「マアジナル」田口ランディ 角川書店 2011年(初出野生時代2009年7月~12月に大幅に改稿)
(「ムー」を連想させる)雑誌「マアジナル」に就職した主人公高木。マアジナルはUFOなどキワモノを扱う雑誌。高木が忘れられないのは、中学生のとき女の子が行方不明になったこと… 同時期に能登半島では超常現象を体験した子が多くいて…
うーむ。何と言ったらいいか。参考文献にUFOや宇宙人、洗脳、神秘という言葉がタイトルに入っている書籍が多いので、かなりのトンデモ小説だと思って読んでいた。最初に大きな偏見を持っていた。
カバーの扉に書かれているのは
「あなたの見ている現実は、
あなたにとっての現実に
すぎないのだ」
量子論とかそういう難しいことはよく分からないけど、読み進めていくと、怪しい→でも面白い→怪しい→でも面白い を繰り返していくことになった。
超常現象、UFOなどを信じるか否かによってだいぶ楽しみのレベルが変わってくるかと思うが(私は信じない)、こんな文章があっておっと思う。若干ネタバレ気味だけど。
「違います。この星が青いのは、地球人がさびしがり屋だからです。地球に住む人間は宇宙のなかでもとりわけさびしがり屋なのです。地球人は悲しみをという感情を偏愛しているとすら言えます。とりわけ日本人はもののあわれを慈しみます。だから、他の星の知的生命体は地球に来たがるのですよ。それは地球の青さが彼らに淋しい、悲しい、という美しい感情を思い出させるからです。彼らは精神的な成熟の段階で、淋しさや悲しみという感情をある程度、克服しています。自分以外の他者、倫理や価値観の違う者同士が闘うことなく共存するために、未分化な感情を抑制することを学んだ結果です。成熟によって感情の振幅がとても小さくなったのです。それによって争いは減りましたが、彼らは自ら裡なる音楽を失ったことを知ったのです。だから失った音楽を聴くために地球にやってくるのです」(第八章 砂漠の天文台 313頁より引用)
ああ、巧いな。ちょこちょこあちこちにこんな文章がある。この辺りの文章に感じるものがあったのでこの小説を楽しむことはできた。
では、また。
マアジナル | |
田口ランディ | |
角川書店(角川グループパブリッシング) |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます