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ITミステリー『ビッグデータ・コネクト』藤井太洋

2015-05-30 | books
コンピューターウィルスの作成、拡散に関わったとして逮捕された武岱(ぶだい)は犯行を否認し続け、結局無罪放免になった。しかしマスコミから受けたバッシングのことは忘れていない。

大津で建設中の官民複合施設「コンポジタ」のシステム開発をしている技術者が誘拐された。その技術者の切断された指の写真がメディアに送られた。京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、武岱に捜査協力を求めることにした。IT技術者の仕事の過酷さとは、犯人の動機は…

おっと。「オービタル・クラウド」「アンダーグラウンド・マーケット」もかなり面白かったけれど、これもまた違う方面から面白い。

ミステリーとして、かなり細かい。リンカーン・ライムが微細な物的証拠を積み上げていくように、サーバー上の証拠が積みあがっていく(IT的な証拠ばかりじゃないけど。) テクニカルな捜査の描写がかなり詳しい。

この小説を読むと、システムエンジニアになろうとする人がいなくなってしまうのではないかと心配になるくらい過酷な仕事が描かれている。「ビッグデータ」を収集するということの裏側にどういうことがあるのか、なんてことも大いに考えさせられた。

しかし「ITミステリー」としてこれがデファクト・スタンダードになってしまうと、レベルの高い作品が出てくるという期待を持てるとも言えるし、このレベルの作品でないと満足できなくなっていまうとも言える。それほどのレベルの高さだった。

ビッグデータ・コネクト (文春文庫)

今日の一曲

本とは無関係に。ウクライナのピアニストの速弾き。Lisztの"La Campanella"



では、また。

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