褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 丘(1965) 強烈な軍隊批判です

2023年06月27日 | 映画(あ行)
 タイトル名が何とも味気ないが、てっきり俺は恋人同士が丘に登って、星空を観ながら愛を交わすストーリーが内容だと思っていた。ところがそんな想いとは全く違い、女性なんか殆ど出てこないし、舞台は北アフリカの陸軍刑務所内。そこで囚人達に行われる曹長や幹部のしごき、暴力が胸糞悪くなるぐらい描かれているのが今回紹介する映画。初代ジェームズ・ボンドとして007シリーズをドル箱映画にした立役者ショーン・コネリーの主演作品だ。 
 最近はパワハラ、モラハラといったものが非常に厳しい世の中になってきた。それは良い風潮のはずなのだが、昔は当たり前にあった体罰に関しては、本人にそのような意識が無いからなのか痛ましい事件を毎日のように見る始末。特に、か弱き者に対しての度の過ぎた体罰が目立ちすぎる。
 
 さて、タイトル名のとは、果たして本作ではどのような意味を成すのか。それではストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦下の北アフリカの陸軍刑務所において、今日も泥棒や逃亡といった罪を犯した5人の囚人が送り込まれてきた。彼ら5人は同じ刑務所部屋になるが、何かとふてぶてしい態度をとるロバーツ(ショーン・コネリー)のせいで、看守長ウィルソン(ハリー・アンドリュース)から目をつけられ、彼の新しい部下であるウィリアムズ看守(イアン・ヘンドリー)から猛烈なシゴキを食らってしまう。
 ある日のこと、ウィリアムズの徹底的な度を過ぎたシゴキのせいでスティーヴンス(アルフレッド・リンチ)が死んでしまう。あまりにもの理不尽な扱いに怒りを募らせたロバーツはついに刑務所内の実態を告発しよとするのだが・・・

 ちなみにタイトル名にもなっているとは、体罰のために重装備で駆け足で上り下りをさせられる砂丘のこと。北アフリカの炎天下でやらされているのを見ると本当にコッチまで体罰を喰らっているように思えてしまう。執拗な嫌がらせを権力を利用して囚人達に課しまくるウィリアムズの卑劣さが凄いし、部下である彼の責任が問われると自分の首が吹っ飛ぶことを心配してウィリアムズの肩を持とうとする看守長のウィルソンの囚人達をしごきまくることに関しては何事も厭わない恐るべきドエスっぷりを発揮する場面は観ていて気分が滅入ってくるぐらいだ。
 看守側にも良い人が居たり、軍医が居たり、看守長の上の位である所長もいるのだが、これが全く役に立たない。このような中で囚人達が体力のみならず精神的にもぶっ壊れていく展開が非常に巧みだ。ところどころで巧みな演出も目立っていて感心させられたり、また権力者の言いなりになっている人間の卑屈さ、弱さをまじまじと見せつけられたりで観終えた後は疲労に駆られた。それに輪をかけるようなラストシーンでこれが非常に秀逸すぎて、人間の誇りがズタズタにされる。
 本作を観終えて冷静になって考えると、なぜ007シリーズで絶頂期バリバリの英国人であるショーン・コネリーが、このようなイギリス軍隊を猛批判するような映画に出演しているのか?よく考えれば、彼の中には英国からの独立志向が強いスコットランド人の血が入っており、非常に政治的な発言が多かったことで有名。そんな彼のバックボーンが007シリーズで安堵している場合ではなかったことを本作を観て感じさせられた。
 ひたすら映画に娯楽を求める人には全く向かないが、人間の弱さ、腐った権力、こんな酷い刑務所があるのか!?なんて感じたい人には今回は映画をお勧め映画として挙げておこう

 監督は社会派映画の分野で多くの傑作を遺したシドニー・ルメット。彼の初期作品は本作のように後味の悪い作品が多いですが、その中でも質屋未知への飛行がお勧め。そして、彼を最も有名にした十二人の怒れる男セルピコ狼たちの午後ネットワークデストラップ 死の罠評決など、僕が観た映画の中でもキリがないほどお勧め作品が多いです





 

 

 

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