ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

肉を喰らわば『ブタがいた教室』

2017年08月04日 | 通信-音楽・映画

 今年(2017年)3月6日から一ヶ月半ほど介護施設の運転手というアルバイトをしていた。アルバイトはお年寄り達の送迎で、朝の約1時間半、夕方の約1時間半を拘束された。もちろん、昼間の空いている時間は、私は概ね畑仕事をしていた。
 バイトを始めてから2週間ほどが経った頃、日記を調べると正確には3月18日、その日はバイ先から畑へ行く前に家に寄ってパソコン作業をし、昼飯食って畑へ着いたのは1時過ぎ、駐車場から畑小屋までは30mほどあるが、車を降りてすぐにその存在に気付いた。畑小屋の傍に白い塊があった。私の畑にアヒルが迷い込んでいた。
 私が近付くとアヒルは逃げて行ったが、まだ畑内にはいた。彼(彼女かも)を放っておいて畑作業をし、午後4時にはバイト先へ。バイト先には友人の娘、もうアラサーとなったが今でも可愛いA嬢が職員として働いている。彼女を呼んで、
 「アヒル食べる?」と訊く。
 「何?アヒルって、鳥のアヒル?食べるの?」と逆に訊かれる。
 「もちろん食えるさ。畑にアヒルが迷い込んできたんだ。ここの料理人はアヒルを潰して捌けるかな?誰かできる人がいれば捕まえて持ってくるけど。訊いてみて。」
 それから2、3日経ってA嬢に訊くと、女性職員が20名ほどもいるが誰もアヒルを潰せないし捌けないとのこと。ということで、介護施設でのアヒル鍋は実現しなかった。
 ちなみに念のため、潰(つぶ)すは「食用にするために殺す」(広辞苑)の意で、捌(さば)くは「魚・鳥などを、切り開いて肉・骨などに分ける」(〃)の意。
     

 アヒルを、私も潰せない。いや、やろうと思えばできないことはないと思う。子供の頃に父が鶏を潰すのを見ている。父はそれを専門としているわけではないが、父の世代であれば多くの人が潰し方捌き方を見て知っており、経験しているのであろう。
 父は鶏を風呂場へ持って行き、逆さに吊るして首を切り、血を出して、お湯を沸かし、鶏をタライに入れ、沸騰したお湯をかけ、羽をむしり取った。ほぼ一部始終を私は見ていたが、それを気持ち悪いとはあまり思わず、料理された鶏は美味しく頂いた。
 そういえば高校2年生の頃、私はやっていないが、友人の数人が鶏を自分たちで潰して捌いて食っている。親しい友人の1人に久米島出身の男子がいて、夏休み、親しい友人数人で久米島へキャンプに行った。彼の祖父母が住む家の近くにテントを張って、何泊かした。その時、祖父母から生きた鶏を頂き、少年たちは鶏を潰し捌く経験をした。逞しい少年たちであった。私は部活の合宿があって一足先に帰ってその経験をしていない。

 今年5月、西原町立図書館から借りたDVD『ブタがいた教室』、それを観て、3月のアヒルを潰せる人がいない事件を思い出し、「命を頂くということ」について考えさせられた。スーパーへ行って肉を買う時、その肉が捌かれる前、潰される前の生きていた頃の姿を思い浮かべることはほとんど無い。でも、肉は間違いなく命だったのだ。
 『ブタがいた教室』では結局、自分たちで飼っている豚を潰して食べることはしなかった。子供たちが多くの思いを抱いて、討論しての結論だ。それはそれだけでも良き教育になったのだと思う。「美味しく食べている肉も元は命、それを食べられるのは感謝すべきこと」だと感じたはず。私も反省し、肉を喰らわば感謝も忘れないようにしよう。
     

 記:2017.8.4 島乃ガジ丸


ナカジロシタバ

2017年08月04日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 知られざる敵

 私はこれまでたくさんの動植物(約1300種)をガジ丸の島で紹介しているが、子供の頃から記憶力の弱い私はたぶん、その内の三分の一も覚えていない。植物の方はそこに立っていて、何度も目にすることができるのでその半分近くは何とか記憶に残っているかもしれないが、動物の、特に昆虫の方は動いていて、何度もお目にかかるということは少ないので、その多くが私の、物覚えの悪い脳味噌に記憶されていない。

 今回紹介するナカジロシタバ、写真を撮ったのは2014年7月6日午前7時27分、その日その時、私は畑にいた。その時が初めましてで、蛾の類であろうとは判ったが、もちろん、その時に何者かは知らない。後日、図鑑を見て何者かが判った。
 調べると、「幼虫の食草はサツマイモ」とある。「ぬゎにーっ!サツマイモを食うだとーっ!」と、説明文(下記の文章)を書きながら思った。サツマイモの害虫としてはイモゾウムシ、アリモドキゾウムシがよく知られているが、他にもいたわけだ。
 サツマイモの敵ということは、自給自足芋生活を目指している私にとっても不倶戴天の敵である。「蛾にも注意しないといけないなぁ」と気付かされ、「コイツのことは覚えておかなければ」と思ったのだが、しかし、全く記憶から失せていた。
 
 ナカジロシタバ(中白下翅):鱗翅目の昆虫
 ヤガ科 本州から南西諸島、アジア、他に広く分布 方言名:ハベル(ガの総称)
 名前の由来、資料が無く正確には不明だが、おそらく見た目から。中白下翅と漢字を充てたのは私の想像。中白は『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「後翅は黒褐色で基部から中央にかけての部分が白色」とあり、シタバはその「後翅は」からで、ナカジロはその「中央にかけて白色」から。つまり、「下翅(後翅)の中(中央)が白い」ということ。
 「沖縄や東南アジアではサツマイモの害虫として知られている」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とのこと。詳細は書かれていないが、おそらく、幼虫が葉を食害するのではないか。同書には「幼虫の被害は5~6月に最も多い」ともあった。
 前翅長15~17ミリ。成虫の出現は3月から11月。幼虫の食草はサツマイモ、ノアサガオ。私の写真は7月の朝、畑のバナナの葉、その上に止まっていた1匹。

 記:ガジ丸 2017.7.22 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行


アワダン

2017年08月04日 | 草木:中木

 アワダンの写真のプロパティーを見ると、撮った日時は2011年9月15日午後4時17分となっている。その日その時私は与那国島にいた。埼玉の友人Kと八重山与那国オジサン二人旅の初日だ。楽しい旅だった。「そうか、あれからもう6年も経つのか、光陰矢のごとしだな、まったく。あの世からのお呼びもすぐだな」と感慨にふける。
 アワダンを調べると、名前の由来が私の参考にしているどの文献にもなく不明。で、私得意の想像(妄想は大得意だが)で、「アワダンのアワは粟であろう」と判断。下にその写真を掲載しているが、小さな果実が100~150個ほどかたまって着いている。小さなブツブツ、それを粟に喩えたのではないかと想像した訳である。
 と想像しながら、「待てよ、俺は粟をそれと知って見たことがないぞ、何で粟がブツブツだと思ったんだ?」と考えて、「そうか、あれだ、粟おこしだ、ブツブツのお菓子だ」と閃いた。粟おこしは「粟で製したおこし種を、砂糖・水飴で固めた菓子」(広辞苑)のこと。粟おこしは私が子供の頃から沖縄にもあって、子供の頃から食べている。

 粟と言えば五穀の1つでもある。劣等生ではあったが、一応日本文学科を出ているのでそれくらいは知っている。粟の実が小さいものであることも、実物を見たことがないけれど粟粒という言葉から知っている。「きわめて小さいものにたとえ」(〃)のこと。
 アワダンのダンは、下記の説明文では真面目な想像をしているが、ここでは別に、弾ということにしてみよう。粟弾、きわめて小さい弾となる。北の太っちょが血迷って発射をし続けているミサイルがほとんど被害のない粟弾であることを祈る。あるいは泡弾でも良い。そう願う。植物とは関係ない話になってしまった。時節柄ということです。
 
 アワダン(あわだん):景観、防潮風
 ミカン科の常緑中木 与論島以南の琉球列島、台湾などに分布 方言名:アワラン
 名前の由来は資料がなく不明。ダンは檀と想像する。檀は紫檀、黒檀、栴檀など、材質の堅い樹木の名に使われる。本種が「材質は堅い」と書かれてある資料はないのだが、ミカン科であり、ミカン科の樹木には材質の堅いものが多いのでそうであろうと判断。アワについては粟と想像する。花は房状に着き小さい。果実も小さくて固まって多く着く。そのブツブツした果実を粟粒と見立てたのではないかと思われる。が、自信はない。
 高さは6mほど。葉はミカン科の多くがそうであるように良い香りがする。花は白色で小さい、開花期は12月から1月。果実は径5ミリ程度と小さく、食用にならない。
 寒さに弱いということで、分布も与論島以南とある。琉球列島では宮古諸島に多く見られるとのこと。耐潮、耐乾性があり、日向でも日陰でも生育する。
 
 実

 記:島乃ガジ丸 2017.7.27 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
 『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
 『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
 『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
 『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
 『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
 『熱帯植物散策』小林英治著、東京書籍発行
 『花卉園芸大百科』社団法人農山漁村文化協会発行
 『ニッポンの野菜』丹野清志著、株式会社玄光社発行
 『藤田智の野菜づくり大全』藤田智監修、NHK出版編
 『やんばる樹木観察図鑑』與那原正勝著、ぱる3企画発行
 『熱帯の果実』小島裕著、新星図書出版発行
 『熱帯花木と観葉植物図鑑』(社)日本インドアグリーン協会編、株式会社誠久堂発行
 『ハーブを楽しむ本』川口昌栄編集、株式会社集英社発行