この世の中、いたいけな貧乏人の弱みに付け込んで騙して笑っているような連中が居るが、そんな奴等でも心の中から不安と恐怖は消すことができない。今のところ順風満帆、我が世の春の状態が続いている俺ですら、いつ何がきっかけで転落の人生が始ってしまうのかと怯えている。俺だけでなく、金持ちも貧乏人も常に良心という名の崖っぷちに立たされ、不安と恐怖に怯え続けながら生きているのだ。
だいたい小さな喜びを積み重ねることに幸せを感じない人間が多すぎる。お金が常に懐にガッポリ入ってくることにしか幸せを感じることができない人間こそ実はとても悲しい人間だ。そんな教訓めいたことを教えられた気分になれる映画が今回紹介する崖。非常にいたいけな貧しい人から、金を巻き上げていくことにしか生きがいを感じられない詐欺師の運命を描いたストーリー。せめて大富豪を狙って金を巻き上げるのなら少しは良い気分になれそうだが、貧しく信仰心が篤い人間を狙って金を奪っていくシーンを見るのはあんまり良い気がしない。しかし、そんな詐欺師が良心の呵責に悩みだしてからの展開こそが本作の真骨頂。まさかこんなクズみたいな詐欺師から感動を得るとは我ながらビックリした。
さて、ハリウッド映画ならば詐欺師の鮮やかな手口に大いに楽しめるとしたものだが、フェデリコ・フェリーニが詐欺師を描くと非常に苦味を感じさせるストーリーの紹介を。
冴えない風貌のオーギュスト(ブローデリック・クロウフォード)、全く売れていない画家だが明るい性格のピカソ(リチャード・ベイスハート)、ちょっと男前で女垂らしのロベルト(フランコ・ファブリッツィ)の3人は詐欺仲間。今日は男爵と呼ばれる男からの詐欺の仕事を請け負う。
3人は神父の姿に変装し、貧しくて信仰心の篤い家族から金を奪うことに成功。その後も貧民街に暮らす人々をアパートの斡旋の詐欺で金を騙し取り、ガゾリンスタンドでいざこざを起こして金を奪ったりしていた。しかし、オーギュストは久しぶりに会う娘と一緒に映画館にいたところ、かつて金を騙し取った男と鉢合わせしてしまい、半年間の牢獄生活を余儀なくされる。
牢獄生活から出たオーギュストだったが、詐欺仲間のピカソはすっかり足を洗ってしまい、ロベルトは他所へ行ってしまっていた。オーギュストは違う仲間達と再び神父の姿に変装して、またもや貧しい家族を狙って金を騙し撮ろうとするのだが、そこには自分の娘と同じ年頃の足の不自由な女性が居り・・・
前半はちょっとしたコメディタッチの雰囲気があり、ピカソ役のリチャード・ベイスハートがお笑い担当として楽しませてくれる。しかし、そんな雰囲気もオーギュストが長く会ってなかった娘と出会ってから一変する。ここからのオーギュストの心の葛藤がこの映画の見せ場だ。この詐欺師の小心さが暴かれ、初めて訪れる良心の痛みはチンケな詐欺師にどのような結末が用意されているのか。お金欲しさに本当の幸せを見失ってしまう詐欺師の人生が、俺の人生を暗示しているようで何となく気持ち悪い。
しかしながら、本作は卑しい根性を持っている人間の本質を突いているし、だからこそ詐欺師が最後のド根性を見せるシーンは俺のような人間には大きな感動を呼ぶ。とにかくお金にしか興味を持てない人、人間って結局のところ何なんだろう?と哲学的な気分に浸りたい人、負け惜しみだとわかっていながら金持ちになることが人間の幸せじゃ無いよね!と頑なに信じ続けている人、今がまさに崖っぷちに追い込まれている人等に映画崖はお勧めだ
監督は前述したイタリアが生んだ巨匠フェデリコ・フェリーニ。映画史に残る名作を連発し続けた大監督。これが本当の青春だよね~と感じさせる青春群像、世界映画史に残る大傑作道、騙されても騙されても人を信じ続けることに大いなる人生賛歌を感じさせるカビリアの夜、現代ローマ(と言っても1960年の作品ですが)に生きる人間の退廃が描かれている甘い生活等がお勧めです。
にほんブログ村 映画ブログ
人気ブログランキングに参加しております。クリックお願いします
だいたい小さな喜びを積み重ねることに幸せを感じない人間が多すぎる。お金が常に懐にガッポリ入ってくることにしか幸せを感じることができない人間こそ実はとても悲しい人間だ。そんな教訓めいたことを教えられた気分になれる映画が今回紹介する崖。非常にいたいけな貧しい人から、金を巻き上げていくことにしか生きがいを感じられない詐欺師の運命を描いたストーリー。せめて大富豪を狙って金を巻き上げるのなら少しは良い気分になれそうだが、貧しく信仰心が篤い人間を狙って金を奪っていくシーンを見るのはあんまり良い気がしない。しかし、そんな詐欺師が良心の呵責に悩みだしてからの展開こそが本作の真骨頂。まさかこんなクズみたいな詐欺師から感動を得るとは我ながらビックリした。
さて、ハリウッド映画ならば詐欺師の鮮やかな手口に大いに楽しめるとしたものだが、フェデリコ・フェリーニが詐欺師を描くと非常に苦味を感じさせるストーリーの紹介を。
冴えない風貌のオーギュスト(ブローデリック・クロウフォード)、全く売れていない画家だが明るい性格のピカソ(リチャード・ベイスハート)、ちょっと男前で女垂らしのロベルト(フランコ・ファブリッツィ)の3人は詐欺仲間。今日は男爵と呼ばれる男からの詐欺の仕事を請け負う。
3人は神父の姿に変装し、貧しくて信仰心の篤い家族から金を奪うことに成功。その後も貧民街に暮らす人々をアパートの斡旋の詐欺で金を騙し取り、ガゾリンスタンドでいざこざを起こして金を奪ったりしていた。しかし、オーギュストは久しぶりに会う娘と一緒に映画館にいたところ、かつて金を騙し取った男と鉢合わせしてしまい、半年間の牢獄生活を余儀なくされる。
牢獄生活から出たオーギュストだったが、詐欺仲間のピカソはすっかり足を洗ってしまい、ロベルトは他所へ行ってしまっていた。オーギュストは違う仲間達と再び神父の姿に変装して、またもや貧しい家族を狙って金を騙し撮ろうとするのだが、そこには自分の娘と同じ年頃の足の不自由な女性が居り・・・
前半はちょっとしたコメディタッチの雰囲気があり、ピカソ役のリチャード・ベイスハートがお笑い担当として楽しませてくれる。しかし、そんな雰囲気もオーギュストが長く会ってなかった娘と出会ってから一変する。ここからのオーギュストの心の葛藤がこの映画の見せ場だ。この詐欺師の小心さが暴かれ、初めて訪れる良心の痛みはチンケな詐欺師にどのような結末が用意されているのか。お金欲しさに本当の幸せを見失ってしまう詐欺師の人生が、俺の人生を暗示しているようで何となく気持ち悪い。
しかしながら、本作は卑しい根性を持っている人間の本質を突いているし、だからこそ詐欺師が最後のド根性を見せるシーンは俺のような人間には大きな感動を呼ぶ。とにかくお金にしか興味を持てない人、人間って結局のところ何なんだろう?と哲学的な気分に浸りたい人、負け惜しみだとわかっていながら金持ちになることが人間の幸せじゃ無いよね!と頑なに信じ続けている人、今がまさに崖っぷちに追い込まれている人等に映画崖はお勧めだ
崖 [DVD] | |
フェデリコ・フェリーニ | |
IVC,Ltd.(VC)(D) |
監督は前述したイタリアが生んだ巨匠フェデリコ・フェリーニ。映画史に残る名作を連発し続けた大監督。これが本当の青春だよね~と感じさせる青春群像、世界映画史に残る大傑作道、騙されても騙されても人を信じ続けることに大いなる人生賛歌を感じさせるカビリアの夜、現代ローマ(と言っても1960年の作品ですが)に生きる人間の退廃が描かれている甘い生活等がお勧めです。
にほんブログ村 映画ブログ
人気ブログランキングに参加しております。クリックお願いします
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます