はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

心の駅

2006-09-19 17:45:47 | はがき随筆
 一枚の紹介状を懐に、西鹿児島駅発の夜行列車「あかつき号」で、大阪に板前修業に旅立ったのは40年前のこと。見送る人もなく、不安と期待を胸に、眠れる夜を列車はひたすら走る。
 ガタンゴトン、ガタン、ゴトン、ピー! いつの日か一人前になり、故郷に帰るんだと桜島に誓った私の青春時代。
 途中、相席になった見知らぬ方々に励ましや勇気をいただいた。あの人たちは今どこに……。辛かったけどいい時代だった。たとえ名前が変わろうとも私には忘れることのない心の駅。それは西鹿児島駅。人生の出発駅。
   指宿市 有村好一(57) 2006/9/19 掲載