頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ミレニアム5 復讐の炎を吐く女』ダヴィド・ラーゲルクンツ

2018-02-11 | books
シリーズ3作を書いた後、亡くなったスティーグ・ラーソンに変わって、まさかの続編「ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女」を発表したダヴィド・ラーゲルクンツ。そして、第5作がこれ。

いきなり、リスベットは刑務所にいる。バングラデシュからの移民の子、ファリアは、ギャングのメンバーのベニートからしょっちゅう暴力を振るわれていた。リスベットは刑務官に抗議するが、ベニートが刑務所のドンのような状態になっており、うまくいかない。ファリアを救うために、リスベットは・・・リスベットの所に、老弁護士が面会に来る。ずっとよくしてくれていたパルムグレンがリスベットの子供時代について情報を持って来てくれたのだ。ミレニアムシリーズの第2の主役、ミカエル・ブルムクヴィストにその件を調べてくるよう頼む。それは、おぞましい人体実験だった・・・

うーむ。久しぶりに、真夜中に4時間連続で、読書してしまった。特に下巻に入ってから、止まらなくなってしまった。ノンストップ・リーディング。ノンストップ・ラヴィングユー。

段々と明らかになる「ドス黒い過去」+「よーく描けてるなー、のキャラ立ち感」+「この人どうなるのだ?のドキドキ感」+「こういう話って本当にあるよな?のリアル感」+「読後の爽快感」

私が小説に求めているものが、すべてここにあった。

余談:

作中登場する心理学者ヒルダ・フォン・カンテルボリの論文をミカエルが読む。その内容がちょっと面白かった。

「親は子供の発育に決定的な役割を演じたと思っているが、それは思い上がりである。人の運命を決定するのはその人独自の環境。誰とも共有していない、自分で探してくる環境、自分のために作る環境。たとえば何か面白いこと、心を奪われることが見つかると、それによって人生が決まったりする。人はみな、自分の遺伝子を開花させてくれる出来事や活動に引き寄せられる。逆に怖いもの、不快なものからは逃げる。こうして出来上がった独自の環境のほうが、我々を取り巻く広い意味での環境よりも、人の性格に影響を及ぼす」

「氏か育ちか」、先天的VS後天的、遺伝か学習か。以前からずっとどっちが優勢なのだろうかと思っていた。どちらかが優勢なのかではなく、生まれつき遺伝的なことと、後天的に学習すること双方の狭間(混ざりあった所)、先天的に好んでしまう色々なオプションと、その中から(後天的に?)選んでしまう選択肢の一つから、我々は出来上がっているのかも知れない。

先天と後天の狭間か・・・イカ天とゴボ天の狭間には何があるのだろう・・・

ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 上 (早川書房)ミレニアム 5 復讐の炎を吐く女 下 (早川書房)

今日の一曲

作中、養父に虐げられながらも、ギターに出会い、夢中になることで人生を変えることが出来たダニエルがラジオでたまたま聴いて衝撃を受けたのがジャンゴ・ラインハルト。ロマ(ジプシー)で、火事で左手が不自由になり、左指三本だけで演奏するギタリスト。(私ももちろん知らなかった)Django Reinhardtの演奏している動画。



左指三本(実質は二本)でギター弾けるなんて・・・やる気さえあれば、なんでもできるじゃんかよ。つまらないことでうじうじしてんじゃねえよと思わせてくれる(最近色々あって、うじうじしてたのよ、あたし)では、また。
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2 コメント

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あら (みゆき)
2018-02-11 17:17:54
ふるさんもでしたか。
私もいろいろ重なってウジウジしてましたが、やっと今日吹っ切りました。
今は佐藤正午の本を片手に一杯やってるところです。
ふるさんのレビュー見てから遠田潤子と佐藤正午の本を買い集めましたが、ナカナカ読む時間が取れなくて…。
海外物はちょい苦手ですが、ふるさんのお勧めなので今度読んでみようかな。
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こんにちは (ふる)
2018-02-12 20:25:17
>みゆきさん、

「ミレニアム」シリーズは、ここ10年で出た小説の中で、ぶっち切りで最も面白かった、ベストオブベストです。第5作から読んでも楽しめますが、未読なら第1作から読み始めることをオススメします。
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