「ねにもつタイプ」で笑い、そして呆然とさせられた翻訳家岸本佐知子。彼女の第一弾エッセイがこの
「気になる部分」岸本佐知子 白水社 2000年
「ねにもつタイプ」となんら変わらない岸本ワールドがそこにある。奇妙な味?
しかし、何といっても一番おそろしいのはゴキブリだ。黒光りするボディがこわい。長い触角がこわい。毛の生えたたくましい脚がこわい。素早い走りがこわい。飛ぶからなおのことこわい。裏返したときのおなかの横縞がこわい。わしづかみにして手の中にゆるく握ったときの、じたばたと手のひらを蹴る感触がこわい。噛むと口いっぱいに広がる。ちょっと苦い味もいやだ。
オオカミの何がこわいのか、私にはさっぱり分からない。 (30ページより引用)
オオカミの何がこわいのか、私にはさっぱり分からない。 (30ページより引用)
ゴキブリが大の苦手な私には読んでいて途中までうんうんと大きくうなづいていたのに、え?えーー!?となる。これが典型的岸本マジック。必ず一つのエッセイのラストですとんと落ちる。特徴は:
・ ゴキブリを噛む、という「それは本当はやっていないんじゃないか」という言葉を混ぜる。
・ オオカミがこわいというそれまで何ら出て来ない、でもよく言われる話を持って来る。
あるいは、たまに
・ そうそう。そうなんだよ。いいこと言ってくれた!と読者に思わせる。あくまでもたまに。
ところが私が例を述べると、今度は逆のOさんから悩みを打ち明けられてしまった。”根堀り葉堀り”の”根掘り”はともかく、”葉掘り”って何なのだ?それを言うなら”夕焼け小焼け”の”小焼け”とは、いったい何が焼けているのか?”首の皮一枚でつながっている”って、それってすでに死んでいるのでは?それから・・・・・・ (37ページ)
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今日の一曲
Shangli-La, 電氣グルーヴ
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