私の勤める会社は長引く不況で仕事が激減した。時短ということになり、私は現在週休五日制となっている。元々半月給制(数万円の基本給プラス出た日数分の賃金)の私は、週に二日だけ働くとなると、月給10万円あるかないかとなる。
そんな私に「プロとしての自覚はあるか?」と問われると、「ある」とは言えない。それは、月給10万円しか貰っていないからでは無く、週に二日しか働いていないからだ。言い訳になるが、週に二日だと、客に対しプロとしての誠意が尽くせないのだ。
そんな私も、4、5年前までは週休三日制で、忙しい時は残業をし、休日出勤もした。客に対しプロ(未熟だったかも知れないが、気持ちはそう)としての誠意も尽くせた。客が何を望んでいるかを考え、家に帰ってからも努力していた。プロならば、客が望んでいることに的確な対応(肯定するにせよ、否定するにせよ)をせねばならない。たとえ力が及ばなくとも、何とか「お客さんのために」と努力することが必要であろう。
父が残した借金の相続手続きが手間取っている。手続きに取りかかったのは父の四十九日が済んで間もなくのことだから、もう二ヶ月近くが過ぎている。でもまだ「これで大丈夫」と確信できる状態には無い。手間取っている原因は私では無く銀行側にある。いや、堪忍袋の緒がゴムでできているらしい私にも多少はあるかもしれない。
「こういった書類が必要です」と最初に銀行側に言われたのは、相続届け(相続人三人と保証人の署名と捺印を要する)、被相続人(父)の戸籍謄本、相続人三人の戸籍謄本と印鑑証明、保証人となっている叔父の印鑑証明の9種。姉の戸籍のある静岡に連絡し、弟のいる千葉に連絡し、書類のやり取りやら戸籍謄本などを送って貰って三週間後、それらを揃えて銀行に持っていく。すると、「相続代表者の所得証明も必要です」と言う。
堪忍袋の緒がゴムでできている私は、その程度ではちっとも怒らない。「私は低所得者ですが?」と訊くと、「それじゃあ、弟さんの所得証明書も必要となります」と答える。で、自分の所得証明書を取り、弟に連絡して所得証明書を送って貰う。その際、弟が別のものと勘違いして、送るのが遅れてしまった。前回から二週間が過ぎてしまった。
言われたものを揃えて銀行へ行く。すると、「公庫の手続きにおいては、各証明書の有効期間は一ヶ月です。よって、前回揃えて貰った書類は無効となります。取り直す必要があります。」とのたまう。堪忍袋の緒がゴムでできている私は、「そういう大事なことは最初に言わんかい!」と腹は立ったのだが、それでも怒鳴ったりはしない。静かに微笑みを浮かべて、「戸籍謄本やら只ではないですよ、もう何千円も使ってるんですよ。何度も役所行ったり、銀行へ来たり、時間も使ってるんですよ。」と少しだけ棘を刺す。
後日、各証明書を再度入手するため市役所へ行く。そこで問題発生。アメリカへ住所を移した姉の印鑑証明が取れないのだ。銀行に相談すると、「印鑑証明が無ければ相続人にはなれません、相続届けは作り直しです」と言う。一からやり直しってことだ。さらに、「全員の住民票も必要でした」などと平気な顔でほざく。「必要な書類は最初に全部提示しろよ!お前らそれでもプロか!」と怒鳴りたくなったが、ぐっと我慢する。
後で思ったのだが、怒鳴らないから私は甘く見られているのかもしれない。いや、あるいは、私が貧乏人だからバカにされているのだろうか。・・・どっちだ?
記:2010.8.27 島乃ガジ丸