ここ数年、映画を観に行くことが減った。年に2~3本となっている。首里から宜野湾市我如古へ引っ越してからは、那覇に出ること自体億劫になっている。那覇にある実家へ週に1回、窓を開けたり、ベランダの鉢物に水をやったりしているが、それも面倒に思っている。畑に出る方がよほど増し、と私の心と体は感じているようだ。
映画を観に映画館へは行っていないが、その代わりというか、宜野湾市立図書館でDVDやビデオを借りて映画は観ている。ここ最近は特に戦争関連を多く観た。
『激動の昭和史 沖縄決戦』もその一つ。
ビデオの裏表紙に映画の紹介文がある。そっくりそのまま引用すると著作権に関わるかどうか不明だが、映画の宣伝にもなると思うので許していただきたい。
「1945年4月1日、米軍は沖縄を強襲した。海の色が見えなくなるほどの上陸用舟艇が嘉手納海岸に殺到する。日本軍にはもはや、これに対抗できる戦力はなかった。不沈戦艦と謳われた大和が特攻し、爆弾を抱えた戦闘機が米艦へ体当たりする。地雷をかかえ、戦車の前に身を投じる学徒兵。追いつめられたひめゆり部隊の集団自決・・・。沖縄の悲惨な戦いを再現した戦争映画超大作。」・・・流れはだいたいその通り。
沖縄島上陸の数日前、3月26日に米軍は慶良間諸島に上陸し、地上戦はそこから始まる。既に大本営は沖縄を見棄てており、主力部隊を沖縄から引き上げている。沖縄戦は本土決戦を免れるための時間稼ぎと位置付けていたのだ。
映画は慶良間諸島の集団自決を描き、以降、各地で悲惨な戦闘、殺戮される日本兵や沖縄民間人、自決を余儀無くされる人々を描き続けて行く。人々が死んでいく、人々が死んでいく、人々が死んでいく、画面の多くはそうであった。
仲代達矢演じる高級参謀が、「勝てない戦、沖縄玉砕覚悟の時間稼ぎ戦」にそれでも一所懸命作戦を考える。考えながら彼にはずっと虚無感が漂っていた。それが印象的。
東宝の製作で1971年7月に公開されている。監督は岡本喜八、脚本は新藤兼人、二人とも、私でも知っている有名な映画監督。出演者もまたオジサン年代にとってはオールスター総出演みたいで、小林桂樹、丹波哲郎、仲代達矢、加山雄三、酒井和歌子(可愛かったなぁ)、大空真弓、池部良、神山繁、岸田森、地井武男などなど。
逃げた前知事に代わって赴任した島田知事(神山繁)、司令官牛島中将(小林桂樹)などは死を覚悟しての沖縄で、真摯に職務を遂行する。彼らには誇り高き侍を感じる。誇り高き侍であり、沖縄の行く末までも案じた海軍陸戦隊司令官大田少将(池部良)や、一緒に死なせてと言う女学生たちを追い払って自決した一兵士(地井武男)などはチムグクル(人を思いやる心)も兼ね備えた日本人だ、日本の良心を感じさせる。
映画はまた、日本兵による集団自決の強要も描き、沖縄人に対する日本兵の酷い仕打ちも描いている。島田知事や大田少将、地井武男演じる一兵士らの生き様が史実であったかどうかは確認不要。日本の良心は今も昔も存在し、日本の悪心だっていつの世にも存在する。岡本喜八が日本の悪心も描いていること、それ自体が日本の良心とも言える。
記:2012.7.27 島乃ガジ丸
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄の戦争遺跡』沖縄平和資料館編集、沖縄時事出版発行