『昆虫ー驚異の微小脳』

2010-07-30 10:13:30 | 本の話
いつもながらの遅すぎる本紹介です。
(ツンドク)になっていた『昆虫=驚異の微小脳』

ご存じの方は「何を今更」でしょうね。

面白く読みました。
何でツンドクだったんだろう?

昆虫がスゴイ能力を持っているのは多少知っていたし
その脳なら小さかろうし、と思っていたのでしょう。
内容がイメージできるような気がしていたのかな。

違った。
さっさと読んでいれば良かった。

きっとこれなら出版されたときに
「名著」として評判になっていたろうと思います。

水波誠著、中公新書、2006年刊行

科学は面白いということが伝わってくる本です。


本ではまず複眼の構造、次に単眼と説明された後
(単純な生物デザインのよさ。Simple is best.)を説かれ
「これが単眼のデザインの本質であり、もしかすると
昆虫の微小脳のデザインの本質なのかもしれない」

1立法mmに満たない小さな脳に何があるのか?


「景色を記憶しその記憶を手掛かりに帰巣するためには
高度な情報処理能力が必要である。昆虫のような小さな
脳しかもたない動物はどのようなしくみで・・」

現代の科学が解き明かす驚異の構造が明らかにされ
また未解明の課題の多さに改めて生物の素晴らしさを
思わされますね。

「小型軽量低コストの情報処理装置の傑作」
などと分かりやすい表現がちりばめてありますから
部分的にはどうしても難しい内容はありますけれども
全体としては分かりやすい仕上がりになっています。

「動きの方向の検知という同一の物理的な課題に直面
した哺乳類と昆虫の脳が、同じ神経計算を独立に進化
させたのである。」

まったく別個の進化をしてきたはずの昆虫と哺乳類が
最後にたどりついたシステムが同じ論理から成り立つなら
超小型脳の勝ちともいえそうです。

ヒトの社会へすぐにアナロジーとして持ち込むのも強引
ではありますが、大きな組織でなくても、シンプルに
結果を出せる場合があるのですね。
智恵は必要ですが。


難しい内容を含みながら読みやすい本を作るというのは
さすが大手出版社ですね。
図版などもきれいで分かりやすいものです。
手抜きがありませんね。

実験をすることの面白さ、そして大変さも伝わります。
類書にはない出来ですね。

ロボット蜂から指令を出させてミツバチに餌を探させる
など面白いですねえ。

最後の第11章だけでも短いですが良くまとまっていると
思います。
立ち読みされては・・・・著者に叱られるか?


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