毎日のできごとの反省

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書評・習近平よ「反日」は朝日を見習え・変見自在・高山正之

2016-07-14 15:38:48 | Weblog

 高山氏の持論は中国人も欧米人も、日本人に比べれば異常に残忍な民族である。ある日本人漫画家は「中国人が攻めてきたら戦わずに素直に手を上げる。中国人支配の下でうまい中国料理を食って過ごした方がいい」といったそうな(P33)。ところが「中国人は逆に無抵抗の者を殺すのが趣味だ。蒋介石も毛沢東も村を襲って奪い、犯し、殺し尽す戦法をとってきた。クリスチャンの蒋は毛と違って、時には村人全員の両足を切り落とすだけで許した。毛より人情味があると言いたいらしい。ただ相手が日本人だと彼らの人情味は失せる。盧溝橋事件直後の通州事件では中国人は無抵抗の日本人市民を丸一日かけていたぶり殺した。(P35)」

 この後通州事件の凄惨な殺人方法が、具体的に書かれているのだが、転記するに忍びないほどひどい。なるほど憲法九条改正に反対し、自衛隊は憲法違反だと言う輩の本音は、絶対中国が攻めてくるはずがない、万一せめて来たとしても、降伏して安穏に暮らせばよい、というものである。それもこれも、かつての戦争は全て日本の侵略が原因であって、日本が侵略さえしなければ戦争は起きない、という思い込みが骨の髄まで染み込んでいるからである。

 ついでに改憲反対論者の嘘をもうひとつ。朝日新聞は中米のコスタリカは「・・・憲法で軍隊放棄を規定し、その分を教育に投資し、おかげで中南米では最も安定した国のひとつになった。隣国にも働きかけて今ではパナマも軍隊を廃止した(P117)」この文章自体には「隣国に働きかけ」という箇所以外に間違いがないからたちが悪い。

 コスタリカは内戦を収めた独裁者フィゲレスが、軍隊はクーデターを起こし反抗する可能性があるから、軍隊を廃止してしまった、というのだ。その上、この地域は米国の裏庭で、国境侵犯が起きたら米国が許さないことを見込んだ悪知恵だというのだ。

 パナマはもっと悲惨である。パナマは米軍に奇襲攻撃された。「奇襲の目的はCIAで昔働いていて米国の秘密を知る実力者ノリエガ将軍の拉致だった。米軍は将軍を捕まえると、パナマが無作法な米国の侵攻に怒って武力報復に出ないようパナマ国軍そのものを解体してしまった。広島長崎の報復権を留保する日本から軍隊を取り上げたのと同じだ。(P119)」

 日本の改憲反対論者は、このようなパナマとコスタリカの例を本当の事情を隠して、自衛隊廃止論を主張するから、本質的には哀れな存在なのである。軍隊廃止を押しつけてくれてありがとう、と日本市民を大量虐殺したアメリカに感謝するのである。

 ノリエガの件は日本では、独裁者ノリエガは米国に麻薬を密輸出した件で、アメリカ国内法で裁くため米軍が急襲し、アメリカに拉致して裁判にかけて懲役刑に処した、という説明がなされている。ノリエガが独裁者で麻薬の密輸の件も事実である。だが、裏に前記のような事情があるとすれば、アメリカの無茶なやり方も腑に落ちる。

 また米国によるパナマの無力化は、パナマ運河の存在も大きいだろう。また、パナマ運河拡張工事は、経済的意味ばかりではなく、米国の軍艦の大型化による運用拡大と言う意味もあるのだろうと、小生は思っている。戦艦大和のライバルだった、アイオワ級の戦艦の幅はパナマ運河の運用限界によって決まったし、46cm主砲の大和級の開発もパナマ運河の制限からアメリカが、同級の主砲の戦艦を開発できないと目論んだからである。

 イラク戦争の発端となった大量破壊兵器の存在の件は、もっとややこしい。イラン・イラク戦争の当時、高山氏はイラン軍野戦病院に行ったそうである。(P121)そこにはイラク軍のマスタードガスを浴びたイラン軍兵士が治療を受けていた。毒ガス弾は使われていたのである。「ブッシュが『イラクには化学兵器がある』とあれほど言い切ったのは、当の米国がそこでずっと製造に当たってきたからである。」

 ところが、化学兵器は発見されなかった。ところがところが、ずっと後になってISがサリン弾を使った。何と米国の指導で作られた毒ガス弾が使われたのである。イラク戦争はこの痕跡を潰すために行われたのだが、手落ちで残ってしまった。米国はイラクで毒ガス弾を作ったのをばれないようにするために、恥を忍んで大量破壊兵器はなかったと発表したのだが、何とISが隠されていた兵器廠を見つけて再利用していたので、ばれてしまったというのだ。

 毒ガス弾本体の製造は西ドイツで行われていた、というのも驚きだが、それを敵なら平気で使うフセインもISもどういう神経だろう。高山氏はアメリカ政府が、イラクは「毒ガスなど大量破壊兵器を持っている」と発表したとき、イラク軍による毒ガスの被害を現認していたから「丸っきりの当てずっぽうとも思えなかった」という。さもありなんである。

 国際法で捕虜や非戦闘員の殺害を禁止する、陸戦条約を提議したのはアメリカだそうである。「しかし同じ時期フィリピンの植民地化戦争をやっていた米国はすぐ抜け道を作った。『陸戦条約は正規軍のみが対象でゲリラには適用されない』と(P148)」米西戦争に協力したらフィリピンを独立させる、という約束を反故にされて、反抗したアギナルド軍をゲリラと認定し、捕虜を拷問し、処刑したのである。

 フィリピン人を殺すには「1週間銃殺」を発明したそうである。月曜から木曜まで毎日1か所づつ撃ち、苦痛と恐怖を味あわせたうえで、ようやく金曜に心臓にとどめをさすのである。以前も書いたが、映画「ロボコップ」でも警官が同じことをされて殺されている。それが再生利用されて、主人公ロボコップが誕生するから怖い話だ。ただし、1週間もかけず、数時間でとどめをさされている。やはりアメリカ人は同じ残虐行為をした記憶があるからフィクションの映画でも同じストーリーを書くのである。

 同じ項に、中国人の残虐な処刑も書かれている。日清戦争や支那事変ばかりではなく、戦前の多くの日本人が兵士民間人を問わず、同じように苦しんで処刑されている。それを大抵の日本人は忘れさせられたのである。

 P151の欧米人が好きな「性器の破壊」はボスニア紛争などにまつわる、性的残虐行為の話だが、人間とはここまで非道になれるものか、と驚いた、とだけ紹介する。ただ朝日新聞がボスニア紛争におけるこのような問題を「慰安婦問題は今日的な性の問題でもある」と引用したのはあまりにもバランスを欠いている。おぞましい性的残虐非道の行為を売春と同等に扱うのだから。それならば、今でも日本で行われている、売春すなわちソープランドの廃止運動をしなければならない。

 最近でも白人警官による無抵抗の黒人射殺など、アメリカは人種問題で揺れている。日本の服部君がハローウィンで間違えて白人の家に入って射殺されたが、無罪どころか逮捕もされなかったとして、日本人は驚いた。(P160)日本ではアメリカの銃社会の怖さが話題になったが、本質はそこにないことを証明するエピソードが紹介されている。

 ドイツからの女子留学生が忍び込んできたのを発見した家人が射殺した。モンタナ州には「身の危険を感じた者は非難したり警察に通報する前に銃を使っていい」という法律がある。にも拘わらず射殺した家人は、最も重い謀殺罪で刑期70年の有罪となった。

 理由は服部君と違い、被害者が白人で、加害者がモンゴロイド系のモンタナ・インディアンだったから。「ABC放送は判決の瞬間、正義が勝ったと喜ぶ白人の声を伝えていた。(P162)」アメリカでは今後も人種問題による殺人などの混乱は続く。白人が少数になる趨勢からすると、混乱は収束するどころか拡大するだろう。黒人が公民権を獲得してから何十年もたつのにこの有様なのだから。