頭の中は魑魅魍魎

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映画『冷たい熱帯魚』

2012-10-24 | film, drama and TV
埼玉の愛犬家殺人事件をもとにした園子温監督作品

熱帯魚屋を経営する社本(吹越満)は後妻(神楽坂恵)と妻に懐かない娘と三人暮らし。ストレスばかりたまる。娘が万引きしたと連絡があったのでスーパーに向かうと、店員が厳しく娘を叱っていて警察に連絡すると言う。偶然そこにいた村田(でんでん)に助けてもらった。彼は大きな熱帯魚屋アマゾンゴールドを経営していて、ぐれた娘を店員として預かってくれると言う。とても良い話だし、良い人のようなのでそのまま流されるように村田と関わっていく。それは地獄への階段第一歩だった…

うーむ。見ている最中に「怖い」と「巧い」を交互につぶやいてしまった。

冒頭の10分ぐらいからいきなり巧い。この後どうなるんだろうかという期待。事件がまだ起こっていないにも関わらず画面から溢れる緊迫感。構図の切り方が独特。

特筆すべきはでんでんの演技。にこやかにしていたかと思ったら突然キレる。そのスイッチの切り替えがすごい。最近の尼崎の連続遺体発見事件でもマインド・コントロールがあったのではないかと報道されているけれど、村田のような人間はマインド・コントロールの達人なんだろうと思う。これが実話に近いのかと思うと、人間の底の方にあるギザギザを感じざるを得ない。(=自分のギザギザも)

スウィフトの「ガリヴァー旅行記」の赤ん坊の皮で帆を作るシーンについて、翻訳家の中野好夫氏は「われわれの面に腐った臓腑を投げつけられる思いがする」としている。それなら本作は、痛い痛いと言っているのに、われわれの腹から無理やり抜き取った臓腑を、われわれの面に投げつけられている思いがする。

では、また。


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2 コメント

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園子温監督 (こなっ)
2012-10-25 17:24:45
監督が過去にマインドコントロールされてたことからオウム事件を匂わすのとか集団心理のマインドコントロールの映画を出し
冷たい熱帯魚は、人はむごい事を平気でするよ。と。やられる側からやる側にもなり得るよ。と
「ヒミズ」は染谷くんがいいです
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こんにちは (ふる)
2012-10-26 14:00:28
★こなっさん、

「ヒミズ」はまだ観てないです。
「冷たい熱帯魚」では、確かに被害者がいつでも加害者に、加害者がいつでも被害者になる得ることを見せてくれましたね。
人間は、生まれながらにAであっても、立場が変われば簡単にBにでもCにでもなってしまう浮草なわけです。
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