井伏鱒二著中公文庫『徴用中のこと』
井伏氏が太平洋戦争の開戦直後、マレー半島を
シンガポールまで軍と共に歩んだ話です。
勝っている戦争とはいえ過酷な状況であった様子
が伝わってくるので簡単に読み飛ばせない本です。
40を越えたすでに直木賞を得ている作家が前線に
赴くのですからそれだけでも厳しいことでしょう。
同じ班から戦死者も出ています。
○
文庫の解説に井伏研究で知られる東郷克美が記す
ところによると井伏氏自身悪夢にうなされながら
米寿を越えて書き続ける執念を持っていたそうで
まさに井伏文学の「原点」ですね。
(さすがに、短くとも良くできた解説です)
その成立に問題がある『黒い雨』よりも『徴用・』
が今の私にはインパクトの強い作品でした。
○
カミサンがときどきこのブログを覗いて
「相変わらずクライ。文句ばっかり書いてる」
と当を得たコメントを発せられます。
私の人間としてのスケールがあればもっと興味深く
書けるのだろう、とはこの『徴用中のこと』を読ん
で思うことです。
井伏と比べるなど(をこのさた)ですが。
人間というもの、システムということ、その中の
負の可能性(通常、危険性と言いますがちょっと
ニュアンスが)を深く見つめながら、どこか面白い
ただ興味深いだけでなく、飄々としている文体は
さすが大文学者の筆です。
真似しようにも出来ないのは百と通じますね。
○
日本軍、日本人のいやな側面が多く見えるので
ウヨクの方には受けが悪いし、下の世代の方は
避けて通られる本かもしれません。
日本人というより、人間とはという厳しい視点で
書いておられる本ですから、広く読まれるべきと
思います。
といっても読まれないでしょうけれども。
私は広島に生まれたゆえ原爆のことを何らか
考えざるをえないところがあります。
さまざまな政治がまとわりついた問題です。
だからといって遠ざかる人間が私の知る中でも多い
のですが、知ったつもりになっているだけはないか
と生意気にも思います。
暗くても知らなければならない。
つらいことを伝えようとした先人の遺志を
私達も、いくばくかでも受け止めねばなりません。
井伏氏が太平洋戦争の開戦直後、マレー半島を
シンガポールまで軍と共に歩んだ話です。
勝っている戦争とはいえ過酷な状況であった様子
が伝わってくるので簡単に読み飛ばせない本です。
40を越えたすでに直木賞を得ている作家が前線に
赴くのですからそれだけでも厳しいことでしょう。
同じ班から戦死者も出ています。
○
文庫の解説に井伏研究で知られる東郷克美が記す
ところによると井伏氏自身悪夢にうなされながら
米寿を越えて書き続ける執念を持っていたそうで
まさに井伏文学の「原点」ですね。
(さすがに、短くとも良くできた解説です)
その成立に問題がある『黒い雨』よりも『徴用・』
が今の私にはインパクトの強い作品でした。
○
カミサンがときどきこのブログを覗いて
「相変わらずクライ。文句ばっかり書いてる」
と当を得たコメントを発せられます。
私の人間としてのスケールがあればもっと興味深く
書けるのだろう、とはこの『徴用中のこと』を読ん
で思うことです。
井伏と比べるなど(をこのさた)ですが。
人間というもの、システムということ、その中の
負の可能性(通常、危険性と言いますがちょっと
ニュアンスが)を深く見つめながら、どこか面白い
ただ興味深いだけでなく、飄々としている文体は
さすが大文学者の筆です。
真似しようにも出来ないのは百と通じますね。
○
日本軍、日本人のいやな側面が多く見えるので
ウヨクの方には受けが悪いし、下の世代の方は
避けて通られる本かもしれません。
日本人というより、人間とはという厳しい視点で
書いておられる本ですから、広く読まれるべきと
思います。
といっても読まれないでしょうけれども。
私は広島に生まれたゆえ原爆のことを何らか
考えざるをえないところがあります。
さまざまな政治がまとわりついた問題です。
だからといって遠ざかる人間が私の知る中でも多い
のですが、知ったつもりになっているだけはないか
と生意気にも思います。
暗くても知らなければならない。
つらいことを伝えようとした先人の遺志を
私達も、いくばくかでも受け止めねばなりません。