする」と謳歌しながら戸締まりした。時々「美観を」と内からドアを開けると何やら顔寄せ合って、おしゃべりをしている。「あら、花の会議中ね」と声をかけると、うなすづく花毬たち。大小いろいろの夜である。そのにぎやかな美しさ!
  鹿児島市 東郷久子 2011/6/11 毎日新聞鹿児島版掲載