「さよならドビュッシー」中山七里 宝島社 2010年
第8回このミステリーがすごい!大賞受賞作。遥は親を失った従姉妹のルシアと家族とともに暮らす。火事でさらに、遥は火事で自分の祖父と従姉妹を失う。ピアニストになるために入ったばかりの学校。しかし皮膚移植をしたばかりで体を動かすことすらままならない。新進気鋭のイケメンピアニストの助けを借りてピアノの腕を上げようとしていると、さらに身辺がきな臭くなってくる。起こった事件とそしてこれから起こる事件。どう解決していくのか。
ふむ。遥のピアニストとしての成長、葛藤と殺人事件の解決が二本立てで進む。悪くない。ラストの解決は特にミステリーとしての王道というか実にミステリーらしい落とし方で気に入った。ピアノとか音楽に関しては最近読むことが多いので読み飛ばしてしまったが。
35頁の爺さんの台詞が実に良かった。
「(途中略)ほれ、コスプレとかいったか珍妙な扮装して物語の登場人物になりきるのが流行っとるだろう。あれもそうや。みんな、今の自分がよっぽど嫌いなんや。きっと自分ではない誰か、ここではないどこかを望んでおるんやろうなあ。そう言やテレビで流れている歌はどれもこれもお前は特別だの、違う自分を探せだの呆けた台詞の大合唱だ。ただな、わしの考えでは、これが欲しいあんな風になりたいとかの希望やら願望は果実みたいなモンや。若いうちに食せば滋養にも美容にもなろう。しかし時を経れば果実は傷み、腐る。腐った果実は毒素を持つ。当然それを食し続けるものは腹の内から蝕まれていく。そして現実と喧嘩する力を失のうていく。それにな、どんなに美味しくとも腹いっぱい以上食べれば腹を壊すのは道理や。人にはそれぞれ果実を食していい限度が予め決められておって、それを分と言う。分を弁えん者の末路はたいていが自滅や」(35頁より引用)
うーん。これを読んで鋭い、そして痛いと思ったのは私だけだろうか。
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その作品は知らなかったです。
出たばかりの本のようですね。
情報ありがとうございます。
私も昔は時代小説がとても苦手で全く読まなかったのですが、
いつからか大好物になっておりました。さびぬきの寿司を
食べていた子供が、いつからかわさびが入っていない寿司なんて
食えるかと言っているようなものでしょうか。
ちなみに高橋由太さんと共に第8回このミス大賞の隠し玉に選ばれた七尾与史さん(古井盟尊さんより改名)の『死亡フラグが立ちました!』が7月6日発売のようです。ストーリーは“死神”と呼ばれる暗殺者のターゲットになると、24時間以内に偶然の事故によって殺される――。特ダネを狙うライター・陣内は、ある組長の死が、実は“死神”によるものだと聞く。事故として処理された組長の死を調べるうちに、他殺の可能性に気づく陣内。凶器はなんと……バナナの皮!?という内容のようです。
こちらこそお久しぶりです。
隠し玉の方が売れるというのはなかなか面白いですね。
また、「死亡フラグが立ちました!」は落語の死神のような話
かと思ったら、全く違いましたね。凶器がバナナの皮ということは、
滑って転んだと見せかける他殺ということですか。なるほど。面白そうですね。
こちらこそごぶさたしております。
なぜか最近一気読みができなくて、一気読みできたアパパネさんが
うらやましいです。蒸し暑いからでしょうか?一冊の本を読むのに
時間がかかってしまいます。