「さくら」西加奈子 小学館 2005年
僕は長谷川薫。大学生。久しぶりに実家に帰った。家を出た父さんから手紙が来て、年末に家に帰ると書いてあったから。実家の犬、さくらはもう12歳。彼女に会いたい。思い出すのは、さくらが我が家にやって来た頃、何でもできる兄ちゃん、美人なのに凶暴な妹、ミキ。小学生、中学生、高校生、だんだん大きくなっていくぼく。変わっていく周囲、環境…
おお。読みながら、この小説が終わってしまったらら嫌だなー。ずっと読んでいたいなーと何度も思った。最近読んだ本の中では「俄」「飼い食い」「相田家のグッドバイ」「母の遺産」と並ぶ最高得点(個人用に得点を記録しているけれど、特にお見せしていない)
西加奈子流の、あちこちに笑うしかないツボを押さえた会話がある。子供らしいアホな行動、思春期らしい男女の儀式。そして読んでいる途中では決して物語の行先が分からない、巧妙なストーリー展開。どれもが巧い。
あちこちに、メモしておきたい描写がある。例えば、
僕はまだ兄ちゃんのように「恋する喜び」が分らなかった。誰かを好きになるということは眠るときのせつなさや幸福を運ぶものだということは何となくわかっていたけど、誰かに全身で愛されて、そして人の口元にいつも笑みを浮かべさせるような、そんな恋が出来るかどうかは分らなかった。(157頁より引用)
ミキはその身長と、初心者とは思えない遠慮のないプレーで、一年生で初めてレギュラーの座を勝ち取った。他の女子達からすればミキは羨望と嫉妬(と恐怖)の対象で、女の子というのは、その裏腹な気持ちを抱いたまま友達になろうとするものだ。でもミキにはそうゆう微妙な女心というものを、全く理解する頭がなかった。(215頁より引用)
「なんてゆうたらええんやろ?その人は完璧にマイケルになりたがってんのやろか?自分がマイケルとして誰かに愛されたり、人生を生きていきたいんやろか?」兄ちゃんはたまに、ちょっと変わり者の一面を見せる。他のものは気付きもしないようなことに、驚くほど過剰反応して、しつこいくらいに答えを知りたがる、それは、ミキが母さんにセックスの不思議を聞いた、あの熱心さだ。(252頁より引用)
ミキはその身長と、初心者とは思えない遠慮のないプレーで、一年生で初めてレギュラーの座を勝ち取った。他の女子達からすればミキは羨望と嫉妬(と恐怖)の対象で、女の子というのは、その裏腹な気持ちを抱いたまま友達になろうとするものだ。でもミキにはそうゆう微妙な女心というものを、全く理解する頭がなかった。(215頁より引用)
「なんてゆうたらええんやろ?その人は完璧にマイケルになりたがってんのやろか?自分がマイケルとして誰かに愛されたり、人生を生きていきたいんやろか?」兄ちゃんはたまに、ちょっと変わり者の一面を見せる。他のものは気付きもしないようなことに、驚くほど過剰反応して、しつこいくらいに答えを知りたがる、それは、ミキが母さんにセックスの不思議を聞いた、あの熱心さだ。(252頁より引用)
このようなやや真面目なものばっかりじゃなく、むしろ笑える箇所の方がずっと多い。イエス。とってもオススメの作品だった。
では、また。
最初、子どもっぽい語り口になじめない気がしたのですが、さすがふるさんのおすすめ作品!
>ずっと読んでいたいなーと何度も思った
>読んでいる途中では決して物語の行先が分からない
本当にその通りでした。
コメント続いてしまいましたが、とてもよかったので。
オススメ ありがとうございました。
西加奈子は私も友人に薦められて読んだのですが、そうでないと読まないタイプの小説です。
「円卓」もおススメですよ。
終盤はボロボロ泣けて、かえってすっきりした記憶があります。
泣いた後にスッキリするとは、ある種の薬以上の効果があるのかも知れませんね。
ハマり ほとんど読みました。読み安いし笑いがあるし いいですね
きりこについて、白いしるし が好きですね
さくら も事故にあったお兄さんのこととかね、今は生き続けるのも若いうちからサバイバルだから
誰かにハグしてもらったり、きみはいい子だ と認めてもらう必要性
さっき 読んでた中脇初枝さんの「きみはいい子」読んであらためて思い直しました
いい本にも心をハグされますね
義父が認知症でアルツハイマーになり、最後の「うばすて山」はズシンと来ました
夜中の釘打ちや、夜中に掃除機、炊飯器の蓋開けたまま など
毎夜覚醒するのです。デンジャラスな日々で刺激的です
西加奈子作品は、一見読み易い「こどもでも読める」本でありますが、深いモノは「真の大人」にならないと分からないような気がします。
「きみはいい子」は手元にあるのですが、特に読むつもりではありませんでした。しかしその内に読むかも知れません。