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映画 戦火のかなた(1946) 戦争の悲惨さがわかります

2023年08月26日 | 映画(さ行)
 第二次世界大戦の末期において、アメリカを中心とする連合軍は1943年7月10日にシチリア島に上陸してから1945年4月にイタリア全土をナチスドイツから解放する。連合軍はイタリアのバルチザンと協力してナチスドイツと戦ったのだが、これが2年近くも掛かっているのだから、相当激しい戦闘が繰り広げられていたに違いない。この時の状況をアメリカ軍、バルチザンからの目線で描いた映画が今回紹介する戦火のかなた。ちなみに本作は1946年に公開だからイタリアが解放されてから公開までに1年ぐらいしか経っていないことになる。確かに映像は瓦礫の山のシーンもあったりで戦争の生生しい雰囲気が出ている。この戦後の映像の機材を持ち出して素人の俳優を使ってロケ撮影を敢行しているところは、まさにネオリアリズモの作風を感じさせる。
 ちなみに本作は6章からなるオムニバス風の作品。前述したように戦争のド迫力シーンは無く、戦場で兵士が撃たれてバタバタ死んでいくようなシーンは殆ど無い。反戦映画だが、戦争とは命を奪うだけでなく人間としての感情を狂わしたり、道理がまかり通らないことも戦争のダメな理由に挙げなければならない。戦争で生き残っても永遠に消えないダメージを受けてしまうことを本作を観ればわかる。

 連合軍がシチリアに上陸してからの6話出てくるが一話すつ簡単にストーリーを述べておこう。
1.連合軍がシチリア島に上陸する。若きアメリカ人の斥候兵と早く戦争が終わって欲しいと願うイタリア人の少女は二人だけになった時に、言葉は少しだけ通じ友情が芽生えるが・・・。

2.ナポリにおいて。アメリカ人の黒人憲兵がイタリア人の少年に酔って寝ている最中に靴を盗まれてしまう。ある日のこと、黒人憲兵はその少年を見つけて靴を取り戻すために少年を引き連れて彼の家に向かうのだが・・・。

3..ローマでは酔ったアメリカ人兵士と拾った娼婦が一室に入って会話をする。兵士が寝そうになりながら『俺らがローマに来た時のイタリア女は本当に良かった』と6カ月前のことを語り出す。実はその時に出会った女が今、目の前にいる娼婦だったのだ。アメリカ人兵士が眠っている間に、娼婦は自分の家の住所をこっそり部屋の管理人に渡すのだが・・・。

4.フィレンツェの野戦病院で働いていた看護婦は、恋人であるバルチザンの闘士が怪我をしているとの噂を聞きつけ、恋人に会うために市街戦の真っ只中で撃ち合いをしている所へ行こうとするのだが・・・。

5.3人のアメリカ従軍僧が宿を借りに、カトリックの修道院を訪ねる。しかしながら3人のアメリカ人は1人はカトリックだが、後の2人はプロテスタントとユダヤ教。頑ななカトリックの神父たちと宗教の対立を起こしてしまい・・・。

6.いよいよ北イタリア。アメリカ兵士とバルチザンは四方八方をナチスドイツに囲まれてしまい、捕虜になってしまう。捕虜の運命は・・・。

 この6話だがどれも最後はハッピーエンドにならない。戦争の悲惨さを描きながら、ナチスドイツに対して敵意を表した内容になっている。しかし、戦争で潰されるのは命や建物だけでない。1において友情が崩れ去り、2においては子供達をスラム街に追い詰め、3においては一生忘れらえない出会いだったはずが、別れはあまりにも脆すぎたり、4においては恋愛関係をあっさりぶった切り、5においては戦争によって出会うことになるイタリアとアメリカの宗教家だが、本来の宗教は心の拠り所であるはずなのになぜか対立を煽ることになってしまったり、5においてはラストが強烈。こうもナチスドイツは腐っているのかと思わされた。
 戦争と言う異常な時代において一輪の花のような素晴らしい出来事もあったりするが、殆どはロクでもない出来事ばかり。どんな真っ当な人間も狂わしてしまう。本作から人間が持っている良心が見られなかったのが残念。しかし、繰り返すが本作の公開はイタリアが解放されてから1年での公開。そうなると撮影時のスタッフ達は戦争の生々しい経験がまだ身に染みていることだろう。本作のような映画を見ると戦争が終わりますようにと願いながら、自分の無力さを感じさせられるのが無念だ。今回は古い映画だが戦争の悲劇を色々と描くためにオムニバス的な構成になったが、観た人は色々と感じるだろう。ちょっと画面が暗いのが難点だが、戦争の生々しさを描いているという点で戦火のかなたを、お勧めに挙げておこう

 監督はネオリアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニ監督。この前年に撮られた無防備都市、そしてロベレ将軍がお勧め



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