25歳で小学校の教員になった時、隣のクラスにくりくり頭の腕白坊主がいた。
お父さんは息子にサッカーをやらせたくてサッカークラブを立ち上げ、監督をしていた。ハリ天がサッカー経験者と知ると、先生、試合見に来てやってよと誘いが来た。
初めて観戦した試合のハーフタイム。整列した選手の1人に向かって「カオル、前に出て来い!」と。そして何も言わずにいきなり顔面を張り飛ばした。何で殴られたかわかるか。悔しそうに唇を噛みしめて監督である父をにらむ息子。
そして、試合は後半へ。前半とは見違えるような動きで見事な逆転勝ちをおさめた。相手チームに挨拶をすませ、嬉しそうに監督の前に走り寄る子ども達。父は、そのままカオル!と息子を思い切り抱きしめた。
目の前にはスポ根漫画の世界が広がっていた。何なんだこの親子。一瞬で視界が歪み空を見上げるしかなくなった。あまりにも強烈なワンシーンだったのだ。
昨日、闘病の末そのお父さんが他界されたと連絡が来た。
自分のノートには記録されていないどこか憧れの親子。これからも勝手にずっとずっと酒の肴にさせてもらいます。安らかに。