頭の中は魑魅魍魎

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『私の旅に何をする。』宮田珠己

2013-06-13 | books
ずっと前から気になっていたのだけれど、脱力具合がまだ俺には早い。こんなものに手を出してはならぬと思っていた宮田珠己ことタマキング。

ついに禁断の果実を口にしてしまった。脱力系&爆笑系旅エッセイ。(爆笑系があるのなら、苦笑系とか嘲笑系があるということになるけど気にしない)

サラリーマン時代の私は、年三回の大型連休には必ず有給をくっつけてぐいぐい引き延ばし、いつも海外旅行にばかり出掛けては、上司に「たいした根性だ」とスポーツマンのようによく褒められた。幸運にも私の上司はできた人で、私がいくら休もうが黙って旅行に行かせてくれた。帰って来てお土産を渡しても廊下で挨拶してもまだ黙っていたほどだ。(10頁より引用)

うまいっ。

すごく好きな箇所はこれ。ヒマラヤトレッキングでは洗面器のお湯一杯だけでシャワーの代わりにしないといけない。

たとえお湯があっても夜中は寒いので、なるべくなら太陽の出てる時間帯に、光を浴びながら体を洗いたい。しかも優先順位をつけるなら髪に次いで洗いたいのは、断然やはり私の魅力な股間であり、まあ魅力的かどうかは判断の分かれるところだけれども、せっかくお湯を買った以上は、頭や手足だけでなくて股間にも何とかアクセスしたいところである。しかし宿に個室はなく、昼間しかも日のさんさんと当たる場所で、ということになると魅力的な股間問題は意外と重要なのだ。(30頁より引用)

ただ単に股間を洗いたいということを、言い方を変えるだけで全然違うことに変えてしまう。電車の中で吹き出してしまった。

旅における失敗が基本的に話の中心になるのだが、読者としては

1.基本的に自分の旅情報としては役に立たない。
2.基本的にそこへ行きたくなる気にはさせない。
3.基本的に笑える。

基本的に、笑えるエッセイのネタがたまたま旅になっているという感じすらする。笑えるもの、ネタそのものよりも駆使する言葉の巧さによりものだと思う。

それでは、本文が少なめの時に登場する、今日の一曲

最近一過性脳虚血症との報道があった飛鳥涼=ASKA。葛城ユキの「ボヘミアン」は実は彼の作詞だったそうだ。そのASKAが歌う「ボヘミアン」



ASAKA特有のうねるような声の使い方。ええ。じつにええ。一応、ボヘミアンと旅人は似てるかなということで。

では、また。

「私の旅に何をする。」宮田珠己 幻冬舎文庫 2007年(単行本旅行人2000年)

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4 コメント

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Unknown (midori)
2013-06-13 16:21:20
こんにちは。
続けてのコメントですみません。
もともと旅エッセイが大好きで、とにかく旅本ばかりを探して読んでいた数年前に『わたしの旅に何をする。』で爆笑!ハマりました!
宮田さんの本、読んだのは今7冊位ですが、もうどれもこれもぐふぐふ笑いが止まりません!わたしは真面目ですよ感溢れた淡々とした文章の中にある度々吹き出してしまう可笑しさが凄く好きです!ツボです。

あのぉ、勝手にオススメしてすみません‥片桐はいりさんのエッセイ本もとてもユニークで面白いです!三冊読んだのですが、旅の事、映画撮影で行った外国の事、映画館でもぎりをしていたエピソード等々どれもユーモアがあってとても良かったです!

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こんにちは (ふる)
2013-06-15 14:52:03
>midoriさん、

知り合いで旅行は大好きなのに、旅行本には全く興味がないという人がいます。
私は旅行も旅行本も好きですが、旅エッセイは「軽すぎて面白くない」という偏見があってほんの少ししか読んでいませんでした。
タマキングは「軽すぎるのに面白い」ものがあるのかと私の閉じたままの眼を開いてくれました。

片桐はいりさんは、顔面のインパクトが強くてエッセイのイメージがありませんでした。情報ありがとうございます。今度チェックしてみます。

旅エッセイと言えば、ムラマツエリコさんとなかがわみどりさんのユニット、k.m.pによるものが面白かったです。
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Unknown (midori)
2013-06-15 20:15:38
こんばんは。残念ながら私自身はまだゆっくり旅行に行ける機会に恵まれないので今は読書を通して世界を想像し思いを巡らせられる本に出会えることがとても嬉しいです! でもいつか旅行に出掛けられたらその時は私もきっと旅行も旅行本もどちらもとても好きだろうなと思います!あの、ちょっと脱線してしまいます‥、普通に語りながらも面白さ満載の宮田さんですが、松田龍平さんの台詞の言い方も普通なのに可笑しくって最近とても好きな俳優さんです。淡々とした感じなのに面白いというのがツボのようです。
ムラマツエリコさん・なかがわみどりさんのエッセイ‥是非読ませて頂きたいと思います。また楽しみが増えました!ふるさんありがとうございます。

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こんにちは (ふる)
2013-06-17 15:01:05
>midoriさん、

昔、沢木耕太郎の「深夜特急」や小田実の「何でも見てやろう」を読んだときには、あーあそこに行きたいここに行きたいと思ったのですが、最近は旅本を読むとそこに行ったような気になってしまって、それがいいことかどうか不明です。

松田龍平さんの飄々とした喋りと雰囲気はおっしゃる通りいい味ですね。お父さんとは全然違う味です。
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