なぜ、ひとを殺してはいけないのか。
そう子どもに訊かれたら、
「べつにいけなくはないさ。ただ相手と場面を考えろ」
と速水なら即座に答えただろう。
あるいは武石なら、
「あほか。性根の腐った奴は殺してもええんじゃ」
と巻き舌で怒鳴ったかも知れない。
彼らはそういう男だった。
そう子どもに訊かれたら、
「べつにいけなくはないさ。ただ相手と場面を考えろ」
と速水なら即座に答えただろう。
あるいは武石なら、
「あほか。性根の腐った奴は殺してもええんじゃ」
と巻き舌で怒鳴ったかも知れない。
彼らはそういう男だった。
こんな風に冒頭に書かれれば、速水と武石がどんな男たちなのか気になる。
「すじぼり」福澤徹三 角川 2007
すじぼりとは、刺青の下書き。転じて半端モノのことを言う。
主人公は自堕落な大学4年生。舞台は北九州市。友達とクラブから大麻を盗んで逃げている最中逃げ込んだバー。追いかけてきたチンピラを追い払ってくれたのはそこにいた客。彼の稼業はやくざ。自堕落な生活を送っているより、就職が決まらない現在より、やくざになる方がましであると感じるようになる。やくざと関わり、やくざになりたいと思う男の心情を現代の暴力団事情と絡めて描写。
冒頭の現代大学生絵巻が巧い。まさに大学はこんな感じだし、将来も希望もない状況がうまく描かれている。だからこそ彼がやくざに憧れるという展開とうまく繋がる。
知り合うやくざたちの人物造形もまたなんともいい。ストーリー展開もうまい。
久しぶりにけちのつけようのない傑作を読ませていただいた。
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今日の教訓
なんとなく行きたくない寿司屋
すしぼり
私のような若輩者が言うのも何なんですが、
今回のユウマさんのコメント、
今まででベストでございます。名文ですね。
若いとは防水性の欠如
うーむ。
年を重ねるとは耐▲性、防▲性が増すということなのでしょうが、
それが生きるのを楽にする知恵であるとともに
何かががつんと心に入るのを拒絶してしまうのは
何かを失っているのと同じなのかも知れません。
しかし自分のブログなのに暗証番号みたいなの入れないと
コメントできないってどういうことっすかね?
行きつ戻りつしながら自己の正しさを確認する淡い力のような未熟さを感じると共に、自分ではもう戻れない無謀な挑戦の数々を、儚い思いを道連れに思い出したような気がしました