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『日本近代史』坂野潤治

2012-11-20 | books
「日本近代史」坂野潤治 ちくま書房 2012年

1850年公武合体から1940年大政翼賛会までの日本近代を6つの時期に分け、

公武合体=改革期 → 尊王討幕=革命期 → 殖産興業=建設期 → 明治立憲制=運用期 → 大正デモクラシー=再編期 → 昭和ファシズム=危機期

詳しい資料を引用しながら振り返るという本。

さあっと一回読んで概略をつかんでから、もう一度熟読してみた。なかなか面白かった。

第1章から2章では西郷隆盛を大きく取り上げて、島津久光とは違う「合従連衡」というレベルの高いものだと論じたり(坂本竜馬や高杉晋作はほとんど登場しない)、廃藩置県は中央政府に金がないから行われたことだとする。板垣退助の民撰議院設立の建白書には、税金を払う者のみが有権者(=地主=農民)だとあったので、後に農民のご機嫌をとるか否かに政権運営がかかってきたりだとか、地租は固定だったので、インフレ策=米価高=農民有利=政府不利だという話(松方デフレは政府にとって必要な政策だったのか…)とか。

この時期の日本史には欠かせないキーワードは織り込みつつ、日本史の教科書に書いてありそうなことは省略するという、売れている本の割に大胆なやり方をとっていて(読者として誰を想定しているのだろうか)、軽く読み飛ばすことはちょっと難しくなっているがしかし色々と考えるヒントをくれる非常にお得な本だった。

現在の政治とこの時代の政治、めまぐるしく政権が変わるという意味では似たようなもの。しかし政権が変わってもたいして何も変わらない現在よりは、ずっとダイナミックで、「読んで面白い」時代だったと思う。

では、また。


日本近代史 (ちくま新書)
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