敵討

2010-10-06 14:14:33 | 本の話
氏家幹人著『かたき討ち』中公新書

副題が「復讐の作法」というブッソーな本です。

時代劇などでもよくあるものですから、敵討の
およそのイメージはありますよね。

「ここで遭ったが百年目、親の敵、いざ尋常に勝負・・」
という、あれです。

知っているからか本を読んでいるうちに面倒になります。

はては「何故読んでいるのだろう。時代遅れのことを
今更詳しく知って何になる?」と。
著者には申し訳ありませんが何度もそんな気になり
古本屋に回そうかと考えたのですが・・

第十章に、八代将軍吉宗が中国における敵討について
様々な質問をしていることが書いてあります。
吉宗の実像が分かる気がしますね。
ここだけでも読んで、損はない本に変わりました。

人情では敵は憎い、
しかしそれだけに流されるわけにはいかない。
人情と統治=法のありようをどう関係させるか、
現代にも通じる問題を具体的に考えようとした吉宗。
今の政治家より真剣かもしれませんね。
スタッフもよかったのでしょう。

次章以降では、敵討というものが庶民の不満のガス抜に
なっていたことが明らかにされます。

う~む、司法の問題にとどまらず、統治のありようも
伺える切り口であったのですね。

さすがに現代では敵討などという野蛮はできませんが
かわりにマスメディアがニュース枠でワイドショーを
繰り返し見せてくれます。
なにかあればバッシングの嵐=ガス抜き。

江戸時代も今もあまり変わらないようです。
中国のネット世論も似たことでしょう。


先日、小学4年生が国語のある文章を難しいと云い
よく聞いてみると「子守り」ということがピンと
こなかったのですね。

私くらいの年代なら祖父母の時代で身近にあったこと
ですから、およその感覚は分かります。
家事としての兄弟の子守と奉公に出ての子守との違い
なども知識だけではピンと来ないものでしょう。

文学というものはピンとこないと「難しい」

たとえば古い映画『荷車の歌』
ここでいたいけな少女がお母さんのためにオムスビを
木に隠してやるというシーンがあります。
公開された当時はみな泣いたものですが
今の人では理解できても泣けて泣けてではないでしょう。
当時の状況が分かっていないとピンとこないのですね。

子守なら唱歌「赤とんぼ」とか言ってやってもそれでは
ピンときません。

私も長めの解説をすることになりましたが分かってくれる
には時間がかかるでしょうねえ。


ところで私に子守にまつわる知識がどれほどあるか?
話に迫力がなかったのはそのセイかもしれません。

そうです。
ここで敵討に戻ります。

やはりどんなことでも知識がなければなりません。


追記、
氏家さんの著書ではかなり多方面に亘ったことを
触れておられます。
一番肝心なところは人間の生き方や心情であろうと
思われますが、それは芸術の守備範囲ではないか?