浜田知明

2013-08-09 18:49:10 | 塾あれこれ
「新日曜美術館」で浜田知明さんを特集していました。

何年か前、廿日市で個展があり、感銘をうけた
作家です。

銅版画や彫刻が多い方だと思います。

生まれは1917年で私の父と同年になります。
戦争体験、人間性が破壊された状況を描いた作品は
父が語ったそれと同じで
「ああ、この作家は信じられるな」と
思いました。
一兵卒の見た戦場を描いて鮮明なイメージを伝えます。

いたって普通の人間が、戦場ではどれほど残虐になれるか、
人間というものは本来そんな動物なのだ、と
思わざるを得ません。

貧弱な肉体しか持ち合わせない動物のくせに地上を凌駕して
いるのですから、よほどのワルなのです。

日本兵だけとは言いませんが、外国兵もやってるから、と
いうことで、その残虐性を誤魔化すことは人として
あってはならないことです。

乱暴狼藉の片棒を担ぐに等しい事です。

日本軍の行為を言うと「自虐史観」などと口走る人も
同罪です。

人間がいかに酷いか、思いだすだけでも耐えがたいことを
辛い思いで証言する人に、ツバをすることだから。

戦後、日本軍はひどいこともした、という証言が
続いていたときには、ひっそりと黙っておいて
ほとぼりが冷めてそろりと出てきた「愛国者」
私は信じられませんね。

戦後ずっと孤軍奮闘して「決してそんなことはなかった」と
言っておられたらその人は別です。
が、あまりお見受けしないように思います。

反戦派がまったくの「でっち上げ」を言っていたとしたら
いくら戦後左翼が強い時代であれ「それは違う」と
言う声が高まっていったはずです。


父は広島に原爆がおちる数日前に出征し、原爆からは
逃れられたものの、朝鮮で終戦を迎え、そのまま
シベリアに連れていかれました。

敵に囲まれ、玉砕覚悟で突撃しようと言う父を
中隊長が留めて武装解除に応じたそうです。

シベリアでの体験から、生涯「アカ」が大嫌いで
左翼思想もかなり距離をおいていましたね。

「綺麗ごとを言っても、末端の現実はどうだ!」と。

そんな左翼ではない、自虐史観に縁がない父でも
戦場のひどさは、ときおり重い口から漏らしました。


私が大学生の時、バイト先の電車運転手に
「中国でいっぱい殺してやった、オモロかった」と
辺り憚からず口走る男がいました。

戦後30年近くたってもそんな空気がありましたね。

彼が本当に何人も殺したかどうか、それは確認できません。
ウソかもしれません。
しかし、戦場がそうであったからこそ「威張る」言動を
できたことは想像できますね。

彼も一種の被害者かもしれません。


浜田知明さんの作品について述べる時間がなくなりました。

ただ暗いだけのものではありません。
絵は小さくとも、ゴヤのような迫力があります。

戦後を代表する芸術家の一人ですね。


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2 コメント

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Unknown (しききん)
2015-08-08 11:15:43
>>日本兵だけとは言いませんが、外国兵もやってるから、と
いうことで、その残虐性を誤魔化すことは人としてあってはならないことです。
この言葉には違和感を感じます。
日本軍がひどいことをしたことは否定しませんが、悪行のみを強調する姿勢にも疑問があります。
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人間ってものは (inoue)
2015-08-08 15:56:48
コメント有難うございます。舌足らずな文で違和感をもたれたこと申し訳ありません。
ロシア兵もアメリカ兵もどの国の者も、というよりヒトというものは本来残虐な存在である、ということが私の考えです。
私が学生の頃、まだ数多くの戦場体験を持った人が生きておられました。内緒で話すことの驚くべき内容は戦後普通の市民として暮らしているその方たちとは余りにもかけ離れており話の信憑性を疑ったほどです。表現を憚らざるを得ないほど酷い。
すべての人間に潜む残虐性というものがありそうなのですね。日本軍がしたというより日本兵がしたのです。繰り返しますが極限に置かれたら何兵でも。私だって狂わない自信は全然ありません。
だから戦争はいけないのです。パンドラの箱をあけてしまうから。
自虐史観と同じじゃないか・・?
戦争に良いもの悪いものがある、という立場ならばイデオロギーとして右も左も同じようなことを言われます。
私はそれは違うと思うのですね。
「悪口のみを強調する姿勢」と仰る部分が私にはピンときません。もちろん仰るように、そうであるという話ならば大いに疑問符が付きますね。
八紘一宇で、よいこともしている、は悪行を相殺するものではありません。
次元が違う話だから。

米国人の多くが原爆投下を正当化します。自分たちには正義があると思いこむからそれが可能です。しかしたとえいくら正義があっても残虐性は否定できない筈なのです。今の日本は、いや世界中で、人間の
負の部分に直面しなさすぎます。
言うと、「尊き英霊を汚すか」と大バッシングを受けそうだから。クールに話ができればお互い通じる筈なのですが。
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