はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

白球の輝き

2006-09-04 16:48:54 | はがき随筆
 この夏、連日の炎天を忘れさせる爽やかな風が郷土を吹き抜けた。その風は甲子園県代表、鹿児島工高の大活躍である。優勝した早稲田実業高に破れはしたが、3勝しベスト4入りを果たした。選手一人ひとりが自分の力を信じ実力を出し切った。スポーツ欄のほかに、地元地域版にも選手の身近な記事「青春譜」、監督の談話、そして応援席、留守組、街の喜びの声など興奮を紙面で届けてくれた。空港で多くの出迎えを受け甲子園の快挙の大拍手。「努力が報われてよかったね。我が母校の後輩たち」。夢の舞台をありがとう!
   鹿児島市 鵜家育男(61) 2006/9/4 掲載 特集版-6

親の意地

2006-09-04 16:39:56 | はがき随筆
 長男から卓球の挑戦を受けてから数年、ようやく対決が実現した。場所は霧島のとあるホテルの一角。15点2セット先取りが勝ちのルール。体育だけは成績も良く上背も私より20㌢以上も高い17歳男子と、中学3年間の部活を経験しただけで標準体型をはるかに上回る中年女性とでは勝負の行方は明らかに思えた。サーブで点を取る息子に、私の方は昔取った杵柄で時々決まるスマッシュしかなかったが、子どもに負けるわけにはいかないという親の意地があった。ジュースが続く。結果意地の分だけ強かった。親辛勝。
   薩摩川内市 横山由美子(45) 2006/9/4 掲載 特集版-5

猫ちゃん

2006-09-04 16:31:22 | はがき随筆
 子猫2頭が居ついてもう2カ月になる。妻は大の猫好きなのだが、お隣の猫が毎日のように遊びに来て食事をしていくので、初めのうちは差し控えていたのだが、ついに「仕方ないわねぇ」と隣の猫用の餌を分け与えるようになった。そのノラちゃん、チャトラとキジトラの雄の兄弟。毎朝縁側に並んで前足をきちんと揃えて座り、首を伸ばして妻の動きを追う。「ハイハイ分かりましたよ」とカリカリを与える。これまでにも経験しているが、成長したらこの兄弟も姿を消すだろう。庭の隅には千葉県船橋で飼っていたころの猫ハナコのお墓がある。
   西之表市 武田静瞭(69)2006/9/4掲載 特集版-4

自然の移ろい

2006-09-04 16:23:47 | はがき随筆
 各地で賑やかに行われた夏祭りも終わり、盆を故郷で迎えた人たちもそれぞれ帰省し、急に回りが静かになった。蝉たちは時間を惜しむかのように力の限り鳴いている。まるで秋の訪れを誘っているように。年を重ねるごとに、年中行事や四季の変化に今まで以上に敏感になり、そして感傷的にさえなる。老いはいろいろなものを失っていく過程でもあると誰かが言った。確かにそうである。でも、老いて初めて味わうことも多い。青春の日々に、自然の移ろいに人生を深刻に感受したことかあっただろうか。
   志布志市 一木法明(70) 2006/9/4 掲載 特集版-3

夏の終わりに

2006-09-04 15:50:48 | はがき随筆
 
 盆が過ぎ、甲子園が終わって夏がすんだという思いが強い。感動の多い高校野球が夏を一層暑くしたが、それなりによかったと思う。
 年を取ると誰もが寂しく落ち込んでしまうが、人生いつまでも感動しながら生きることだと思う。
 癌手術をして1ねん8カ月。元気なからだになってまだ現役の田舎者。すこしでも世の役に立てばと思っている。
 やがて法師ゼミが鳴き秋となる。心素直に、もう少し頑張ってみたいと思うこのころである。二度とない人生だから。
   志布志市 小村豊一郎(80)2006/9/4 掲載 特集版-2 

小さな名前

2006-09-04 15:43:13 | はがき随筆
 激しい雨に鬼ユリは咲き乱れ、薄紫のアガパンサスが美しい。
 キンカンの白い花びらは地面を覆っている。
 雑草は思いっきり両手を広げ、青シソやスギナまで伸び放題になっている。
 毎日展の発表の日はプランターの花苗を植え替え、入賞・入選の知人たちに祝福の便りを書く事にしている。自分は大字書から漢字Ⅱへ変更したばかりで期待は皆無。一息ついてよく見ると入選の欄に小さな名前の春籟(雅号)が。
 うれしい。感動で花の色も潤んだ。
   薩摩川内市 上野昭子(77) 2006/9/4 特集版-1