佐賀純一著、新潮文庫です。
平成6年に筑摩書房から
『戦火の記憶 いま老人たちが重い口を開く』
というタイトルで出版されたものです。
文庫の解説で辺見じゅん氏が書いておられますが
現在ではこの改題のほうが意味深いようですね。
とても重い内容ですが心に沁みる内容です。
戦争の話はどれも同じように思っている人は
ぜひ一読下さい。
戦争についてはNHKの多彩な特番も優れていますが
普通の人々の深いところまで浮かび上がらせることは
この本だからこそ可能であったようです。
○
まず、まえがきの一部を引用します。
「今回もまた聞き書きのスタイルだが、内容は
戦争にまつわる体験談である。話をしてくれた人々は
殆どが私の患者さんで、隣近所、せいぜい数キロの
範囲に住んでいる。これほど身近に暮らしている人々
が、半世紀前には・・何千キロという広大な地域の
空と陸と海に散らばって生死の間をさまよい、敗戦と
ともにここに戻ってきた。そしてその後は戦争の話題
には殆ど触れずに暮らしてきたのである。」
筆者は茨城県土浦市で開業医をされているそうです。
心を開いてくださった方にじっくりと話を伺い
のちに出来上がった原稿をご本人に確認頂き
場合によってはウラづけをとり、公的資料による
解説も加えておられます。
真摯な本の作り方をされていますので戦争の体験を
よく映した本になっているのではないでしょうか。
昔話と言うことになると記憶の間違いなどが混入する
こともありひどい人になると話がオオゲサになったり
することもあるようですから、こういうキチンとした
本こそ、後の人間には有り難い史料となります。
話された方の思いを正面から受止めて綴られたという
ことがひしひしと伝わってきますね。
○
私の父は戦争や抑留の話をほとんどしませんでした。
母は直接のたいへんな戦争体験はなかったようです。
戦争の体験は父以外からも若干聞いたことがあります。
やはり父の重い口からの話が、戦争というものを子供
に伝えておきたいという強い気持ちが込められていた
ように思います。
その父の伝える空気と、この本とよく通じるように
思え、信頼がおける本であると考えます。
○
著者のあとがきは大変優れた戦争論になっており
また、辺見さんの解説もさすがに素晴らしいものです。
文庫解説はネタバレになりそうです。
購入するかどうかは著者のあとがきを読んでからでも
良いかもしれません。
◎
現在中国の大国主義は目を疑うものであり、かつ国際
情勢は非武装中立という理想を遠くに押しやります。
けれども、ほぼ半世紀前に中国で戦争を行っていたと
いうこと、どのような実態であったかということ、
これも知らなければ相手の土壌を推測できません。
いわゆる自虐史観とは違うレベルで、しかし戦争と
なるといかにむごい現実が広がるか。
それが人間の心に何を残すか、それを心に受け止め
その上での、国防であり国際政治であるべきです。
この基本を忘れるわけにはいきません。
ともすれば愛国的にすぎるのは人間として自然です
が、それだけでは国を誤ります。
一般の市民がヒドイ目に会うのです。
それにしても旧軍の官僚主義の弊害はどうでしょう。
○
もし父が生きていれば90をはるかに超えています。
直接の体験をもつ方が少なくなられ、広まる体験は
ステレオタイプなものになりがちです。
これからますますこの本の重要性が増すでしょう。
辺見さんが解説の最後にリデル・ハートの言葉を
引用されています。
「もし、私たちが平和を欲するならば、
戦争をよく知るようにつとめて下さい」
平成6年に筑摩書房から
『戦火の記憶 いま老人たちが重い口を開く』
というタイトルで出版されたものです。
文庫の解説で辺見じゅん氏が書いておられますが
現在ではこの改題のほうが意味深いようですね。
とても重い内容ですが心に沁みる内容です。
戦争の話はどれも同じように思っている人は
ぜひ一読下さい。
戦争についてはNHKの多彩な特番も優れていますが
普通の人々の深いところまで浮かび上がらせることは
この本だからこそ可能であったようです。
○
まず、まえがきの一部を引用します。
「今回もまた聞き書きのスタイルだが、内容は
戦争にまつわる体験談である。話をしてくれた人々は
殆どが私の患者さんで、隣近所、せいぜい数キロの
範囲に住んでいる。これほど身近に暮らしている人々
が、半世紀前には・・何千キロという広大な地域の
空と陸と海に散らばって生死の間をさまよい、敗戦と
ともにここに戻ってきた。そしてその後は戦争の話題
には殆ど触れずに暮らしてきたのである。」
筆者は茨城県土浦市で開業医をされているそうです。
心を開いてくださった方にじっくりと話を伺い
のちに出来上がった原稿をご本人に確認頂き
場合によってはウラづけをとり、公的資料による
解説も加えておられます。
真摯な本の作り方をされていますので戦争の体験を
よく映した本になっているのではないでしょうか。
昔話と言うことになると記憶の間違いなどが混入する
こともありひどい人になると話がオオゲサになったり
することもあるようですから、こういうキチンとした
本こそ、後の人間には有り難い史料となります。
話された方の思いを正面から受止めて綴られたという
ことがひしひしと伝わってきますね。
○
私の父は戦争や抑留の話をほとんどしませんでした。
母は直接のたいへんな戦争体験はなかったようです。
戦争の体験は父以外からも若干聞いたことがあります。
やはり父の重い口からの話が、戦争というものを子供
に伝えておきたいという強い気持ちが込められていた
ように思います。
その父の伝える空気と、この本とよく通じるように
思え、信頼がおける本であると考えます。
○
著者のあとがきは大変優れた戦争論になっており
また、辺見さんの解説もさすがに素晴らしいものです。
文庫解説はネタバレになりそうです。
購入するかどうかは著者のあとがきを読んでからでも
良いかもしれません。
◎
現在中国の大国主義は目を疑うものであり、かつ国際
情勢は非武装中立という理想を遠くに押しやります。
けれども、ほぼ半世紀前に中国で戦争を行っていたと
いうこと、どのような実態であったかということ、
これも知らなければ相手の土壌を推測できません。
いわゆる自虐史観とは違うレベルで、しかし戦争と
なるといかにむごい現実が広がるか。
それが人間の心に何を残すか、それを心に受け止め
その上での、国防であり国際政治であるべきです。
この基本を忘れるわけにはいきません。
ともすれば愛国的にすぎるのは人間として自然です
が、それだけでは国を誤ります。
一般の市民がヒドイ目に会うのです。
それにしても旧軍の官僚主義の弊害はどうでしょう。
○
もし父が生きていれば90をはるかに超えています。
直接の体験をもつ方が少なくなられ、広まる体験は
ステレオタイプなものになりがちです。
これからますますこの本の重要性が増すでしょう。
辺見さんが解説の最後にリデル・ハートの言葉を
引用されています。
「もし、私たちが平和を欲するならば、
戦争をよく知るようにつとめて下さい」