頭の中は魑魅魍魎

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『ドライブインまほろば』遠田潤子

2018-11-17 | books
奈良の山の中にある寂れたドライブイン。娘を亡くし、離婚した私は長らく営業していかなったまほろばを再開した比奈子。パイパスが出来て、あまりお客は来なくなってしまったが、多少の固定客はいる・・・小学生の憂は義父の流星を殺した。まだ保育園に通う妹の来海を連れて逃げた。まほろばに向かって・・・流星と銀河の双子。昔は野球少年として将来を期待されていたが、今ではやくざの下請けのような仕事をしている。憂が仕事のヤバイ情報が入った流星のパソコンを持って逃げた。銀河は追いかける・・・

とてつもなく悲しい過去を持った者たちの邂逅物語。遠田潤子らしい。

親子や兄弟姉妹の関係がかなり色濃く描かれる。個人的には比奈子の娘里桜が死ぬ原因になった主人公の母親が印象に残った。三回忌に来るのを拒まれても何度となく謝罪しようとする。誰も謝罪の言葉など聞きたくもないのに。許して欲しいというエゴで謝罪することの罪。謝罪によってさらに罪が加わるのだと知った。

盗めるうちはまだマシだ。つく嘘があるうちはまだマシだ。盗むことすらできなくなって、つく嘘すらなくなったらどうすればいい?来海と二人、どうすればいい?


「・・・生まれてきて・・・なんにもいいことなかった」私は胸が付かれた。これが子供の言葉だろうか。


「お母さんはね、なにをしても満たされない。そして私に言う。
- お母さんみたいになったらあかんよ。いえ、お母さんみたいになってね。
母はその矛盾に気付かない。だから、母は私がどうなっても納得しない。問題は母自身にあるからだ。


親の干渉は真綿の布団に浸み込んだ毒のようなものだ。柔らかいけれど重い。最初はふかふかなのに、いつの間にか冷たく、硬くなる。気付いたときには不快でたまらない。



ドライブインまほろば
遠田潤子
祥伝社



今日の一曲

遠田潤子。潤子と言えば、長渕剛で、「順子」



では、また。
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