褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 聖なる嘘つき(1999) 僕なんかは嘘ばかりついていますが

2014年09月24日 | 映画(さ行)
 先日だがロビン・ウィリアムズさんが自殺してしまった。大スターの地位を確固たるものにし、名優として輝き続けていた彼はなぜ自殺の道を選んでしまったのだろうか。富と名誉の両方を得ていた彼の人生は誰もが羨んでいたはずだが、彼の死は改めて人間の幸福って何だろうと考えさせられる。合掌。
 流石に多くの名作、傑作に出演しているだけにお勧め作品が多数だが、今回はそんな中でもあまり有名ではない?と思われる聖なる嘘つきを紹介しよう。

 俺なんかは決して嘘はつかないと心に決めたのに、今までの自分の人生を振り返れば嘘ばかりついている。もしかしたら俺が歩いて来た人生は全て偽りだったのだろうか。そんな俺と同じ苦悩を抱える人達に本作は大いなる癒しを与えてくれる映画だ。まあ、考えてみれば人間なんて誰もが嘘をついて生きている。他人から馬鹿正直者だと言われている俺ですら嘘をつき続けて生きているのだから、案外この世の中は嘘が存在することによってバランスがとれた世界なのかもしれない。

 
 ロビン・ウィリアムズが嘘つきの主人公を演じると聞けば、速射砲のごとき次から次へと口から出まかせの嘘が連発するシーンを想像してしまいそうになるが、嘘なんかついていたことを忘れそうになるぐらい感動してしまうストーリーとはいかなるものか。
 第二次世界大戦中のナチス占領下のポーランドのユダヤ人ゲットーが舞台。外界から隔離されていて、全く情報が入ってこないユダヤ居住区ゲットーでは、ユダヤ人たちはナチスドイツから虐げられ、ナチスドイツが連戦連勝で圧倒的に優勢だと信じ込まされていた。
 ある日の事、ひょんなことからユダヤ人のジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)はナチスドイツの司令部に呼び出されてしまう。彼は無人の部屋で偶然にもラジオの放送を聞く。その内容は意外にもナチスドイツが苦戦を強いられていることを意味する放送だった。
 早速ジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)はユダヤ人の仲間たちに、実はナチスドイツが苦戦していることを知らせる。絶望的な未来しか想像できなかった友人たちはジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)の話を聞いて、少しばかり元気を取り戻す人間も居た。ジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)の元にその後の続報を聞きにくる友人達に、彼はその後の情報など持っているわけがないのだが、彼らの明るさを取り戻しつつある表情にジェイコブ(ロビン・ウィリアムズ)は偽の情報をでっち上げ、もうすぐ戦争は終わり解放される日が間近に迫っている、なんて根拠の無い嘘を言い続けるのだが・・・

 ナチスドイツに占領されている時期のポーランドを描いた映画は多くあるが(戦場のピアニスト、シンドラーのリスト等)、その殆んどが暗くて重い内容ばかりで見ようとするだけで疲れてしまうが、その点では本作はロビン・ウィリアムズ主演映画ということもあり、笑えるし、テンポも良いし、非常に見やすい映画になっている。
 主人公の嘘によって、仲間達を元気にするという内容は多くの人の共感を得ることは間違いない。しかしこの映画の凄いところは同時に嘘によって更なる困難に陥ってしまう人も描いているところ。必死の思いやりのつもりで嘘をついていても、本当に自分の言っていることは周りを幸せにしているのか、実は不幸にしているのではないのだろうか、そんなジレンマに悩まされているのは主人公だけでなく、観ている我々にも問いかけてくるので、この映画は単に感動するだけでなく、ふか~い余韻を与えてくれるのだ。

 そして、この映画を観るともう一つわかってくることがある。人間が生きようとする気力はどこから生まれてくるのか、と言うこと。それは決して富や名誉、お金や権力を持つことではない。絶望という真っ暗な暗闇の中でも、ほんのチッポケな希望の光が薄っすらでも見えると、生きる気力が湧いてくる。本当に俺も全く誰の役にも立っていない嘘ばかり言ってないで、希望に満ち溢れる嘘を言ってみたいものだ。
 そして更に付け加えるとジェイコブ(Jacob)と言う名の主人公だが、その由来は旧約聖書に登場するヤコブ。非常に宗教的示唆に富んだシーンも多く出てくるので、少しばかりその方面も知識があれば、更に楽しめるだろう。
 前述したように嘘を言って後悔している人、他人から嘘つき呼ばわりされて悩んでいる人、それ以外にも嘘などついたことが無いと自信を持って言える人、そしてロビン・ウィリアムズのファンの人、ニュースで彼の名を初めて知った人、結局のところ映画聖なる嘘つきは万人にお勧めできる映画です

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