褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 羅生門(1950) 人間のエゴイズムを描き出す。

2019年05月27日 | 映画(ら行)
 先日、日本の映画の多くの名作に出演していた女優京マチ子さんがお亡くなりになられた。享年95歳、合掌。日本映画の巨匠の作品に多く出演している大女優として有名だが、彼女の出演作品で非常に印象に残っている映画が今回紹介する羅生門。小説家である芥川龍之介の作品としても有名なタイトル名だが、映画の方は同じ作家でも藪の中を原作にしている。そして本作は京マチ子さんの代表的作品としても有名だが、黒澤明監督が世界中に知られることになった切っ掛けでの作品でもあり、日本映画のレベルの高さを世界中に示した映画だ。
 さて、いきなり俺のボヤキから始まるが、俺の周りには嘘ばかり言っている人間がいる。自分の失敗を他人のせいにするために嘘をつき、自分を偉そうに見せるためにSNSに嘘の投稿をする奴がいる。まあ、そんなことでボヤいている俺ですら嘘をつくことが多いので嫌になるが、せめて他人を蹴落とそうとして嘘をついたり、自分を偉そうに見せるために嘘をつくことだけは決してしないと改めて自分自身に問いただす。嘘をつくにしても、自分ではなく他人を助けるための優しく、思いやりに満ちた嘘をつきたいものだ。
 しかし、俺の周りだけでなく、あなたの周りにも嘘ばかり言っている人間が多くいるだろう。だいたいテレビも雑誌もインターネットも嘘ばかり。さらに近頃は議員と呼ばれる人も嘘をつく人間が多いから困ったものだ。また、そんな嘘つきに我々の税金が流れていっているのに、腹が立たない人が多いのだからこの世の中は嘘つきのやりたい放題がまかり通ってしまう。嘘をついたもん勝ちの社会に絶望的な気分に襲われている人が俺以外にも多くいるはずだ。
 さて、本作のテーマがまさにソレ。大まかなストーリーは、ある殺人事件をめぐって関係者や目撃者の証言がそれぞれ食い違い、一体誰の言っていることが真実なのか?を探るミステリー。しかし、その過程で人間のエゴイズムを情け容赦なく描き出す。

 すっかり疑心暗鬼に満ちてしまった時代に、何を信じて生きれば良いのかを自分で考えたくなるようなストーリーの紹介をしよう。
 大雨が降り続き、すっかり荒れ朽ちた羅生門で雨宿りをしていた杣売り(志村喬)と旅法師(千秋実)。2人はある殺人事件の参考人としての帰り道だった。そんな2人が『あ~、何もかも信じられね~』とボヤキ合っている最中に別の男(上田吉二郎)が飛び込んで来て、2人の話を興味津々に聞いていた
 そんな不思議な話とは一体何か?杣売り(志村喬)が薪を取りに森の中へ入っていくと、一人の死体を発見し、役人へ届けでる。事件の顛末はこのようなものだ。盗賊の多襄丸(三船敏郎)が昼寝をしている最中に侍夫婦が通りが掛かる。多襄丸は侍(森雅之)の妻(京マチ子)の横顔を見て欲情し、侍を縛り付けて彼の目の前で妻を犯した。しばらくすると侍は死体になって転がっており、多襄丸と侍の妻は現場から消えていた。
 しかし、捕らえられて連行されてきた多襄丸、侍の妻の発言は肝心な部分で異なる点があり、そして巫女の能力を借りて死者である侍の霊の言葉を語らせると、これまた肝心な部分で異なる。三者三様で言っていることが違うのだ。果たして三人の中で誰が言っているのが真実なのか?実は3人が一斉に会っている場面を杣売りは目撃しており、3人とも嘘を言っていると言って、杣売りはその時の事実を旅法師ともう一人の男に語りだすのだが・・・

 時代背景は平安時代。科学が発達した現代に生きる俺からすれば、殺人事件に居合わせた三人の中で一番信頼できないのは、もう死んでいるのに巫女の口を借りて語る侍だろうと思ったりしたのだが、真実を語りだしたと思われる杣売りの話を聞いて更なる驚きの展開が用意されていた。この映画は登場人物が少ないのだが、実はどいつもこいつも嘘つきは当たり前で、エゴイスト、虚栄心、悪意に満ちた人間ばかりが登場。しかし、よく考えたらこんな奴らは映画の中だけではなく誰の身にも思い当たる奴ばかり出てくる。現代に生きる我々も疑心暗鬼の世界に放り込まれていることに気付かされるし、自分自身の胸に手を置いて『実は俺も本作の登場人物たちと同じじゃないのか!』と考え悩む。まあ、本作を観た後に自分で悩むだけなら、まだマシな方。もしも本作を鑑賞した後に『俺は国民の財産と生命を守っているんだから、もっと議員報酬を上げてもらって良いはずだ』なんて考えている奴がいたら、そいつには直ぐに議員辞職勧告するべきだろう。
 しかし、本作はモノクロだが世界にも名が知られている名カメラマン宮川一夫のによる映像表現は美しいと思わせるし、音楽も重厚感があって良い。そして、黒澤明監督というのは本当にストーリーテラーだと思わせるような抜群の構成力、ストーリー展開の妙を感じさせる。そして、本作が素晴らしいのは疑心暗鬼の暗闇の中でも、ものすごく小さな希望の灯を点そうとしているところ。絶望の淵に立っている人が本作を観れば、これからはもがいてでも生きていこうと思わせられるはずだ。そして京マチ子さんだが、美人だとは思えないが妖艶な雰囲気が漂う。色々な表情を見せてくれるし流石は大女優だと思わせます。
 京マチ子さんが亡くなった記事を見て、初めて彼女を知った人、日本映画の名作を観たい人、これが人間の本質かもな~?なんて思える映画を観たい人、誰も信じられない人等に今回は映画羅生門をお勧め映画として挙げておこう。

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宮川一夫,黒澤明,芥川龍之介,橋本忍
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 監督は前述した黒澤明。娯楽時代劇としては七人の侍用心棒隠し砦の三悪人、ヒューマニズム映画として生きる酔いどれ天使をお勧め映画として挙げておこう。他にもお勧め映画多数の偉大なる映画作家です。


 


 
 
 
 
 

 
 
 

 

 

 

  

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