ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

発明016 たたいまー

2007年04月27日 | 博士の発明

 シバイサー博士の研究所へ行くと、ジラースーが来ていた。研究室兼作業場としている部屋で、二人で飲んでいた。海に面した窓から月明かりが射していた。
 「やあ、二人で月見酒ですか?」
 「うん、あー、君もどうだ?」(博士)
 「はい、頂きましょう。」と私はコップを持って、二人の傍に腰掛けた。
 「ユーナには会ったか?」(ジラースー)
 「ユーナも来てるの?まだ、見てないけど。」
 「うん、ゴールデンウィークとかなんとかで、しばらくここにいるそうだ。」
 「じゃあ、ユクレー屋にいるんだな。明日にでも会うことにしよう。ところで、二人で何の話をしてたの?」」
 「俺の知り合いがな、悪い奴じゃないんだが、意志薄弱な奴でな、パチンコにのめり込んで、金を浪費して、給料の多くを使ってしまうそうなんだ。で、その女房にどうしたらいいかと相談されて、彼に意見したんだが、ちっとも聞かなくてな。それで今、博士にパチンコ依存症が治るような何か機械ができないかと相談してるんだ。」
 意志薄弱なその男は、自分の給料だけでは間に合わなくなって、サラ金から借りるまでになり、また、金を浪費するだけじゃなく、時間をも浪費して、毎日帰りが遅いのだそうだ。そのせいで、夫婦仲も険悪になっているとのこと。

 「で、博士、何か良いアイデアはあるのですか?」と訊くと、
 「あー、そうだな。」と、博士はジラースーの方を向いて、
 「前にチシャのために目覚まし時計を作ってやっただろう。時間が来たら、付属の鞭でパチパチと体を叩く奴。『めざパチ君』と名付けた奴だ。」
 「あー、それはずいぶん役に立ったよ。チシャがずっと使っていたよ。」
 「それはまだあるのか?チシャが持っていったのか?」
 「いや、チシャは早起きに慣れたからって、置いていったよ。だけど、今は無い。ユーナが来てからは朝寝坊の彼女に使わせていたんだけどさ、三日ともたなかったな。」
 「どういうこと?」(ゑんちゅ)
 「あいつ、朝は、特に起こされたりすると機嫌が悪いんだ。三日目の朝だったか、『コノヤロー、テメー、機械の癖に!』と大声がして、見に行くと、『めざパチ君』は床の上に叩きつけられたようで、ぺしゃんこになっていた。」
 「はあ、そういうのがあったんだ。で、博士、それをどうするんですか?」
 「うん、それに似たようなもんを思いついたのだ。時間が来ると叩いて注意することは一緒だが、それは目覚まし時計型では無く腕時計型となる。腕時計型といっても、手首では無く肘の上に巻く。時計板の裏に小さな突起があって、そこから電気が流れる。先の尖ったハンマーで叩かれたような痛さを感じるようにするのだ。」
 「そうか、家に着いていなければならない時間にタイマーをセットしておけばいいんですね。でも、痛かったら、すぐに外してしまわないですか?」
 「鍵が付いている。その鍵は女房が管理する。」
 「女房が外さない限り外れないってわけですか。そりゃあ効果ありそうですね。でも、何か正当な理由で遅くなった場合には困りますね。」
 「そうだな。鍵はパスワードでいいな。時間をセットして、腕に嵌めて、亭主に見られないよう女房がパスワードを入れるんだ。で、正当な理由であると女房が認めたなら、そのパスワードを亭主に教えればいいんだ。」
 「じゃあ、例えば、その男がパチンコをして、ついつい時間を忘れてタイマーがオンになったとしたら、腕を激しく叩かれるわけだ。それから慌てて家に帰ったとしても、その間はずっと叩かれ放しということだ。それはちょっと可哀想だな。」(ジラー)
 「いや、タイマーがオンになっても右手で抑えておけば電気は流れないのだ。離すとまたパチパチと叩かれるから右手は左腕を押さえたままになる。」
 「右手が使えないからパチンコもできないわけだな。」(ジラー)
  「依存症になるくらいの人なら、左手を使って続けるんじゃないですか?」
 「通っているパチンコ屋から家までの時間もまたセットしておくのだ。その時間になると、もう抑えてもパチパチは止まらなくなるようにする。」
 「それなら、もう帰らざるを得ませんね。完璧ですね。」
 「博士、それ良さそうだ。作ってくれないか。」
 「あー、作ってみよう。我ながら良いアイデアだ。」と博士は満足気に笑う。
 「よし、名前も思いついたぞ。叩くタイマーで、亭主が家に帰りたくような気持ちになるもんだからな。名前は『たたいまー』としよう。」

 そのタタイマー、アイデアは最高だったが、それが完成した頃には、件の夫婦は既に離婚してしまっていた。よって、使う人も無く。博士の倉庫に眠ったままである。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2007.4.27


高燃費障害

2007年04月27日 | 通信-社会・生活

 自分で言うのもなんだが、私は働き者である。生活の糧である仕事をし、炊事洗濯掃除の主夫の仕事をし、筋力トレーニングをし、畑仕事もしている。それら以外の時間も、このHPの記事を書いたり、植物昆虫を調べたり、写真の整理をしたりして、ほとんどの時間、机に向かっている。家の中でゴロゴロしていることはあまり無い。
 私は働き者であるが、金儲け者では無い。私の勤めている会社は零細企業なので給料が安い。ボーナスなんて1円も無い。よって、私の年収は、大学卒サラリーマン一年生の平均年収よりずっと低い。6割くらいだと思う。
 それでも、独り者なので、金にいくらかの余裕はある。その余裕は、安いアパートに住み、安い車を使い、少々の野菜を自家生産している、ことなどで捻り出している。
 その他にも捻り出す努力はある。私はほとんど外食しない。現場仕事の時も、弁当を自分で作って持って行く。酒以外の飲み物をほとんど買わない。水筒にお茶を入れて持って行っている。外へ飲みに行くのも、月一回の模合(相互扶助的飲み会)を入れて年に20回前後であり、隣に女が座ってくれる値段の高い飲み屋さんにはほとんど行かない。付き合いでしょうがなく行くことがあるが、それも2、3年に1回くらいである。

 そんなつつましい生活をしている私から、何と!金を借りる奴がいる。9万円も!
 9万円は私の三ヶ月分の食費にあたる。金を借りた奴は友人のM。彼は私の3倍ほどの年収がある。私からすればお金持ちである。そんな彼が、貧乏な私から金を借りる。
 Mには、家族の誰かが大病で金がかかる、誰かの借金の肩代わりをしている、などという特別な理由は無い。彼は最近まで私同様独身であり、今も子供はいない。なので、養育費教育費に金がかかるというわけでも無い。いったい何に金を使うだ?と思う。
  Mは収入以上の消費をしているわけである。生活に金がたくさんかかる。自分の生活を維持するのに、特別な理由も無く、私の3倍以上の燃料を必要としているみたいである。同じ距離を走るのに大量の燃料を消費するアメ車みたいだと思う。

 男にも更年期障害があるということを、私は漫画家”はらたいら”の話で知ったが、実は、更年期障害の症状を、私は40代前半という早い時期に経験している。一般的には、おそらく今の年齢(50歳前後)が男の更年期障害の出現する最も多い時期であろう。
 私の更年期障害で、私が最も強く感じたのは性欲の減退である。胸のときめくことが少なくなり、股間が疼くということも少なくなった。それを考えれば、今でも飲み屋に行って、姉ちゃんのおっぱいを揉むことが大好きなMは、更年期障害とは全く無縁みたいである。が、私は彼に、別の病名を付けた。彼は、「高燃費障害」である。

 高燃費障害から、話をちょっとエコの方へ飛ばすが、”ふらここ”の中村さんの記事の中に面白いのがあった。「なるほど、そうであるか。」と私も思った。
 「賢い主婦はスーパーで手前に並んでいる古い牛乳を買う」らしい。
 これに関連する話は次回。
          

 記:2007.4.27 ガジ丸


わざわざわざわい

2007年04月20日 | 通信-科学・空想

 何度も言っていることだが、私は幽霊、お化けの類の存在を信じてはいない。ではあるが、何か不思議なことが身の回りで起きたりすると、それらは取り合えず霊のせいということにしている。その方が楽しかろうと思ってのこと。

 その日は朝から変だった。その日というのは先々週の金曜日、ガジ丸通信で幽霊の話をアップした日。低級霊をバカにするようなことを書いた日である。
 朝起きて、くしゃみが2回続けて出た。これはそう珍しいことでは無い。その後、洟をかんだら鼻血が出た。鼻血なんて、記憶にあるのは高校生か浪人生の頃、鼻糞を穿っているときに爪で傷つけて以来のことなので、30年ぶりくらいのことになる。鼻血は左の鼻の穴からで、垂れるほどでは無かった。ティッシュを鼻の穴に突っ込んだら、その先に血がいくらか付いているといった程度。でも、意味不明の鼻血。
 ティッシュを鼻の穴に突っ込んだまま朝飯の準備をする。その日はスパゲッティー。麺を茹でている間に、お茶を入れる。そのお茶をティーバッグに入れる際、茶筒を落としてしまった。床に大量のお茶が散らばった。
 散らばったお茶を放って置いては料理ができない。掃除機で吸い取る。抹茶入り玄米茶だったので、細かい抹茶の粉が掃除機だけでは吸い取れない。拭き掃除もする。そうこうしているうちに、茹で時間12分のスパゲティーが14分となってしまった。慌ててスパゲティーをざるに移し、お碗と皿を準備し、インスタントスープを皿に入れる。お湯を注ごうとした時に、皿と碗を間違えたことに気付いた。

  あたふたした朝であった。あたふたはしかし、老化現象の現われくらいに思っていた。ところが、その日の夜、ワサワサした雰囲気に何度も起こされ、午前2時、これまで味わったことの無い変調を体に感じた。体では無く、体の内部にあるものが小刻みに震えている。長い間震え続け、私はびっしょり汗をかいている。
 バカにされた低級霊が私を懲らしめようと、憑依しに来たのかもそれないと思って、最初は怖かったのだが、「それなら、それでいいや」と開き直ったら、怖さは消えた。怖さが消えたら震えも治まった。汗でTシャツとパンツが濡れていた。

 それから1週間経った先週の金曜日、寝ている間に、ベッドの上部にある柱の角に頭を強く押し付けて、その痛さで目覚めるということがあった。手で触ると、頭頂部に5センチくらいの長さで深い溝ができていた。時計を見る。前週と同じ午前2時。
 目が覚めなかったら、出血していたかもしれない。低級霊をバカにして、わざわざ災いを呼んでしまったようだ。触った神の祟りということだ。しかし、怪我までするということになると、「それなら、それでいいや」と済ますわけにはいかない。といって、見えないものを追い出す術を私は知らない。どうするオジサン、ということで今回は反省文。
 反省しました。私に取り憑いているモノがいたとしたら、もう出て行ってね。
          

 記:2007.4.20 ガジ丸


瓦版028 怠け者の悪魔

2007年04月20日 | ユクレー瓦版

 良い風が吹いていたので、ケダマンと二人で浜に出て、満天の星屑と海風を肴にちょいと一杯やって、暗くなってからユクレー屋へ行った。その日、客はいなかった。ウフオバーの姿も見えなかった。マナが一人、カウンター席にポツンと座っていた。
 「やー、三十女の淋しげな後姿だぜ。」と、店に入るなりケダマン。
 「あっさもう、どこ行ってたのさ。今日はずっと暇だったさ。」
 「客もいないようだけど、オバーもいないみたいだね。」(私)
 「うん、夕方、勝さんたちが来てね、良い風が吹いているから浜に出てモー遊びしようって、オバーを連れて行ったんだ。」
 モー遊びとは、モーアシビと発音し、昔のオキナワの風習の一つ。主に農村で、若い男女が集まって夜通し唄い踊って遊び明かしたものを言う。そこから男女の怪しい関係が生まれたりした。むしろ、男女の怪しい関係が生まれることを目的としたものと言っていいかもしれない。今で言う合コンみたいなものである。なので、”若い”男女が集まるのである。まったく”若く”無い勝さんやウフオバーではその目的とはならない。ただ、若かりし頃を懐かしんで、昔語りなどをしたいということなのであろう。

 「モー遊びって合コンのことなんだ。勝さんたち、もう70歳を過ぎているよね。にしては元気だよね。合コンかあ、いいなあ。」
 「男にはもう懲りてるんじゃないのか?」(ケダ)
 「そんなことないよ。3番目の人は良い人だったんだよ。死んじまったけどね。あんな人にまた出会えたら、一緒になりたいと思うよきっと。」
 「三度目の正直で、やっと幸せになったと思ったら死んじまったんだろ。この先、合コンして良い男に出会ったとしても、幸せになれるかどうか怪しいぜ。」(ケダ)
 「まったくあんた、酷いこと言うね。私に明るい未来は無いみたいじゃない。でもさ、自分でも思うのさ。不幸なことが続いて、子供まで死なせたときはさ、私、悪魔にでも魅入られているんじゃないかと思ったよ。」
 「今はどうなの?幸せを感じてる?」(私)
 「うん、何となく。これが幸せっていうものかしらなんて感じてるよ。恋人はいないけど、あんたたちみたいな友達がいるからね。」
 「そう、なら、悪魔に魅入られているなんてことは無いと思うよ。」(私)
 「だよね。うん、一安心。・・・でもさ、悪魔ってホントにいるの?」

 その時、ざわざわと波打つような風がさーっと流れ込んできた。そして、
 「俺のこと、呼んだ?」と声がして、私の隣の席に黒いものが座った。マナの目の前である。そのマナ、一瞬意識をなくしたように凍り付いていたが、
 「あ、悪魔だ・・・。」と小さく呟いた。さすがに、我々マジムンの姿に見慣れているせいか、大声で叫んだりはしないが、表情は少し強張っていた。
 私の隣に座った黒いものは、確かに、マナの言うとおり悪魔の一人、でも、彼は我々のよく知っている悪魔であった。名前をグーダと言う。

 「あれまあ、何とも久しぶりじゃないの。」と私が声をかける。
 「やー、ホントに久しぶり。20年ぶりくらいか?そっちも覚えているよ、ケダマンだよね?昔、2、3度ばかり会っているよ。」
 「うん、俺も覚えている。でも、普段、姿を見せないのに、珍しいね。」
 「姿は見せないけど、この辺りはしょっちゅうブラブラしているよ。私の管轄になっているんでね。さっき、たまたま傍を通ったら、悪魔って呼ぶ声がしたんでね。久しぶりに酒でも飲むかと思ったのさ。ところで、こちらのお嬢さん、私は初めてだね。」
 「あー、この人、マナって言うんだ。この島に来て1年ちょっと。」
 「マナさんっていうの、驚かせて悪かったね。」と、グーダがマナに挨拶する。硬くなったままの顔の筋肉を必死に動かして、マナも笑顔を見せる。そして、
 「よろしく・・・って言っていいの?何か悪いこと起きない?」と私に訊く。
 「大丈夫だと思うよ。この人、怠け者で有名なんだ。悪魔の仕事をほとんどやらないんだ。あんまり深く付き合うと、怠け者が染る可能性はあるけどね。」
 「でも、何て言うか、悪魔って、ホントに悪魔の格好してるんだ。」と、少し安心したマナは、今度はグーダの方に向かって言う。
 「この格好は、私の意志では無くて、人類の概念で作られたものだ。多くの人間たちが想像する悪魔の格好というわけだ。怖いもの、おぞましいもの、気味の悪いものにしたいんだな。元々、私に決まった形というものは無いよ。」
  「でも、そういえば、服を着てるね。普通はそうじゃないよね。」
 「服ね。これは私のささやかな抵抗だな。何でも言う通りにはならないぞって。」
 「仕事をしないのも抵抗なのか?」とケダマンが訊く。グーダがそれに答える前にマナが口を挟んだ。
 「仕事って、悪魔の仕事ってどういうものなの?」
 「人の心に巣食う悪い部分を助長するってことが主な仕事となっている。」
 「あー、何となく解る。悪魔の囁きってことでしょ?」
 「まあ、そういうこと。だけど、今の世の中、悪い部分を助長しなくても、悪魔のような行動をする人間が増えているし、私が働かなくても済んでいるよ。」
     

 などという話をしながら、グーダは泡盛の水割りをグラス一杯飲み干して、
 「私も最近暇だし、ここにはベッピンのお嬢さんもいるし、これからはちょくちょく顔を出すよ。」と言い、それからマナの方を見て、
 「君の不幸は悪魔のせいじゃないよ。君の歩いている道がそういう道なんだ。道は生まれる前から用意されているものだ。まあ、生き続けていくことだな。死ぬ時には自分の歩いてきた道がどういう意味を持ったものかが解るかもしれないさ。」と、悪魔には似合わない真面目な言葉を残して、そして、再び闇の中へ、スーッと消えて行った。

 語り:ケダマン 2007.4.20


発明015 ソウジマン

2007年04月13日 | 博士の発明

 先週末、いつものようにケダマンと並んでユクレー屋で飲んでいると、マナが、
 「ねぇ、この時期になるとさ、オキナワでは海開きなんてやってるけど、ユクレー島ではそんな行事無いの?」と思い出したように言った。
 「海開きって、海はいつでも開いてるよ。」(ゑんちゅ)
 「じゃなくてさ。今日から海で泳いでいいよ、って日よ。」
 「じゃあってさ。ここの海はいつでも泳いでいいってことだよ。」(ゑんちゅ)
 「海水浴の季節が来たよって日があるんだよ、オキナワには。」
 「海水温の関係だろ。泳げる温度かどうかは個人の感性に拠るだろ。そんなの、役所が決めることじゃないだろ。個人に任せればいいんだ。」(ケダマン)
 「水温はその年によって違うからさ、泳げる温度かどうかじゃないのさ。初めに日を決めて、その日に向けて浜を掃除して、海水浴の季節になったぞーって日なのさ。」
 「役所が泳いでいい季節だよって言わないと、泳いでいいかどうか判らなくなっているのか、今時のウチナーンチュは?」(ケダ)
 「分らない人、いや、マジムンだねぇ。儀式なのさ。だから、掃除もするのさ。」
 「あー、なるほど、掃除をしなくちゃあ泳げない海なんだ。」(ケダ)
 「そういうわけでも無いけどさ。まあ、ちょっとは必要だね。・・・あー、そういわれれば、この島の海や浜はいつでもきれいだね。」
 「あー、そういえば、オキナワの海は、海の中も泥やゴミが溜まっているが、浜はだいぶ汚れているよな。ゴミが散らかってるよな。」(ケダ)
 「そうなんだよ。だから掃除が必要なんだよ。あっ、だからさ、何でここの海はいつもきれいなの?いつも村の誰かが掃除してるの?」
 「まあ、先ず、汚す人がいないからだろ。」(ケダ)
 「うん、それも確かにあるけど、村の人が汚さなくたって、ゴミは海から流れてくるから、放っておくとユクレー島の浜も汚くなってしまう。」(ゑんちゅ)
 「あー、じゃあ、やっぱり村の誰かが掃除してるんだ。」
 「そ、」と私が言いかけたら、ケダマンが横から口を出した。
 「あっ、思い出した。俺知ってるぜ。博士の発明したロボットがあったんだ。確か、ソウジマンって名前だった。実物は見たこと無いが、昔、博士から話は聞いた。浜辺を掃除するロボットだ。ちゃんとゴミの分別もしてくれる優れモンらしいぞ。」
 「あー、そうなんだ。そのロボットが密かに掃除してるわけね。」

 ソウジマンについては、私もだいぶ前に博士から話を聞いている。室内を大掃除する大掃除機スップルの発明よりもずっと旧い発明品である。ソウジマンは室内で無く、浜辺を専門に掃除するロボット。ケダマンの言う通りちゃんとゴミの分別もしてくれる。分別は生ゴミ、燃えるゴミ、プラスチック類、金属類、ガラス類などを認識するらしい。そこまで聞くと、確かに優れモンである。その時の博士も自慢げに語っていた。
  「これ一台あれば、この島の浜はいつでもきれいだ。太陽電池で動き、分別してくれるので環境にも良い。浜がきれいになって、環境に良くて、私は私のノウジマン(脳自慢)ができる。掃除機は三文の得ってわけだ。ハッ、ハッ、ハッ」と高笑いした。
 「博士、掃除機は三文の得って、正直は三文の得のシャレですか?でも、それ違いますよ。早起きは三文の得ですよ。」と私が真面目に言うと、
 「あー、そうだったっけか。まあ、そう細かいこと言いなさんな。」とまた笑う。

 ところが、その後、このソウジマンが島の浜辺で活躍しているのを私は見なかったし、そんな噂も聞かなかった。後になって、村の人に話を聞いたところ、
 「あー、あれ。あれはダメですよ。物の分別はちゃんとやるんですが、その物がゴミなのかそうでないのかを分別することができないですね。浜辺に置いてある必要なもの、例えば、海水浴や釣で使う道具、ボートを繋ぎとめる杭なんかも、ゴミと一緒にしてしまうんですね。我々はバカ掃除機と呼んでましたよ。」
 元々、ユクレー島の浜辺は、汚す人がいないし、村の人たちがいつもきれいにしているから、ソウジマンの必要もあまり無かったみたいである。数日後には、博士にソウジマンの撤去を村人たちが要請したとのことである。
 掃除機もバカ正直だと、損をする、ことになるのであった。
     

 記:ゑんちゅ小僧 2007.4.3